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第1章 貴族編

9.孤児院のスタート

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 ローザが、孤児院で働く人を連れてやって来た。ローザを先頭に、少し年輩の女の人と2人の若い女の子が後をついて来ている。

 「キリ、こちらが、孤児院に住み込みで働いてくれる人達です」

 ローザが、少し年輩の女性を紹介してくれた。

 「初めまして、シュリと言います。食事を担当します」

 落ち着いた話し方で、ふくよかな女性だ。美味しいものを沢山知っているような感じだ。

 「よろしくね。私は、キリといいます。孤児院は、初めてなので、何か、気になることがあれば、遠慮なく言ってね」

 「はい、分りました」

 次に、2人の若い女の子が、私の前に出て来た。そして、ローザの横に並んだ。

 「こちらは、子供の世話をするセーラとリカです」

 「セーラといいます。よろしく、お願いします」

 「リカと言います。よろしく、お願いします」

 「2人とも、緊張しなくていいわよ。私は、キリと言います。よろしくね」

 「「はい」」

 2人とも、元気そうで、素直な感じだ。ローザの話では、いずれも、魔法が使えないということだ。まあ、今回は、特に、魔法を使う必要もないので、大丈夫だろう。

 私は、ローザから、3人を引き取って、孤児院に向かった。

 「ここが、孤児院です。まずは、中を案内しますね」

 「「はい」」

 私は、3人を案内して、施設の中を移動していった。職員の宿泊施設で、それぞれの部屋を決めて貰った。

 「荷物は、どうしたの?」

 「どの程度、持ってきていいのか、分らなかったので、後日持ってきます」

 セーラが、私の問いに答えてくれた。そして、リカも頷いている。どうも、この2人は、顔なじみの様だ。仲良しなら、それに越したことはない。

 「そうだ。あなた達は、アイテムボックスを持っている?」

 私は、セーラに聞いて見た。

 「えっ、そんな高価な物、持っていませんよ」

 「それじゃ、あげる」
 
 私は、アイテムボックスを一つずつ、3人に与えた。

 「それに荷物を入れてくると運ぶのが楽よ。でも、100個しか、入らないので、注意してね」

 「すごい! 100個もはいるのですか?」

 セーラが、びっくりして、大きな声を出した。

 「そうよ。珍しいの?」

 「それは、もう、高価だから、私の知っている人は、誰も、持っていませんよ」

 セーラは、リカの方を向いて、同意を求めるような仕草をした。

 「そうですよ。私の周りでも、見たことがないです」

 リカも、同意見のようだ。私は、従業員にいつもアイテムボックスをあげているので、何だか、不思議な感じがした。私の感覚は、一般の人とはずれて来ているのかもしれない。もっと、街の人と接する機会を増やさないといけないね。

 「それじゃ、何か、必要な物は、ないかしら?」

 「一通りそろっているようなので、問題はないと思います」

 シュリが、3人を代表して、答えてくれた。

 「それでは、実際に孤児院を運営しながら、不足な物は、揃えて行きましょう」

 「「はい」」

 「あの、キリ様、この孤児院に入ることが出来る子供に何か、条件はありますか?」

 「どういうこと? 今は、何も、考えていないけど、必要かしら?」

 「必要だと思いますよ。例えば、病気持ちの子供を預かるとなると、治療しないといけないでしょ」

 シュリは、年長者らしいことを言ってくれる。なるほど、色んな場合があるようだ。

 「治療は、この孤児院で行いますよ。私がやってもいいし、知り合いの治療院に任せてもいいし、心配はいらないわ。それに、お金の心配は、しないでね。これでもキリ商店って言う大きな店を経営しているから、お金ならあるわよ」

 「えっ、あのキリ商店ですか。すごい! 全国展開してますよね」

 リカが、突然、割った入って来た。

 「私も、知っています。どの街にも、支店がありますよね」

 どうやら、セーラも知っているようだ。思った以上に、知名度はあるようだ。

 「だから、お金の心配は、いらないわよ。それに、貴方達にも、キリ商店の従業員と同じだけの給料を払うからね。それに、生活費は、すべて私持ちよ」

 「本当ですか? 食費も家賃もいらないのですか?」

 「そうよ。何も支払う必要はないわ」

 「「嬉しい」」

 「ところで、引き取る子供は皆で選ぶということでいいかしら?」

 「私達の意見も聞いてくれるのですか?」

 セーラが、不思議そうに聞き返して来た。

 「当然でしょ。面倒を見るのは、皆で見るのだから、自信がないのに預かることは出来ないわ」

 「分かりました」

 「それでは、後は、いつでも受け入れが出来る様に、準備してね。後は、シュリに任せてもいいかしら?」

 「はい。承りました」

 私は、おおざっぱな事しかできないけど、出だしは、順調な感じがした。一番の収穫は、従業員だ。皆、素直で、役に立ってくれそうだ。

 私は、思ったより、早く仕事が済んだので、久しぶりに街を歩いてみることにした。確かに、この辺りは、本通りから、少し、離れているだけで、厭な雰囲気がする。道には、盗賊ぽい人たちもうろうろしている。

 急に、心配になって来た。あの3人が襲われないようにしないといけない。私は、急いで戻って、孤児院の施設全体を光魔法で、結界を作って、私が認めた者以外出入りできないようにした。そして、魔物も、入れないようにしておいた。

 「これで、いいわ」

 私は、独り言をつぶやいてから、転移魔法で、城に移動した。そして、今日一日の事を、ミユに報告しておいた。
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