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 第4章 サルビア編

410.サルビアの患者

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 私達は、サルビアの知っている患者の所に向かった。

 その屋敷は、サルビアの元の屋敷が見えるぐらいの距離の所に立っていた。

 「サルビア、いきなり尋ねても追い返されるだけだよ」

 「そうね。どうする?」

 「その子に直接話をしよう」

 「でも、断られたら、どうしよう」

 「良いんじゃないの。断られても、また、別の子を探せばいいだけだよ」
 
 「そうね。断られてもともとだものね」

 「それじゃ、行くよ」

 私とサルビアは、スピアの腰にぶら下がった。

 スピアは、私達が落ちないように、両方の手で支えながら、2階へとジャンプした。

 「今日わ。起きてる?」

 「誰、なぜ、ここにいるの」

 「あなた、病気を治したくない」

 「そんなこと、無理だよ。もう、何人もの有名な医者に診てもらったけど、誰も、治せなかった。
 僕は、もう、諦めているよ。後、半年だって言われているよ」

 「そうか、諦めるのか。それじゃ、仕方がないね」

 「サルビア、行こうか」

 「えぇ、今、何て言ったの。サルビア、って言ったよね」

 「急に、どうしたの」

 「サルビアは、死んだって、聞いたよ」

 「それが、君と関係があるの?」

 「サルビアが死んだって、信じられないんだ」

 「どうして?信じられないの」

 「僕は、一度、サルビアの家に遊びに行ったことがあったんだ。
 その時、サルビアと約束したんだ。絶対諦めないって」

 「それが、どうしたの?君は、諦めているじゃないか」

 「だって、あのサルビアでさえ、諦めて自殺したと聞いたから。僕なんて、頑張れないと思ったんだ」

 「そうなのか。サルビア、覚えているかい」

 「はい、私、覚えているよ。私の方が重傷で、ベッドに寝ているところに来たの。
 両親が居なくなった時に、少しだけ、お互いを励ましあったの。
 あなた、ファーリでしょ」

 「そうだよ。ファーリだよ。覚えてくれていたんだ」

 「覚えているわ。約束したもの」

 「そうか、サルビアは、生きていたんだ。しかも、病気が治ってる」

 「そうよ、この病気は治るのよ」

 「お願いします。僕も治して下さい。絶対、諦めません」

 「サルビア、どうする?」

 「テラ、お願い、治してあげて」

 「それじゃ、一緒に治してあげよう。まず、左手を貸してくれる」

 私は、フォーリの左手を持って、マナの流れを調べた。すると、やはり、いたるところに閉じた所が見つかった。

 「すこし、魔力を流すよ。サルビア、ファーリの右手を持ってくれる」

 「はい、持ちました」

 「ファーリの身体全体のマナの流れを感じてみて。どう、わかる?」

 「はい、わかります。途中で、切れていて、身体全体を感じることができません」

 「よし、いいよ。それで。それでは、私の横に来て、私と同じ左手を持ってくれる」

 サルビアは、ベッドの向こう側から、私の方に移動して、ファーリの左手を持った。

 「それでは、先ほどと同じように、ファーリのマナの流れを感じて」

 「はい、出来ました」
 
 「それじゃ、ファーリ、今から、治療を始めるよ。もし、気分が悪くなったら、遠慮せず、言ってくれる。我慢したらだめだよ」

 「はい、わかりました」

 「それじゃ、行くよ」

 私は、自分のマナを少しずつ、ファーリに流し始めた。すると、閉じていた部分が開き、そこから、先にもマナが流れ始めた。それが、次第に広がり、やがて、左足にも達した。

 「ファーリ、気分はどう?」

 「大丈夫です」

 「サルビア、わかる?」

 「はい、わかりました。マナが流れ行きました」

 「今度は、サルビアがやってごらん。ただし、決して一気に流したらだめだよ。少しだけだよ」

 「はい、少しだけ流します」

 サルビアは、恐る恐る、マナを流した。少し流して、すぐにやめた。

 「いいよ、マナが流れたよ。今度は、止めずに、今のマナの流し方で、続けてくれる」

 「はい、わかりました」

 サルビアは、上手にマナを流し続けた。すると、ファーリの身体をマナがどんどん流れながら、マナの流れが、広がっていった。、
 
 「よし、一旦、止めて。それを、今度は、右手でやってみて」

 サルビアは、ファーリの右手を握りに、場所を移動した。

 「テラ、始まます」

 「サルビア、そこまで」

 「はい、止めます」

 「ファーリ、どうかな?気分は」

 「はい、大丈夫です。なんだか、身体が軽くなりました」

 「今日は、ここまでに、しておこう。これ以上すると、身体に負担がでてくるから」

 「はい、わかりました」

 「それから、これを飲んでくれる」

 私は、赤のポーション(特級)をアイテムボックスから、1本出して、ファーリに渡した。

 ファーリは、一気に飲み干した。

 「身体が! こんな感覚は、初めてです。本当にありがとうございました」

 「まだまだ、治ったわけではないよ」

 「はい、わかっています。でも、良くなったことも、分かっています」

 「それじゃ、また、明日、来るよ。
 それから、一つお願いがあるんだ」

 「何ですか。何でも言ってください」

 「サルビアの事を内緒にして欲しいんだ。誰にも話さないって、約束してくれる?」

 「はい、サルビアの事は、誰にも話しません。約束します」

 「それじゃ、またね」

 「ファーリ、頑張ってね。絶対に治るから」

 「はい、頑張ります」 

 私達は、また、スピアに抱えられて、1階の中庭に隠れた。それから、私の転移魔法で店まで移動した。
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