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 第10章 魔法学院(入学)編

1004.カーリン再び

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 朝早くから、カーリンに思念伝達で、起こされた。

 「テラ、起きてますか?カーリンです」

 「うっ、カーリン、何?」

 「大変です。起きてください」

 「うっ、カーリンか。どうしたの?」

 「テラ、起きましたか?」

 「はい、大丈夫、起きたよ。どうした?」

 「良い感じの土が出てきているのですが、これ以上、進めません」

 「どういうことかな?」

 「今回で、試掘も、5回目になるのですが、これまでとは、違って出てくる土が良い感じなんです」

 「そのいい感じ、ってよく分からない」

 「私も、初めてなので、すべて、感だよりでやっているので。説明し辛いです」

 「まあ、私が理解することもないので、それは、置いておこう。それで?」

 「はい、これ以上、掘れないのです。鉄の棒が潰れるのです。何度取り換えてもダメです」

 「なぜ?まあ、いいか。取り敢えず、そっちに行くよ。話は、それからね」

 私達は、急いで出かける準備をいた。

 「スピア、準備はいい?」

 「テラ、行ける」

 「行くよ」

 私達は、カーリンの所に行った。カーリンは、現在の試掘場所で、寝泊りしているようだ。試掘の傍に小さな小屋が建っていた。

 「カーリン、ご苦労様。無理していない?」

 「うん。カーリン、顔色、悪い」

 「はい、大丈夫です。今は、興奮していて、それどころじゃないです」

 「何をそんなに興奮しているんだ」

 「出てくる土が良い感じなのです。これまで、こんな感じになったことがなくて、興奮しています。それに、経験者が言うには、この後、ガスが出てくるらしいです」

 「まあ、そのいい感じは、分からないけど。ちょっと、試掘の状態を教えて貰える?」

 「はい、10本目ぐらいまでは、今まで通りで、問題なく掘れていたのですが、それから、鉄の棒が変形し始めて、今は、13本目なのですが、穴を掘っても、そこから、崩れて来て、鉄の棒を降ろすことさえできません」

 「なぜかな?まあ、いいか。理屈は、任せるよ。つまり、掘り進みたいということだね」

 「はい、それだけです」

 「それじゃ、まず、これまで掘っている所を崩れないように、強化するね」

 私は、土魔法で、これまで掘り進んで来た鉄の棒の外側に少し、隙間を開けて、土の壁をつくり、壊れないように強化した。つぎに、これまでの鉄の棒の外側を闇魔法で、2重にコーティングして、強度を増しておいた。
 
 これまでの鉄の棒を取り除き、新しく強化した鉄の棒に取り換えた。これで、先に進めるほど頑丈になった。最後に、手榴弾タイプの穴堀球の改良だ。これまでは、円柱のような形に土を取り除くだけだったが、今回は、取り除くと同時に、外側に壁を作り、コーティングするように、改良した。魔法陣を1つ追加して、ほぼ同時に起動するようにした。

 「カーリン、これで、やってみて」

 「はい、やってみます」

 カーリンは、今まで通りの方法で、作業を開始した。すると、新しい鉄の棒が入っていく、そして、新たな土が掘り出されてた。

 「うまくいきます。これで、掘り進めます」

 「それじゃ、帰るよ。いいかな」

 「はい。テラ、ありがとうございました」

 私達は、また、ベッドで、寝ることにした。朝から、疲れてしまった。スピアに癒してもらおう。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 2度寝から起きた私達は、魔法学院から勝手に持ち帰って来た魔導書を調べることにした。

 「スピア、何か感じる?」

 「うん。感じる」

 「どう感じるの?」

 「うーん。何か、付いてる」

 スピアは、動物の感で何かを感じているようだが、私には、よく分からない。

 この魔導書は、シリーズになっているので、3冊の間に共通している部分があるはずだ。

 以前に、サルビアと一緒に開いた魔導書の働きを考えると、「誰かが本を開く」ことがトリガーとなって、「魔導書の魔法が起動する」。そして、その魔法の効果で、いままで知らなかった「開いた本人が魔法を使える」様になる。最後に、「魔導書が消滅する」が、記憶された魔法は使い続けることができる。

 私は、もう一度、スキル鑑定で、魔導書を調べてみた。まだ、私のレベルでは、詳細を知ることができない。しかし、この本が魔導書で、開くと本が消えてしまうことは、分かった。

 「スピア、この魔導書、開くと消えてしまうよ」

 「うん。消える。でも、残る」

 「残るって、何?」

 「うーん。よく分からない」

 「本は、消えるのは間違いないよ」

 「うん。本、消える。でも、残る」

 「よく分からない」

 「うん。よく分からない」

 「誰かが本を開く」で、魔法が起動するためには、魔法陣に魔力を流す必要がある。従って、本を開けた人が魔力を持っていないとだめだ。

 先ほどスキル鑑定で、調べたが、この魔導書には、魔石が組み込まれていない。これは、確かだ。そうすると、開いた本人が最低でも魔力を持っていることが、魔導書の魔法陣が働く条件となる。

 そして、 「魔導書の魔法が起動する」=「開いた本人が魔法を使える」 ということだ。これに、一つの魔法陣が関与しているのだろう。そして、その魔法陣は、人体に変化を及ぼす。魔法が使えない状態から、使える状態に進化するわけだ。

 最後に、「魔導書が消滅する」も、別の魔法陣が関与しているだろう。これについては、簡単に魔法陣で、実現できる。

 問題は、「開いた本人が魔法を使える」に使われている魔法陣だ。

 基本的に、魔法はイメージだ。結果を予測できないと魔法は発動できない。その結果は、魔法陣が知っていても、魔法を起動する人が予測していてもどちらでもよい。誰かが、知っているということだ。

 でも、なぜ、その後も魔法が使えるのだろう。基本的には、魔法属性は先天的なものだ。つまり、遺伝するということだ。だから、貴族に魔法属性がある者が多いということになる。

 もう少し、時間が掛かるようだ。

 「スピア、続きは、また今度にしよう」

 「うん。テラ、本、保管」

 「そうだね。誰も、見ないように保管しておくよ」

 私は、3冊の魔導書をアイテムボックスに入れて、誰も見ないように、闇魔法で、隠しておいた。
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