8 / 34
7話:地球もファンタジー
しおりを挟む
◇ ◇ ◇
「――え? 朝桐さん……?」
「安倍さん、なのか……?」
しばらくの間、俺の思考は停止した。
それは困惑によって。
「え、えっと……こんばんは。それじゃあ――」
「待ちなさい」
見なかったことにして、去ろうとする俺の肩を、安倍さんはガッチリと掴んだ。
ゆっくりと振り返ると、そこには笑みを浮かべている安倍さんの顔があった。
そして現在、俺は安倍さんと公園のベンチでアレコレと質問をしていた。
Q:さっきの魔物は?
A:妖怪、妖、物の怪。総じて『怪異』と呼ばれる。
Q:安倍さんは何者?
A:怪異や穢れを祓う、『陰陽師』と呼ばれる者。
Q:さっきの獣は?
A:式神。倒した怪異を札に封じた者。他にも種類がある。
Q:魔法みたいな炎は?
A:妖力を使って行使される陰陽術。
以上が俺の質問した内容だった。
思ったより素直に話してくれたことに驚きだった。
それらを聞いて俺から出た感想は……
「女神様、地球もファンタジーでした……」
少し遠い目をするのだった。
「それでは私からも質問があります。もちろん私は朝桐さんの質問に答えたのだから、答えてくれますよね?」
「ハイ、モチロンデス」
もうね、「答えろよな?」という圧が凄い。
「では朝桐さんは何者? 鬼をあんな簡単に倒すなんて、一般人じゃないですよね?」
なんて答えるか迷うが、安倍さんが一般人ではないならこちらも話そうと、決意する。
「つい最近まで異世界で勇者やってました」
「………………」
無言の圧が怖いです! 誰か助けてください~って……誰もいないけどな!
「正直に答えて下さい。土御門家の者ですか?」
「違う違う。本当に俺は異世界で勇者をやってたんだって!」
「……証拠は?」
安倍さんは警戒と疑いの眼差しを俺に向ける。
どうやって説明しようかと悩むが、案外簡単なことだった。
それは魔法を見せればいいのだから。
俺は指先に小さな火を灯す。
「これが魔法だ」
指先に灯る火をマジマジと見つめる彼女。
「マジック?」
「どれだけ俺の言葉を信じてないんだ……」
これ以上の魔法は使えない。
被害が出るかもしれないからだ。
ならと。俺は近場の、大きな石へと近づく。
「何をするつもりですか?」
「まあ、見てろ」
俺は石を掴み上げる。
1トン以上はあるはずなのに、俺からしてみれば軽すぎる。
「驚きました……あなたはゴリラだったのですか?」
「……おい? それは違うよな? 俺、どう見ても人間だよな?」
少し傷付いた。同時にイラっとしてしまった。
だから俺は手に持った石を上空へと投げた。
投げられた石は高く飛ぶのを見て、俺は跳躍した。
眼下を見ると、彼女は驚いた表情をしていた。
だがまだだ。
俺は未だに飛び続けている石に手のひらを向け、魔法名を唱えた。
「――ファイヤージャベリン!」
一本の炎の槍が石に向かって放たれ、貫通した。
着地した俺は、落ちて来る石をみつつ、収納魔法から先ほどの木刀を取り出して構えた。
そして一閃。
石が粉々に消し飛んだ。
俺はさらに追い打ちとばかり、飛行魔法を使って空中で胡坐を掻いてみせた。
「安倍さん、これで信じてくれたかな?」
安倍さんは驚きのあまり固まっていた。
うん。俺、もう行っていいかな? マジで怒られそう。
そこに丁度、俺のスマホから着信音が鳴り響き、安倍さんはハッとした表情になる。
「どうした?」
『どうしたじゃない! お兄ちゃん今どこ!』
「ちょっと友達と会って立ち話してたところ。すぐに買って帰るからそう怒るなって」
『パーゲンダッツ買ってきてね』
「ちょっ、高いって!」
『遅いお兄ちゃんが悪い! アウラちゃんもご立腹だよ!』
「はい、すぐに買って帰ります!」
ツー、ツーと電話の切れた音がする。
スマホをポケットにしまった俺は肩を落とす。
クソ! 俺は巻き込まれただけだ! 悪くない!
「あ、朝桐さん……」
「悪い。妹からだ。早くアイス買って来いって、ご立腹だ……」
「朝桐さんが異世界で勇者をやっていたということは、にわかには信じがたいけど、今の光景をみたら信じることしかできないです。もしかして妹さんも異世界で?」
「いいや、俺だけだよ。まあ、向こうの世界から魔王の娘を保護してきたけどな。楽しいようでなによりだ」
「魔王の娘?」
「まあ、それはまた今度、機会があればな」
「なら連絡先を交換しましょう。スマホを出してください」
「え?」
「早くしてください! 私だって早く帰りたいんです!」
「あ、うん。はい……」
俺は安倍さんと連絡先を半強制的に交換させられた。
「あとで色々と聞きますからね?」
「分かったよ。何かあれば電話でもRINEのチャットにでも送ってくれ」
「最後に、助けてくれてありがとう」
「気にするな。助けるのは勇者の役目だからな」
そう告げて俺はアイスを買いにコンビニへと向かった。
その後、帰ってきた俺の顔を、陽菜とアウラが一発ずつ殴るのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下にある【♡】をポチッと押すのと、【ブクマ】をしていただけたら嬉しいです!
作者の励みになり、執筆の原動力になります!
少しでも応援したい、という方はよろしくお願いします!
