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11話:絡んできた不良には容赦しない

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 それから大きな変化もなく、日常が過ぎていく。
 昼休みの昼食をいつもの屋上で食べ終わって戻る時、三年学年の先輩に呼び止められた。

「よぉ。お前が二年の朝桐か?」
「……そうですけど?」

 三人組の不良が声をかけてきた。
 この三人は学校で有名な不良グループだ。
 一年の時から関わらないようにと避けていたが、ついに目を付けられたようだった。
 周りの生徒は関わらないようにと距離を取っている。

「二年の安倍と仲がいいらしいじゃねぇか?」
「仲がいいってわけでもないが……」
「うるせぇ! 見てれば分かるんだよ!」
「はぁ……それで俺に何か用ですか?」

 三人は笑みを浮かべ、一人が肩を組んできて、耳元で告げた。

「放課後、体育館裏に来い。分かったな?」
「断ったらどうなるか分かっているよな?」
「朝桐、答えろ」

(体育館裏ってのはもう古い気もするのだが……)

 俺は放課後、アウラと陽菜と一緒に帰るという予定がある。

「いや、無理ですけど? もう予定が入っているので。では」

 そう告げて立ち去ろうとしたら、ガシッと肩を強く掴まれた。
 相当力を入れているようだが、異世界で鍛え上げられ、現代で最強な俺には通用しない。

「……なんですか?」
「断ればどうなるのか、分かって言っているのか? あぁ?」
「絶対に来い。いいな?」
「痛い目に遭いたくなかったらな」

 俺は内心で大きなため息を吐いた。
 こいつらのことだ。呼び出した体育館裏で俺をボコボコにするのだろう。
 てか、こいつら前に安倍さんに告白して玉砕してたやつらだ。
 なるほど。仲がいい俺を見て嫉妬したのだろう。

「分かりました。放課後ですね」
「いいな? 絶対に来い」
「分かりましたよ」

 睨みつける彼らは少しして戻って行った。
 教室に戻った俺を見たクラスメイトが、ヒソヒソと会話を始めた。
 そして一人が歩み寄って声をかけてきた。

「あの、朝桐さん、大丈夫ですか? 先生に言った方が……」

 心配な表情で声をかけてきたのは、委員長の綾崎梓あやさき あずささんだった。
 多分、俺が絡まれているのを見ていたのだろう。

「綾崎さん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「いえ、その、大丈夫ならいいのですが……何かあれば言ってください」
「その時はそうするよ」

 俺が席に着くと、今回絡まれる原因となった安倍さんが立っていた。
 彼女は少し心配そうな表情をしていた。

「ごめんなさい」
「大丈夫。放課後は妹とアウラの迎えに行く予定があるから。サクッと片付けてくる」
「迷惑をかけます」
「まあ、二度と逆らえないようにはしとくけどね」

 そんな俺の言葉に彼女はふふっと笑みを浮かべた。

「程々に、ね? 朝桐くんは強いんだから」
「分かってるよ」

 そして午後の授業が始まる。
 その間、俺はあいつらをどうしてやろうかと考えるのだった。
 放課後。俺は言われた通り体育館裏へとやってきた。
 着くと、そこでは昼休みに絡んできた三人の他に、五人ほど増えていた。
 誰もがタバコを吸っている。
 俺は内心で深い溜息を吐きながらも、口を開く。

「それで? この後妹を迎えに行かないとなんだ。手短に済ませてくれ」
「あぁ? この状況でそれを言うか?」
「早く要件を言ってくれ。言っただろ。予定があるって。それとも呼んだ理由はアレか? 安倍さんと仲良くしている俺に嫉妬しているのか?」
「んだと!」

 八人で俺を囲む。
 手には鉄パイプが握られている。

「暴力か?」
「テメェが安倍を俺達に寄こせばそれでいいんだよ」

 寄こせ? こいつらは人を何だと思っているのか。
 少しイラついた俺は少し煽ってやることに。

「安倍さんはモノじゃない。てか、玉砕したのにも関わらず、強引なのは男としてどうかと思うけどな?」
「そうか。数カ月は病院のベッドから起き上がれないと思うが、悪く思うなよ? やっちまえ」

 その合図によって、男達が一斉に襲い掛かってきた。
 襲ってくるのを横目に、俺は笑みを浮かべた。

「んじゃあ、このままやられるわけにもいかないから、自己防衛ってことで」

 振るわれる鉄パイプを俺は掴んだ。

「……は?」

 男達から呆けた声が聞こえたが関係ない。

「痛いのはもう御免だからな!」
「ひ、怯むな!」

 立て続けに攻撃が俺へと迫るが、向こうでの戦いと比べたらお遊びもいいところだ。
 一撃目を回避して、肘を背中に落とす。

「がっ」

 一人が地面に倒れる。
 そこから俺は次々と倒していく。
 誰もが肩を外されたりと、それなりの怪我を負っていた。
 先に攻撃してきたのはあちら側で、しかも鉄パイプを持っているのだ。
 この程度で済んで良かっただろう。
 俺は残った三人へと顔を向けた。

「それで、どうする?」

 怯んでいたが、少し笑ってやると三人は襲い掛かってきた。

「死ねぇ!」
「この程度の挑発で怒ってちゃダメだろ。闘いは冷静でいることが大切だ」

 振り下ろされた鉄パイプを避け、腹部に手加減したパンチを打ち込む。

「うっ……」

 一人が腹を抱えて地面にうずくまる。

「背中がガラ空きだ!」
「死角からの攻撃なら声を上げるな」

 鉄パイプを掴むと、ぐにゃっと折り曲げてやる。
 男は化け物を見るような目で俺を見る。

「ば、化け物め」
「失礼な。俺は人間だ」

 俺は男の肩を外す。

「いてぇぇぇぇ!」
「うるさい」
「がぁっ」

 腹に掌打を打ち込むと、そのまま膝から崩れ落ちた。
 まだ全員の意識がある。
 なので、俺は全員を一ヵ所に集めて告げた。

「集団で人を襲っておいてこのザマか?」

 誰も何も言わない。

「まあいいや。次はこの程度で済むと思うなよ? 分かったな?」

 誰も返事をしない。
 だから俺は語気を強め、さらには少しだけ殺気を飛ばす。
 すると男達から「ヒィ……」という小さな悲鳴が聞こえた。
 俺は最初に昼休みに絡んできたヤツの胸倉を掴み上げた。

「分かったか、って聞いているんだ」
「わ、分かった! 分かったから許してくれ!」
「許してやるが、今後は俺のクラスのヤツにちょっかいをかけるなよ? もし次なにかしたら……」

 俺は墜ちている鉄パイプを掴み、握り締め、変形した。
そんな鉄パイプを見て、男達は顔を青くする。

「――潰す」

 俺の言葉にコクコクと何度も頷くのだった。
 それを見た俺は満足そうに頷くと、妹とアウラの迎えへと行くのだった。

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