19 / 34
18話:田舎に行こう
しおりを挟む
連休となり、俺たちは母方の実家へと向かっていた。
電車での移動なのだが、やけに視線が俺たちの方へと向けられていたのだが……
「勇夜、景色が変わっていく!」
「ああ、うん。そうだな……」
電車内で景色の移り変わりに逐一反応を示すアウラが原因だ。
「アウラ、景色を楽しむのはいいが、せめて――」
「お兄ちゃん見て見て! あんなに遠かった山がもうこんな近くにあるよ!」
高齢の老夫婦から生暖かい視線が向けられ、微かな話し声が聞こえた。
「私たちは都会に移り変わるのを見てはしゃいでいたわね。ねぇ、あなた?」
「そうじゃな。あの頃が懐かしいのう。でも他の娘に目移りしていましたけどねぇ?」
「……そんな記憶はないがのう~」
うん。こっちの会話はどうでもいいや。
俺は騒いでいる二人に、少しは大人しくしているようにと言うのだが。
「別にいいじゃない。勇夜だって見ればいいのに」
「アウラちゃんの言うとおり、お兄ちゃんも見ればいいのに!」
注目を集めるから嫌なんだよ!
てか二人とも周り見えているのか?
それから説得すること数十分。二人は静かになった。
アウラはこっちにきて日も経っていないので兎も角、陽菜は中学生なんだから少しは周りを見てほしいものだ。
それから俺たちは電車を乗り継ぎ、数時間かけてようやく祖父母の家がある駅へと到着した。
駅も無人であり、周囲に人の気配はない。
離れたところに数件の民家があるくらいで、他は進まないと見つけることはできない。
そんなことは兎も角、やっと着いたのだ。
まずはそれを喜ぶとしよう。
「久しぶりに来たな」
「そうだね。ここは何にも変わってないや」
俺の言葉に頷いた陽菜は、懐かしそうに周囲を見渡し、そして深呼吸をした。
「う~ん! にしても空気が美味しいね!」
「だな~」
アウラを見ると、駅から出たところで目を見開いていた。
「アウラ。どうだ?」
「二人の言っている意味がやっと分かった気がする。確かに空気が美味しく感じるわね」
何度か深呼吸をしたアウラ。
それを見て俺と陽菜は顔を見合わせて笑った。
「よかったね」
「ああ。連れてきてよかった。存分に田舎の良さを教えないとな」
「うん!」
それから俺たちは祖父母の家へと向かって歩き出した。
祖父母の家は少し離れたところにある。電話した時に迎えに行くと言っていたが、ゆっくり景色を楽しみながら行くと伝えた。
それから俺と陽菜はアウラが「アレは何?」と聞いてくるので、それに答えていた。
気付けば俺たちは、祖父母の家へと着いていた。
「着いたか」
「二人とも元気かな?」
「電話した時は二人とも元気そうだったよ」
「よかった」
嬉しそうにする陽菜を見てから、俺はアウラへと顔を向けた。
「アウラ驚いたか?」
「そうね。こんな山奥に家があるとは思わないわね。でも、いいところね」
「嬉しいな。でも、来たばかりだ。ゆっくり楽しんでいこう」
俺たちは敷地へと入り、玄関のチャイムを鳴らす。
程なくして「は~い」という初老の女性の声が聞こえた。
玄関を開けたのは、俺と陽菜の祖母、梅だ。
祖母は俺と陽菜を見るなり、顔を綻ばせた。
「久しぶり、おばあちゃん」
「久しぶりだね、おばあちゃん! 来たよ!」
「久しぶり。よく来たわね。あら、そちらの子は、勇夜が話していた子?」
祖母が隣にいるアウラへと顔を向けた。
「そう。アウローラだ。アウラって呼んでやってくれ」
「そう。アウラちゃんね。ゆっくりしていってね」
「アウローラです。お邪魔する」
「よろしくね。父さんもいるわ。それに駅から歩いて来たなら疲れたでしょ。さあ、上がって。お茶を淹れるわ」
祖母に促され、俺たちは家に上がった。
祖母に促されるまま居間に行くと、新聞を広げた祖父、伊助の姿があった。
俺と陽菜を見るなり顔に笑みを浮かべる。
「大きくなったな、勇夜、陽菜」
「久しぶり、おじいちゃん」
「久ぶりだね、おじいちゃん!」
「久しぶり。その子が勇夜の話していた子か?」
「そう。アウローラだ。アウラって呼んでやってくれ」
「祖父の伊助だ。よろしく。何もない田舎だが、ゆっくりしていってくれ」
「アウローラです。お世話になるわ。それに、ここまでに来る途中、楽しかったので問題はないわよ」
「ははっ、それは何よりだ」
そこに、祖母がお盆に人数分のお茶を持ってやってきた。
「はい。先ずはお茶にしましょうか」
俺たちはお茶を飲みながら、ゆっくりと話すのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下にある【♡】をポチッと押すのと、【ブクマ】をしていただけたら嬉しいです!
作者の励みになり、執筆の原動力になります!