「――え? 朝桐さん……?」
「安倍さん、なのか……?」
しばらくの間、俺の思考は停止した。
それは困惑によって。
「え、えっと……こんばんは。それじゃあ――」
「待ちなさい」
見なかったことにして、去ろうとする俺の肩を、安倍さんはガッチリと掴んだ。
ゆっくりと振り返ると、そこには笑みを浮かべている安倍さんの顔があった。
そして現在、俺は安倍さんと公園のベンチでアレコレと質問をしていた。
Q:さっきの魔物は?
A:妖怪、妖、物の怪。総じて『怪異』と呼ばれる。
Q:安倍さんは何者?
A:怪異や穢れを祓う、『陰陽師』と呼ばれる者。
Q:さっきの獣は?
A:式神。倒した怪異を札に封じた者。他にも種類がある。
Q:魔法みたいな炎は?
A:妖力を使って行使される陰陽術。
以上が俺の質問した内容だった。
思ったより素直に話してくれたことに驚きだった。
それらを聞いて俺から出た感想は……
「女神様、地球もファンタジーでした……」
少し遠い目をするのだった。
「それでは私からも質問があります。もちろん私は朝桐さんの質問に答えたのだから、答えてくれますよね?」
「ハイ、モチロンデス」
もうね、「答えろよな?」という圧が凄い。
「では朝桐さんは何者? 鬼をあんな簡単に倒すなんて、一般人じゃないですよね?」
なんて答えるか迷うが、安倍さんが一般人ではないならこちらも話そうと、決意する。
「つい最近まで異世界で勇者やってました」
「………………」
無言の圧が怖いです! 誰か助けてください~って……誰もいないけどな!
「正直に答えて下さい。土御門家の者ですか?」
「違う違う。本当に俺は異世界で勇者をやってたんだって!」
「……証拠は?」
安倍さんは警戒と疑いの眼差しを俺に向ける。
どうやって説明しようかと悩むが、案外簡単なことだった。
それは魔法を見せればいいのだから。
俺は指先に小さな火を灯す。
「これが魔法だ」
指先に灯る火をマジマジと見つめる彼女。
「マジック?」
「どれだけ俺の言葉を信じてないんだ……」
これ以上の魔法は使えない。
被害が出るかもしれないからだ。
ならと。俺は近場の、大きな石へと近づく。
「何をするつもりですか?」
「まあ、見てろ」
俺は石を掴み上げる。
1トン以上はあるはずなのに、俺からしてみれば軽すぎる。
「驚きました……あなたはゴリラだったのですか?」
「……おい? それは違うよな? 俺、どう見ても人間だよな?」
少し傷付いた。同時にイラっとしてしまった。
だから俺は手に持った石を上空へと投げた。
投げられた石は高く飛ぶのを見て、俺は跳躍した。
眼下を見ると、彼女は驚いた表情をしていた。
だがまだだ。
俺は未だに飛び続けている石に手のひらを向け、魔法名を唱えた。
「――ファイヤージャベリン!」
一本の炎の槍が石に向かって放たれ、貫通した。
着地した俺は、落ちて来る石をみつつ、収納魔法から先ほどの木刀を取り出して構えた。
そして一閃。
石が粉々に消し飛んだ。
俺はさらに追い打ちとばかり、飛行魔法を使って空中で胡坐を掻いてみせた。
「安倍さん、これで信じてくれたかな?」
安倍さんは驚きのあまり固まっていた。
うん。俺、もう行っていいかな? マジで怒られそう。
そこに丁度、俺のスマホから着信音が鳴り響き、安倍さんはハッとした表情になる。
「どうした?」
『どうしたじゃない! お兄ちゃん今どこ!』
「ちょっと友達と会って立ち話してたところ。すぐに買って帰るからそう怒るなって」
『パーゲンダッツ買ってきてね』
「ちょっ、高いって!」
『遅いお兄ちゃんが悪い! アウラちゃんもご立腹だよ!』
「はい、すぐに買って帰ります!」
ツー、ツーと電話の切れた音がする。
スマホをポケットにしまった俺は肩を落とす。
クソ! 俺は巻き込まれただけだ! 悪くない!
「あ、朝桐さん……」
「悪い。妹からだ。早くアイス買って来いって、ご立腹だ……」
「朝桐さんが異世界で勇者をやっていたということは、にわかには信じがたいけど、今の光景をみたら信じることしかできないです。もしかして妹さんも異世界で?」
「いいや、俺だけだよ。まあ、向こうの世界から魔王の娘を保護してきたけどな。楽しいようでなによりだ」
「魔王の娘?」
「まあ、それはまた今度、機会があればな」
「なら連絡先を交換しましょう。スマホを出してください」
「え?」
「早くしてください! 私だって早く帰りたいんです!」
「あ、うん。はい……」
俺は安倍さんと連絡先を半強制的に交換させられた。
「あとで色々と聞きますからね?」
「分かったよ。何かあれば電話でもRINEのチャットにでも送ってくれ」
「最後に、助けてくれてありがとう」
「気にするな。助けるのは勇者の役目だからな」
そう告げて俺はアイスを買いにコンビニへと向かった。
その後、帰ってきた俺の顔を、陽菜とアウラが一発ずつ殴るのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下にある【♡】をポチッと押すのと、【ブクマ】をしていただけたら嬉しいです!
作者の励みになり、執筆の原動力になります!
少しでも応援したい、という方はよろしくお願いします!
222
お気に入りに追加
527
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~
黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。
※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる