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 第2章 商人編

208.新しい友達

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 私は、今日は、宿屋を引き払うことにした。店の2階で、寝泊りが出来る部屋があるからだ。

 「今日まで、お世話になりました。鍵を吊っておきますね」

 「いってらっしゃい。また、来てくださいね」

 「はい、何時か、食事に来ますね」

 「はい、お待ちしております」

 宿屋を出て、すぐに、店に行った。今回は、歩いて行った。店では、ドアノブの「営業中」を「休業中」に変えてから、無人販売用の機械の中の商品を確認し、売れた商品の補充をした。

 それから、私は、冒険者ギルドに向かった。中に入ると、受付のローララが、依頼用のボードに依頼書を張りながら、冒険者の対応する準備をしていた。

 「ローララ、来たよ、お早う」
 
 「お早う。今日は、早いのね」

 「昨日、狩った分を買い取って」

 「このトレーに入れてね」

 「はい、お願いします」

 私は、ゴブリン(50匹)、ゴブ・ゴブリン(20匹)、ホブゴブリン(20匹)分の証拠品をアイテムボックスから取り出して、トレーに入れた。アイテムボックス2個分だ。

 「随分、多いのね」

 「ええ、頑張ったから」

 「ゴブリンが1匹銀貨50枚、ゴブ・ゴブリンが1匹金貨1枚、ホブゴブリンが1匹金貨1枚になるよ。合計で、金貨65枚ね」

 私は、ローララに冒険者IDを渡した。

 「これに、記録してください」

 「はい、いいわよ」

 「ありがとう。また、来ます」

 私は、今後の事も考えて、一度、装備を一新することにした。そこで、街の鍛冶屋に行き、冒険者の装備として、恥ずかしくないもの買い換えようと思った。

 「すみません。装備を見たいのですが」

 「はい、好きに見て行って」

 「剣は、ここにある物だけ出すか?」

 「そうね、少し古い物なら、こっちにあるわ。でも、錆びだらけで、使い物にならないよ。
 それに、研ぎ師に出すより、新しい物を買う方が安いよ」

 「分かりました。取り敢えず、見せてください」

 私は、すぐに、スキル鑑定を使った。なるほど、ほとんどがガラクタだ。でも、1本だけ、闇魔法で、封印された剣があった。

 これは、賢者サビオに聞いたことがあった特別な剣の「魔導剣」だと思った。違っていたら嫌なので、普通の剣も1本買うことにした。それから、盾だ。

 「すみません。この2本、買いたいのですが、預かっておいてください」

 「はい、いいわよ。次は、何を見るの。盾を見せてください。それから、さっきのような古い盾も見せてください」

 「それじゃ、古い盾から、見せるね。こっちよ」

 ローララは、店の裏口近くの樽の前に、私を連れて行った。

 「ここよ。場所をとるので、裏口の外にも、置いているわ。そうそう、古い鎧も、一緒にあるよ」

 「すみません。先に、裏口の外を見ます」

 私は、裏口の外に出て行った。先ほどと同じ様に、スキル鑑定で、調べてみた。すると、闇魔法で、封印された盾と鎧一式が見つかった。

 私は、それらを持って、店の中に戻った。更に、店の中の樽の中の盾も、スキル鑑定で、調べてみたが、ここには、それらしきものはなかった。

 「すみません。これらも、預かってください」

 「あら、一杯持って来たわね。預かっておくね」

 「普通の盾と鎧一式を見たいのですが」

 「それは、向こうの棚に置いてある物ですべてよ。ゆっくり、選んでね」

 「これにします」

 最後に、私は、普通の盾と鎧一式を選んだ。それらも、ローララに預けた。
 
 「ここには、アイテムボックスは置いていませんか?」

 「ここには、ないよ。隣の道具屋に置いてるよ」

 「それでは、清算してください」

 「全部一括でいいの? 結構な金額だよ。大丈夫?」

 「はい、多分、大丈夫です。いくらですか?」

 「ちょっと待ってね。全部で、金貨45枚と銀貨80枚になるよ」

 「分かりました。これで、お願いします」

 私は、冒険者IDをローララに渡した。

 「それじゃ、お負けして、金貨45枚でいいよ」

 「ありがとう。また、来ます」

 「バイバイ」

 私は、店を出て、隣の道具屋に入った。

 「すみません」

 「はい、何か用ですか?」

 「アイテムボックスを見たいのですが。いいですか?」

 「アイテムボックスね。色々あるけど、どの程度の予算なの?」

 「金額がよく分からないです。一通り見せて貰えますか」

 「いいよ。好きなだけ、見て行って。こっちの棚に置いてあるよ」

 私は、言われた棚に置いてあるアイテムボックスを見た。スキル鑑定で、調べてみた。
 
 「すみません。もっと、上等な物って、ありませんか?」

 「えっ、普通の冒険者は、その棚の物で、十分だよ。アイテム100個は入るよ」

 「知っています。それなら、私も持っています。ほら」

 「あら、持っているのね。それに、何個ぶら下げてるのよ。
 子供がそんなに持って、何に使うの?」

 「これでも、ちゃんとした冒険者ですから」

 「そうか、失敗。子供だと思って、その棚を教えたんだ」

 「それでは、奥に行こうか」

 「はい、お願いします」

 私は、店員について、店の奥の部屋に行った。

 「ここは、VIP用の部屋なんだ。普通の客には教えないよ。だから、あなたも内緒にしてね」

 「はい、わかりました」

 この店との出会いが、今後の私の人生に大きな影響を与えるとは、この時は、分からなかった。 
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