32 / 34
31話:山頂の古びた神社へ2
しおりを挟む
山頂へと向かうのは、俺とカエデ、他は数名の妖たち。
「カエデ。もし、あの祠が壊れたらどうなる?」
俺の問に、カエデは難しそうな表情をする。
「そうですね……封印されている妖や魔物たちですが、昔、人間の里と妖の里を襲った強い妖も封印されています。被害は大きくなるでしょう」
じいちゃんが言うには、僧侶に封印されたという妖のせいで、災害が起きたって言っていたから、それだけの力があるということか。
「じいちゃんが住んでいる集落でも、多くの災害があったと言っていたからな」
「ですが、あの量の魔物が溢れていたということは……」
「嫌なことをいうな。そうなる前に対処すればいいだけだ。それに、じいちゃんとばあちゃんが住むこの場所は、俺も好きだからな。必ず守ってみせる」
俺の言葉に、一緒に来た妖も同意した。
「私たちもこの場所が気に入っている。守って見せる」
「その通りだ。この命に代えてでも絶対に守るんだ」
カエデは頷き、瞳に力強い意志が宿る。
みんな、この場所が好きなんだ。戦う理由なんてそれだけで十分だ。
「急ぐぞ」
俺たちは急いで向かうのだった。
神社がある山の麓までやってきたのだが……。
「まさかまだ、これだけの魔物が……」
カエデは目の前の光景に目を見開いて驚く。
カエデだけじゃない。他の面々も同様に驚いている。
一体何に驚いているのか?
それは麓から山頂近くまで蔓延る、魔物の大群であった。
「いっそのこと山ごと吹き飛ばしたいくらいだな」
「……冗談、ですよね?」
カエデや他の妖も、俺に顔を向けている。
こいつら、俺が本当にやると思っているのだろうか?
「冗談だ」
「できないとは言わないのですね?」
やろうと思えばできるが、それをしてしまうと、二人の大好きなこの場所がなくなってしまうのでやらない。
「じいちゃんとばあちゃんは山頂にある桜の木が気に入っているんだ。それに俺も、あの場所が好きになったからな。そんなことはしないさ」
「ですが、これはどうしますか? 一度引き返しますか?」
カエデの言葉に俺は首を横に振って否定する。
見てしまった以上、このまま放置することはできない。
もしそれで、じいちゃんたちに被害が出たらと考えると、ここで見逃したことを後悔することになるから。
俺の気配察知に、山頂から大きな妖力、魔力を持った妖だろうものが確認できる。
恐らく、アレが封印されていた正体だろう。
てか、封印解けてるし……
俺は収納から聖剣を取り出してカエデたちに告げた。
「いや、封印が破られている以上、放置はできない。ここで確実に仕留める」
「ふ、封印が破られている、ですか?」
「申し訳ないが、事実だ」
「やはり、あの大量の魔物は……」
「封印が破られたからだろうな。んじゃあまあ、正面突破するか」
カエデが慌てて俺の服を掴んで止めにかかった。
振り向いてカエデに顔を向ける。
「正気ですか⁉ この量の魔物を前に、正面突破ですか⁉」
「そうだ! 考え直せ! 考えもなしに行くなど無茶だ!」
カエデを筆頭に、俺を止めようとする。
「俺は行くと決めている。それにさ」
「なんでしょうか?」
「この程度の数の魔物でどうして引き返す必要があるんだ?」
「え? ですが明らかに強そうな鬼も……」
カエデが言っているのは、こちらにゆっくりと歩み寄って来ている、オーガの上位種のことだろう。
まあ、オーガよりちょっと強いくらいで問題はない。
アレくらいなら魔王城に乗り込むときに何度も倒してきた相手だ。
加えて今の俺は、帰還時に女神様がさらに強くしてくれたので、楽勝もいいところ。
だから俺は、聖剣を横に一閃。
オーガは崩れ落ち、塵となって消えた。
「「「……え?」」」
俺以外の全員の、間の抜けた声が聞こえた。
「え、あ、え? い、今何を?」
「普通に斬っただけだ。この剣には魔を滅する力があるからな、ああやって塵になって消滅する」
「そんなことを聞いているのではなくて……」
「んじゃあ、行くぞ」
「え? ちょっ⁉」
俺は一気に駆けだし、次々と魔物を倒して山頂へと進んでいく。
「ああ、もう! 置いて行かないでください!」
カエデたちは遅れて俺の後を追いかけるのであった。
