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第5章
3話:魔都
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赤丸の背に乗り、俺たちは再び空を進む。
赤丸の羽ばたきは力強く、上昇するたびに空気が冷たくなるが、その中にも朝日の温もりを感じる。眼下に広がる景色は徐々に変化していき、山や森を抜けると、次第に大地が広がり始めた。
遥か彼方に、それまでとは明らかに異なる光景が見えてくる。広大な都市――魔都だ。
その中心にそびえる魔王城が目を引く。
城は黒く輝く鉱石でできているのか、光を受けて不思議な反射をしている。
魔都はその周囲に広がる町並みが密集しており、広大な城壁で囲まれている。
空から見ても、街全体が計画的に作られていることがわかる。
区画ごとに建物の大きさや色が異なり、それぞれ異なる役割を担っているようだ。
「壮観だな」
「さすが魔族の中心地といったところだ。主、どうする? 直接城に向かうか?」
それもいいのだが……う~ん。
「魔都をゆっくり見たいし、下に降りるとするか。それでいいか?」
「私は構わないよ。主に従うのみさ」
俺たちは赤丸をゆっくりと降下させ、魔都の外れにある広場に着地した。
赤丸は再び小さくなり、エイシアスが幻術を施して周囲に馴染む姿へと変化させる。俺たちは街道を歩きながら、魔都の正門へと向かった。
正門にはこれまでの町の門とは比べ物にならないほど屈強な魔族の衛兵たちが立っている。
鎧は黒光りし、装飾が施された槍を構えている姿は、威圧感がある。
「通行許可証はあるか?」
門番の鋭い声が響く。
「旅の者だ。はぐれたワイバーンに襲われて、身分証とかはないんだ」
証拠としてワイバーンの鱗を数枚と、牙を取り出して見せる。
「なっ、どのあたりだ?」
「土地勘はほとんどないが、向こうの山近くだな。一体だけだったから、もういないよ」
「そうだったのか……情報提供感謝する」
「で、通っていいのか?」
尋ねると何か話しており、すぐにこちらに向き直り口を開いた。
「いいだろう。ただし、この許可札を持っておくように」
木で出来た札を手渡され、説明を受ける。
魔都に滞在中、持っていればいいそうだ。魔都を出るときに返却すればいいそうなので、適当に流して聞いておいた。
魔王と会うので、返すことはできなさそうだ。
門番に礼を言い、俺とエイシアスは門を潜り抜け、魔都へと足を踏み入れた。
街に入ると、さらにその規模の大きさが実感できた。
通りは広く、両脇には立派な建物が立ち並んでいる。路地では魔族の商人たちが声高に商品を売り込んでおり、独特な魔族文化が色濃く反映された商品が並んでいた。
特に目を引くのは、不思議な光を放つ鉱石や魔力が込められた武具だ。
「主、この街では魔法が生活に根付いているようだ」
「ああ。帝国の街とも全然違う。面白い場所だ」
人間よりも、魔族は魔法適性が高いのが理由だろう。
俺たちは中央広場へと向かいながら、次の行動を考えた。魔王城に入るには、まず信頼を得る必要がある。
だが、俺たちには関係ない。そのまま武力で押し通るつもりでいる。
その前にゼフィルスが出てきそうではあるが。
「宿を探すか。一日散策してから魔王城に行ってゼフィルスを呼び出すとしようか」
「ここまで穏便だったから、可笑しいと思ったんだ」
「最初から問題ばかりだと面倒だって気付いたんだ」
問答無用で殺せばいいのだが、後々追われることになるので、それが面倒くさいのだ。
適当に誤魔化して穏便に済めばそれでいい。それが無駄だった場合、武力行使すればいいのだ。
ある程度観察していたが、魔族といえど、人間よりもちょっと強いだけなので、俺とエイシアスからしてみれば雑魚に変わりはない。
「まずは鍛冶屋でも探すか」
「買い物するにも金がないと始まらないからね」
そうと決まれば、まずは魔都について情報集しないとだな。
その後、通行人から色々と話しを聞いて回り、少し外れた場所にある丘へとやってきた。
丘の上に立ち、俺はその全貌を目にした。巨大な円形の都市、まるで黒曜石で造られたかのような漆黒の魔王城がその中心にそびえ立っている。
その存在感たるや、遠くから見ても圧倒的だ。あれがこの都市の心臓――魔王の居城だというのだから、威圧感も納得がいく。
蠟燭や松明の代わりに、魔石を加工することで道や部屋を照らしているという。ここから夜景を見れば、きっと綺麗だろう。
魔石をこんな日常的に使うなんて、魔族の文化は人間界のそれとはまったく違うんだと実感する。ここには、魔族特有の知恵や技術が詰まっている。
この都市は四つの区画で分けられているらしい。案内人の話を思い出しながら、俺はそれぞれの特徴を頭の中で整理する。
まず目を引くのはやはり中央区。
魔王城を中心に、豪奢な建物が規則正しく配置されている。ここには魔王の家臣や高位の魔族たちが住むらしい。遠くからでも高貴さが漂うその景観は、まさに魔族の支配階級を象徴している。広場のような場所も見える。
次に見えるのは居住区だ。
魔都に暮らす一般の魔族たちが住むエリアで、中央区とは違い、建物の大きさも形も様々だ。一見して雑多な印象を受けるが、どこか活気に満ちているのがわかる。
道端には市場が広がり、子どもたちが遊ぶ姿も見える。魔族ってもっと物騒な連中だと思っていたけれど、意外と人間と変わらない暮らしをしている。
その隣には鍛冶工房区が広がっている。
遠くからでも聞こえる金属を打つ音が、この場所の熱気を物語っている。
立ち込める黒煙や赤く燃え上がる炎――ここは武器や防具、魔道具を生み出す街だ。
腕利きの職人たちが集まり、日夜鍛冶作業に明け暮れているという。
最後に見えたのが商業区だ。
無数の屋台や店舗が密集し、街一番の賑やかさを誇るエリアらしい。
商人たちが集まり、魔族同士だけでなく、異界の種族とも交易をしているとか。
エキゾチックな品々や珍しい魔石、魔法具が手に入るらしい。
俺みたいな旅人にとっては、一番面白そうな場所だと思う。
四つの区画、それぞれが異なる役割を果たしながらも、全体で一つの街を形作っている。
しばらく眺めた俺とエイシアスは、ワイバーンの素材を換金するために鍛冶工房区へと向かうのだった。
赤丸の羽ばたきは力強く、上昇するたびに空気が冷たくなるが、その中にも朝日の温もりを感じる。眼下に広がる景色は徐々に変化していき、山や森を抜けると、次第に大地が広がり始めた。
遥か彼方に、それまでとは明らかに異なる光景が見えてくる。広大な都市――魔都だ。
その中心にそびえる魔王城が目を引く。
城は黒く輝く鉱石でできているのか、光を受けて不思議な反射をしている。
魔都はその周囲に広がる町並みが密集しており、広大な城壁で囲まれている。
空から見ても、街全体が計画的に作られていることがわかる。
区画ごとに建物の大きさや色が異なり、それぞれ異なる役割を担っているようだ。
「壮観だな」
「さすが魔族の中心地といったところだ。主、どうする? 直接城に向かうか?」
それもいいのだが……う~ん。
「魔都をゆっくり見たいし、下に降りるとするか。それでいいか?」
「私は構わないよ。主に従うのみさ」
俺たちは赤丸をゆっくりと降下させ、魔都の外れにある広場に着地した。
赤丸は再び小さくなり、エイシアスが幻術を施して周囲に馴染む姿へと変化させる。俺たちは街道を歩きながら、魔都の正門へと向かった。
正門にはこれまでの町の門とは比べ物にならないほど屈強な魔族の衛兵たちが立っている。
鎧は黒光りし、装飾が施された槍を構えている姿は、威圧感がある。
「通行許可証はあるか?」
門番の鋭い声が響く。
「旅の者だ。はぐれたワイバーンに襲われて、身分証とかはないんだ」
証拠としてワイバーンの鱗を数枚と、牙を取り出して見せる。
「なっ、どのあたりだ?」
「土地勘はほとんどないが、向こうの山近くだな。一体だけだったから、もういないよ」
「そうだったのか……情報提供感謝する」
「で、通っていいのか?」
尋ねると何か話しており、すぐにこちらに向き直り口を開いた。
「いいだろう。ただし、この許可札を持っておくように」
木で出来た札を手渡され、説明を受ける。
魔都に滞在中、持っていればいいそうだ。魔都を出るときに返却すればいいそうなので、適当に流して聞いておいた。
魔王と会うので、返すことはできなさそうだ。
門番に礼を言い、俺とエイシアスは門を潜り抜け、魔都へと足を踏み入れた。
街に入ると、さらにその規模の大きさが実感できた。
通りは広く、両脇には立派な建物が立ち並んでいる。路地では魔族の商人たちが声高に商品を売り込んでおり、独特な魔族文化が色濃く反映された商品が並んでいた。
特に目を引くのは、不思議な光を放つ鉱石や魔力が込められた武具だ。
「主、この街では魔法が生活に根付いているようだ」
「ああ。帝国の街とも全然違う。面白い場所だ」
人間よりも、魔族は魔法適性が高いのが理由だろう。
俺たちは中央広場へと向かいながら、次の行動を考えた。魔王城に入るには、まず信頼を得る必要がある。
だが、俺たちには関係ない。そのまま武力で押し通るつもりでいる。
その前にゼフィルスが出てきそうではあるが。
「宿を探すか。一日散策してから魔王城に行ってゼフィルスを呼び出すとしようか」
「ここまで穏便だったから、可笑しいと思ったんだ」
「最初から問題ばかりだと面倒だって気付いたんだ」
問答無用で殺せばいいのだが、後々追われることになるので、それが面倒くさいのだ。
適当に誤魔化して穏便に済めばそれでいい。それが無駄だった場合、武力行使すればいいのだ。
ある程度観察していたが、魔族といえど、人間よりもちょっと強いだけなので、俺とエイシアスからしてみれば雑魚に変わりはない。
「まずは鍛冶屋でも探すか」
「買い物するにも金がないと始まらないからね」
そうと決まれば、まずは魔都について情報集しないとだな。
その後、通行人から色々と話しを聞いて回り、少し外れた場所にある丘へとやってきた。
丘の上に立ち、俺はその全貌を目にした。巨大な円形の都市、まるで黒曜石で造られたかのような漆黒の魔王城がその中心にそびえ立っている。
その存在感たるや、遠くから見ても圧倒的だ。あれがこの都市の心臓――魔王の居城だというのだから、威圧感も納得がいく。
蠟燭や松明の代わりに、魔石を加工することで道や部屋を照らしているという。ここから夜景を見れば、きっと綺麗だろう。
魔石をこんな日常的に使うなんて、魔族の文化は人間界のそれとはまったく違うんだと実感する。ここには、魔族特有の知恵や技術が詰まっている。
この都市は四つの区画で分けられているらしい。案内人の話を思い出しながら、俺はそれぞれの特徴を頭の中で整理する。
まず目を引くのはやはり中央区。
魔王城を中心に、豪奢な建物が規則正しく配置されている。ここには魔王の家臣や高位の魔族たちが住むらしい。遠くからでも高貴さが漂うその景観は、まさに魔族の支配階級を象徴している。広場のような場所も見える。
次に見えるのは居住区だ。
魔都に暮らす一般の魔族たちが住むエリアで、中央区とは違い、建物の大きさも形も様々だ。一見して雑多な印象を受けるが、どこか活気に満ちているのがわかる。
道端には市場が広がり、子どもたちが遊ぶ姿も見える。魔族ってもっと物騒な連中だと思っていたけれど、意外と人間と変わらない暮らしをしている。
その隣には鍛冶工房区が広がっている。
遠くからでも聞こえる金属を打つ音が、この場所の熱気を物語っている。
立ち込める黒煙や赤く燃え上がる炎――ここは武器や防具、魔道具を生み出す街だ。
腕利きの職人たちが集まり、日夜鍛冶作業に明け暮れているという。
最後に見えたのが商業区だ。
無数の屋台や店舗が密集し、街一番の賑やかさを誇るエリアらしい。
商人たちが集まり、魔族同士だけでなく、異界の種族とも交易をしているとか。
エキゾチックな品々や珍しい魔石、魔法具が手に入るらしい。
俺みたいな旅人にとっては、一番面白そうな場所だと思う。
四つの区画、それぞれが異なる役割を果たしながらも、全体で一つの街を形作っている。
しばらく眺めた俺とエイシアスは、ワイバーンの素材を換金するために鍛冶工房区へと向かうのだった。
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