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 第4章 サルビア編

405.サルビアの遺書

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 「サルビア、サルビア」

 「誰、一人にしておいてよ」

 「私だよ。テラだよ」

 「えっ、テラなの。ゴメン」

 「いいのよ。どうしたの。悲しそうだよ。また、身体の調子が悪いの?」

 「テラ、違うの。身体はもうすっかり元気よ」

 「それなら、何を嘆いているの」

 「急に、縁談の話があって、借金しているから、断れないって言うの」

 「そうか、サルビアは、好きな人でもいるの?」

 「私、ずっと、ベッドに寝ていたから、好きな人も出来なかったの。
 折角、身体が元気になったのに、何だか、病気の方がよかったみたい」

 「そうか、縁談が嫌なんだね」

 「そう、嫌よ」

 「嫌なら、止めればいいよ。借金は、親の責任だよ」

 「でも、親に迷惑を掛けたくないの」

 「そうか。難しいね」

 「いっそのこと、死にたいわ」

 「そう、死にたいか。それじゃ、死ぬか。いや、死ねば、いいよ。手伝うよ」

 「テラ、急に何を言い出すのよ」

 「サルビアは、元気になったことを誰かに言った?」

 「いいえ、まだ、誰にも言っていないよ」

 「それならいいよ。死んだことにしよう」

 「そんなこと、できるの?」

 「簡単だよ。まずは、このコップに毒を入れてと」

 私は、サルビアを見ながら、土人形を創った。表面を闇魔法でコーティングして、人間の肌のような感触になるように加工した。

 次に、解剖されてもいいように、土人形の内部を加工していった。
 大腸、小腸、直腸、肝臓、…。覚えている臓器を創っていった。そして、臓器の表面を闇魔法で加工して、色付けをした。そして、土人形だけど、切れるようにした。さらに、切ると血のような液体が出る様に加工しておいた。

 「やっとできた。どう、サルビア」

 「どうって、私、そっくり」

 「凄いね、って、言ってよ」

 「うん。凄いね」

 と、スピアが言った。

 「あっ、喋ってしまった」

 仕方がないので、私は、スピアの隠密魔法を解除した。

 「わぁ、獣人だ」

 「スピアって、言うの。私の従魔だよ」

 「うん。スピア。よろしく」

 「話もできるのね。それに、強そう」

 「スピアは、強いよ。それに、素早いよ」

 「サルビア、怖い?」

 「ううん。テラの従魔だから、怖くないよ」

 「それじゃ、遺書を書こうか」

 「はい、ちょっと、待ってね」

 「これで、いいよ。それじゃ、服を着替えようか」

 サルビアに来ている服を脱いで貰い、それを土人形に着せた。それから、アイテムボックスに入れていた私の服をサルビアに渡した。少し小さいが、着れないことはなかった。

 「準備が出来たら、行くよ。サルビアは、何か、持っていくものはない?」

 「持っていったら、バレてしまうわ」

 「サルビアは、偉い、賢い。それじゃ、行こうか」

 「はい」

 「サルビアも、スピアに抱き付いて、私みたいに」

 「はい、これでいい?」

 「いいよ。行くよ」

 「うん。行こう」

 私は、転移魔法で店に移動した。

 「はい、着いたよ。上に行こうか」

 私達は、2階に上がった。

 「サルビアは、この部屋を自由に使っていいよ。
 私達は、寝るだけだから」

 「ありがとう。テラ」

 「気にしないでいいよ」

 「サルビアは、ここで待っていてね。スピア、サルビアの警護をしてくれる」

 「うん。サルビア、守る」

 「それじゃ、行って来るね」

 私は、また、隠密魔法を起動してから、転移魔法で貴族エリアのサルビアの屋敷に移動した。
 2階にあがり、サルビアの部屋で、暫く待機した。

 「サルビア、どうしたの?」

 食事を持って来た、サルビアの母親が大声を出した。

 「誰か来て! サルビアが大変なの」

 「どうした」
 
 サルビアの父親が、部屋に入って来た。少し、遅れてお爺さんが、部屋に入って来た。

 「サルビアが、自殺したの。ここに遺書があるわ」

 「本当に死んでいるのか?」

 「本当よ、冷たくなって、脈も呼吸もないの」

 「取り敢えず、医者を呼ぼう」

 サルビアの父親は、屋敷を飛び出して、医者を連れて、帰って来た。
 例の藪医者だ。

 「すみません。見てください」

 「うん。脈も呼吸もないようだね。でも、病気で、急になくなるなら、兆候があるはずだが」

 「これが、遺書です」

 「拝見します。ん、毒を飲んだとありますね」

 「はい、そう、書いています」
 
 「誰が、毒をあげたのですか?」

 「誰も、毒なんて、持っていませんよ」

 「このコップは。ん、中に毒が入っている。しかも、これは特級の毒だ。
 こんな毒なら、1滴で死んでしまう。
 このコップは触らないでください。非常に危険なものです」

 「やはり、自殺ですか」

 「そのようですね。病気を苦にしたのかもしれませんね」

 「報告は、どのようにしたら」

 「それは、主治医の私がやっておきます。金貨5枚になります。ここで、頂きます」

 「それでは、これで、お願いします」

 サルビアの父親は、なけなしの金貨を出した。

 家族は、サルビアの葬式の準備を始めた。忙しさが、寂しさを紛らわす。
 3人は、休みなく働いた。

 無事、偽装自殺は完了した。私は、転移魔法で店に移動した。

 「サルビア、無事終わったよ」

 「ありがとう。テラ。これからも、よろしくお願いいたします。お世話になります」

 「サルビアは、いつも通りでいいよ。遠慮したら、怒るよ」

 「うん。怒るよ」

 「今日は、少し早いけど、寝ましょうか。スピア、おいで。そうだ、サルビアは、何処で寝る?」

 「一緒に寝たい」

 「良いよ。一緒に寝よ」

 いつも通り、私は、スピアの腰に抱き付き、寝た。サルビアも、私の反対側からスピアを抱いて寝た。
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