少しでも応援したい、という方はよろしくお願いします!
電車での移動なのだが、やけに視線が俺たちの方へと向けられていたのだが……
「勇夜、景色が変わっていく!」
「ああ、うん。そうだな……」
電車内で景色の移り変わりに逐一反応を示すアウラが原因だ。
「アウラ、景色を楽しむのはいいが、せめて――」
「お兄ちゃん見て見て! あんなに遠かった山がもうこんな近くにあるよ!」
高齢の老夫婦から生暖かい視線が向けられ、微かな話し声が聞こえた。
「私たちは都会に移り変わるのを見てはしゃいでいたわね。ねぇ、あなた?」
「そうじゃな。あの頃が懐かしいのう。でも他の娘に目移りしていましたけどねぇ?」
「……そんな記憶はないがのう~」
うん。こっちの会話はどうでもいいや。
俺は騒いでいる二人に、少しは大人しくしているようにと言うのだが。
「別にいいじゃない。勇夜だって見ればいいのに」
「アウラちゃんの言うとおり、お兄ちゃんも見ればいいのに!」
注目を集めるから嫌なんだよ!
てか二人とも周り見えているのか?
それから説得すること数十分。二人は静かになった。
アウラはこっちにきて日も経っていないので兎も角、陽菜は中学生なんだから少しは周りを見てほしいものだ。
それから俺たちは電車を乗り継ぎ、数時間かけてようやく祖父母の家がある駅へと到着した。
駅も無人であり、周囲に人の気配はない。
離れたところに数件の民家があるくらいで、他は進まないと見つけることはできない。
そんなことは兎も角、やっと着いたのだ。
まずはそれを喜ぶとしよう。
「久しぶりに来たな」
「そうだね。ここは何にも変わってないや」
俺の言葉に頷いた陽菜は、懐かしそうに周囲を見渡し、そして深呼吸をした。
「う~ん! にしても空気が美味しいね!」
「だな~」
アウラを見ると、駅から出たところで目を見開いていた。
「アウラ。どうだ?」
「二人の言っている意味がやっと分かった気がする。確かに空気が美味しく感じるわね」
何度か深呼吸をしたアウラ。
それを見て俺と陽菜は顔を見合わせて笑った。
「よかったね」
「ああ。連れてきてよかった。存分に田舎の良さを教えないとな」
「うん!」
それから俺たちは祖父母の家へと向かって歩き出した。
祖父母の家は少し離れたところにある。電話した時に迎えに行くと言っていたが、ゆっくり景色を楽しみながら行くと伝えた。
それから俺と陽菜はアウラが「アレは何?」と聞いてくるので、それに答えていた。
気付けば俺たちは、祖父母の家へと着いていた。
「着いたか」
「二人とも元気かな?」
「電話した時は二人とも元気そうだったよ」
「よかった」
嬉しそうにする陽菜を見てから、俺はアウラへと顔を向けた。
「アウラ驚いたか?」
「そうね。こんな山奥に家があるとは思わないわね。でも、いいところね」
「嬉しいな。でも、来たばかりだ。ゆっくり楽しんでいこう」
俺たちは敷地へと入り、玄関のチャイムを鳴らす。
程なくして「は~い」という初老の女性の声が聞こえた。
玄関を開けたのは、俺と陽菜の祖母、梅だ。
祖母は俺と陽菜を見るなり、顔を綻ばせた。
「久しぶり、おばあちゃん」
「久しぶりだね、おばあちゃん! 来たよ!」
「久しぶり。よく来たわね。あら、そちらの子は、勇夜が話していた子?」
祖母が隣にいるアウラへと顔を向けた。
「そう。アウローラだ。アウラって呼んでやってくれ」
「そう。アウラちゃんね。ゆっくりしていってね」
「アウローラです。お邪魔する」
「よろしくね。父さんもいるわ。それに駅から歩いて来たなら疲れたでしょ。さあ、上がって。お茶を淹れるわ」
祖母に促され、俺たちは家に上がった。
祖母に促されるまま居間に行くと、新聞を広げた祖父、伊助の姿があった。
俺と陽菜を見るなり顔に笑みを浮かべる。
「大きくなったな、勇夜、陽菜」
「久しぶり、おじいちゃん」
「久ぶりだね、おじいちゃん!」
「久しぶり。その子が勇夜の話していた子か?」
「そう。アウローラだ。アウラって呼んでやってくれ」
「祖父の伊助だ。よろしく。何もない田舎だが、ゆっくりしていってくれ」
「アウローラです。お世話になるわ。それに、ここまでに来る途中、楽しかったので問題はないわよ」
「ははっ、それは何よりだ」
そこに、祖母がお盆に人数分のお茶を持ってやってきた。
「はい。先ずはお茶にしましょうか」
俺たちはお茶を飲みながら、ゆっくりと話すのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下にある【♡】をポチッと押すのと、【ブクマ】をしていただけたら嬉しいです!
作者の励みになり、執筆の原動力になります!
少しでも応援したい、という方はよろしくお願いします!
187
お気に入りに追加
524
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる