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 第9章 リザードマン編

904.代表シロッコス

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 ぐっすり寝て、疲れも取れたので、朝早くからスピアと共に出かけることにした。

 森の近くのダンジョンに移動して、シロッコスに会った。

 「お早う。昨日は、よく眠れた?」

 「お早うございます。はい、久しぶりにぐっすり、眠ることが出来ました」

 「今日は、一緒に来て欲しいんだけど、いいかな?」

 「はい、大丈夫です。他の者は、どうします」

 「シロッコス、あなただけでいいわ」

 「はい、御一緒させていただきます」

 「その、硬っ苦しい言い方し無くていいわよ」

 「はい、わかりました」

 「もっと、砕けていいわよ」

 「はい。分かった」

 「そうね、なんか、思った感じと違うけど、いいわ」

 「それで、どこに行きます?」

 「あなたの仲間を探すよ。もしかしたら、あなたの仲間も、騙されているかもしれないからね」

 「はい、ありがとう」

 「ねえ、シロッコスは、どの程度の近くに行くと、仲間の気配を知ることができるの?」

 「そうですね。多分、10kmぐらいかな?」

 「そうか、もし、何か感じたら、教えてね」

 「はい、分かった」

 「スピア、お願い」

 私は、スピアの背に乗り、移動を始めた。まず、ソーロン帝国の軍事都市リーベンに移動した。

 「あっ、感じました。多分、この近くにいます」

 「やっぱりね。ソーロン帝国だと思った」

 「それじゃ、どっちの方角かな?」

 「ここから、南西の方角です」

 「それじゃ、ここからは、隠れて行くよ」

 私達は、隠密魔法で、姿を消した。シロッコスにも、隠密魔法を掛けてあげた。

 「これから、あなたの頭の中に直接話をするよ。ビックリしないでん」

 私は、思念伝達で、シロッコスに話し始めた。

 「これからは、頭の中で、考えるだけで、伝わるから、余計な事を考えないでね」

 私は、少し、嘘をついた。考えるだけでは、伝わらない。伝えようと、思わないとだめなんだけどね。

 「はい、わかりました」

 シロッコスは、私の言葉に緊張しているようだ。大きな図体の癖に、気が弱いのかも。

 漸く、基地に着いた。シロッコスの歩みに合わせているので、時間が掛かる。

 「これから、地下に降りて行くよ」

 「はい」

 階段を下りて行くと、シロッコスが方向を指示し始めた。もう、はっきりと場所が分かっているようだ。

 まあ、私にも、スキル探索があるから、もう、分かっているけど、シロッコスに任せることにした。

 「ここです。この下に大勢います」

 「そうね。あなたの仲間だけのようね。特に、監視されてはいないようね」

 私達は、隠密魔法を解除して、姿を現してから、シロッコスの仲間に会いに行った。

 「シロッコスが話してくれる。もし、希望するなら、同じ条件で雇うわ」

 「はい、聞いてみます」

 シロッコスが話した所、やはり、騙されているようだ。金貨どころか、ちゃんとした食事さえも与えられていないようだ。全員が、シロッコスと共に行動すると言っている。彼らの話では、他の場所にもいるそうだ。

 私達は、まず、ここにいる人達をヤガータ国の森の近くのダンジョンに連れて行った。そして、地下の円形闘技場に案内して、待機してもらった。

 次に、また、ソーロン帝国の基地に戻って、次の場所で、シロッコスの仲間を連れだしていった。これを何度か繰り返して、やっと、全員を運びこむことが出来た。

 私達は、円形闘技場で、ここに残るかどうかを、確認させた。全員、残ると言っている。人数を数えると、1500人にもなっていた。仕方がないので、急遽住居を倍に増やした。

 私は、シロッコスが代表でいいのか、円形闘技場の全員に確認した。すると、誰も反対をしなかった。

 これで、シロッコスがこの人々の正式な代表だ。私は、これからのことを、シロッコスと話した。

 「私としては、兵士として、働いて貰いたいけど、嫌な人もいると思うの。そこで、まず、兵士になっていいという人を闘技場に集めてくれる。その人たちの名簿を作ってね」

 「はい、すぐに始めます」

 シロッコスは、テキパキと仕事をする。代表になって貰って、良かった。

 ほとんどが、兵士を希望した。残りの200人が、戦いは嫌だと言っている。

 私は、その人たちを連れて、港の住居に移動した。

 「ここで、生活してもらいます。基本的に兵士と同じ待遇です。仕事は違うので、働く時間も異なりますけど、無理な事はさせないので、安心してください」

 「「はい」」

 「まず、この中から、代表を一人決めてくれますか?」

 暫く、相談していたが、どうも、年齢が大きく左右するようだ。一番の年長者が代表になった。

 「私が、代表に決まりました」

 「私は、テラよ。こっちが、相棒のスピアよ。よろしくね」

 「はい、私は、キッコスと言います。よろしく、お願いします」

 「ここは、港湾の中の住宅になっているの。あなた達に、この港湾の警備を行って欲しいの。
 警備と言っても、戦いは、ないよ。書類の整理だと思ってね」

 「はい、殺し合いが嫌なだけで、警備は出来ます」

 「そう、それならいいわ。今は、仕事はないので、施設を見て、何か必要な物があれば、言ってね。
 それから、暫くは自炊してもらうね」

 私は、食材の入ったアイテムボックスを1個渡して、使い方の説明をした。

 これで、港開きの準備が出来た。あと、もう少しだ。

 これまでの事を、思念伝達で、リンダとガーベラとシルバに伝えた。今日は、少し早いが寝ることにした。
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