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 第6章 軍事都市リーベン編

607.基地の研究所

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 鉱山で取って来た魔石の材料は、そのままでは、使えない。火魔法で、ドロドロに溶かして、精錬して、型にはめて行った。精錬した魔石の原料は、持って帰って来た量の80%ほどになった。結果的に、型に嵌めて使えるのは、600万立法センチメートルになった。

 遠隔通話器テレ・ボイスに使う魔石は、親指1本ほどの大きさで十分だった。つまり、3立法センチメートルほどなので、200万個の魔石の部品が得られたことになる。

 ただ、この部品は、まだ、十分な魔力がなかったので、魔力を補充する必要があった。私は、当面必要な分だけ魔力を注ぎ込み使える状態にした。

 残りの部品は、ダンジョンに接続している農園に持っていった。周りのマナを多少でも吸収するだろうと考えた。

 これで、セーロンの依頼の目途がたったので、私達は、次の行動を起こすことにした。

 「リーベンの基地におられるベルーナ大佐をお願いします」

 「少々、お待ちください」

 私は、遠隔通話器テレ・ボイスを用いて、ベルーナ大佐に連絡を取った。以前、約束していた研究所の見学の日時を決めるためだ。

 「ベルーナ大佐だ。テラ、お待たせした」

 「先日の見学の件ですが、私の方は、いつでも行けます」

 「そうか、それなら、明日は、どうかな」

 「はい、大丈夫です」

 「それなら、朝10時で、お待ちしています」

 「はい、わかりました。楽しみにしています」

 約束の日時まで、余裕ができたので、のんびりと、街を見て回ることにした。

 いくつかの商店を覗いて行ったが、どの店にも、軍関係の商品は、置いて無かった。

 「テラ、どこも、同じような物しか置いていないね」

 「そうだね。食べ物か、服ぐらいだね。それも、同じようなものばかりだね」

 「テラ、あそこに、古ぼけた家があるよ。行ってみない?」

 「いいよ。行ってみようか」

 街の本通りから、少し離れた所に、その古ぼけた建物はあった。どうやら、骨董品を置いているようだ。

 「すみません。少し、商品を見せて貰えませんか?」

 「どうぞ、遠慮なしに見て行ってね」

 「ありがとう」

 「サルビア、スキル鑑定を使ってみて」

 「はい、やってみます」

 サルビアは、スキル鑑定で、商品を調べた。

 「どうかな? 面白い物、あった?」

 「そこの端にある魔導書が、面白そうです」

 サルビアが言った本は、5冊がセットになって、置かれていた。

 「すみません。この魔導書は、いくらですか?」

 「あぁ、それね。中身は白紙だよ。外は革で作られているので、高級そうだけど、役には立たないよ」

 「別にいいですよ。飾るだけだから」

 「そう、それなら、金貨5枚でいいよ」

 「それでは、これ貰いますね。包装は、いいです」

 私達は、金貨を渡して、店を出た。

 「これ、結界で守られているね」

 「サルビアは、これの解除できる?」

 「はい、やってみます」

 サルビアは、難なく、結界を解除してしまった。

 「魔導書って、変わった物が多くて、最初の一人しか、読めない物もあるの」

 「テラ、そうなんですか」

 「そうよ。だから、サルビアが、最初の1冊を見て、くれる?」

 「えっ、いいんですか?」

 「いいよ。サルビアが見つけた魔導書だから」

 「それでは、見てみます」

 サルビアが本を開くと、本が光り輝き、魔法が起動した。

 「あぁ、頭の中に魔法が入ってきました」

 「どんな魔法かな?」

 「闇魔法の初級です」

 「それは、良かったね。これで、サルビアも闇魔法が使えるよ」

 「後、4冊あるね。どうしようかな? 私も、2冊見てもいい?」

 「はい、いいですよ。私は、次の2冊を見ますので、テラは、最後の2冊を見て下しさい」

 魔導書は、最初の3冊が闇魔法の初級・中級・上級に対応していた。これで、サルビアは、闇魔法をすべてマスターした事になった。

 残りの2冊は、召喚魔法に関するもので、4冊目は、転生魔法が書かれており、最後の5冊目は、召喚魔法が書かれていた。
 
 私は、それらを使えるようになった。ただし、色々起動するための条件があるようで、すぐには、使えそうになかった。

 覚えてから、すこし後悔した。というのも、賢者サビオに教えて貰えば、私は、これらの魔法も、使える様になるはずだ。だから、サルビアに覚えて貰った方が良かったのではと。

 まあ、終わってしまったこと後悔しても仕方がない。

 「私の方は、転生魔法と、召喚魔法だったよ」

 「私は、闇魔法がマスターできて、嬉しいです。これで、もっと、テラの役に立てます」

 「そうだね。光魔法と闇魔法が使えるというのは、凄いことだよ」

 「ありがとうございます。これらの魔法を練習して、使いこなせるようにしておきます」

 「あまり、無理をしないでね」

 「はい、わかっています」

 「サルビア、この街で売る商品を服にしない?」

 「服ですか。でも、服なら、この街にも沢山の商店が扱っていますよ」

 「でも、どの店の商品も画一で、面白くないでしょ」

 「そうですね。どれを見ても同じ様に見えました」

 「だから、私達は、前の街のように、華やかな服だけを扱うの」

 「テラ、それって、いいですね」

 早速、商業ギルドのナツに相談に行った。すると、服であれば、大丈夫と了承された。これから、この街を華やかにしていこう。
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