「カエデ。もし、あの祠が壊れたらどうなる?」
俺の問に、カエデは難しそうな表情をする。
「そうですね……封印されている妖や魔物たちですが、昔、人間の里と妖の里を襲った強い妖も封印されています。被害は大きくなるでしょう」
じいちゃんが言うには、僧侶に封印されたという妖のせいで、災害が起きたって言っていたから、それだけの力があるということか。
「じいちゃんが住んでいる集落でも、多くの災害があったと言っていたからな」
「ですが、あの量の魔物が溢れていたということは……」
「嫌なことをいうな。そうなる前に対処すればいいだけだ。それに、じいちゃんとばあちゃんが住むこの場所は、俺も好きだからな。必ず守ってみせる」
俺の言葉に、一緒に来た妖も同意した。
「私たちもこの場所が気に入っている。守って見せる」
「その通りだ。この命に代えてでも絶対に守るんだ」
カエデは頷き、瞳に力強い意志が宿る。
みんな、この場所が好きなんだ。戦う理由なんてそれだけで十分だ。
「急ぐぞ」
俺たちは急いで向かうのだった。
神社がある山の麓までやってきたのだが……。
「まさかまだ、これだけの魔物が……」
カエデは目の前の光景に目を見開いて驚く。
カエデだけじゃない。他の面々も同様に驚いている。
一体何に驚いているのか?
それは麓から山頂近くまで蔓延る、魔物の大群であった。
「いっそのこと山ごと吹き飛ばしたいくらいだな」
「……冗談、ですよね?」
カエデや他の妖も、俺に顔を向けている。
こいつら、俺が本当にやると思っているのだろうか?
「冗談だ」
「できないとは言わないのですね?」
やろうと思えばできるが、それをしてしまうと、二人の大好きなこの場所がなくなってしまうのでやらない。
「じいちゃんとばあちゃんは山頂にある桜の木が気に入っているんだ。それに俺も、あの場所が好きになったからな。そんなことはしないさ」
「ですが、これはどうしますか? 一度引き返しますか?」
カエデの言葉に俺は首を横に振って否定する。
見てしまった以上、このまま放置することはできない。
もしそれで、じいちゃんたちに被害が出たらと考えると、ここで見逃したことを後悔することになるから。
俺の気配察知に、山頂から大きな妖力、魔力を持った妖だろうものが確認できる。
恐らく、アレが封印されていた正体だろう。
てか、封印解けてるし……
俺は収納から聖剣を取り出してカエデたちに告げた。
「いや、封印が破られている以上、放置はできない。ここで確実に仕留める」
「ふ、封印が破られている、ですか?」
「申し訳ないが、事実だ」
「やはり、あの大量の魔物は……」
「封印が破られたからだろうな。んじゃあまあ、正面突破するか」
カエデが慌てて俺の服を掴んで止めにかかった。
振り向いてカエデに顔を向ける。
「正気ですか⁉ この量の魔物を前に、正面突破ですか⁉」
「そうだ! 考え直せ! 考えもなしに行くなど無茶だ!」
カエデを筆頭に、俺を止めようとする。
「俺は行くと決めている。それにさ」
「なんでしょうか?」
「この程度の数の魔物でどうして引き返す必要があるんだ?」
「え? ですが明らかに強そうな鬼も……」
カエデが言っているのは、こちらにゆっくりと歩み寄って来ている、オーガの上位種のことだろう。
まあ、オーガよりちょっと強いくらいで問題はない。
アレくらいなら魔王城に乗り込むときに何度も倒してきた相手だ。
加えて今の俺は、帰還時に女神様がさらに強くしてくれたので、楽勝もいいところ。
だから俺は、聖剣を横に一閃。
オーガは崩れ落ち、塵となって消えた。
「「「……え?」」」
俺以外の全員の、間の抜けた声が聞こえた。
「え、あ、え? い、今何を?」
「普通に斬っただけだ。この剣には魔を滅する力があるからな、ああやって塵になって消滅する」
「そんなことを聞いているのではなくて……」
「んじゃあ、行くぞ」
「え? ちょっ⁉」
俺は一気に駆けだし、次々と魔物を倒して山頂へと進んでいく。
「ああ、もう! 置いて行かないでください!」
カエデたちは遅れて俺の後を追いかけるのであった。
91
お気に入りに追加
527
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる