森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~

WING/空埼 裕@書籍発売中

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第4章

10話:氷雪の女王1

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 武神祭が終わった翌日。
 俺とエイシアスは、カリオスと話し合っていた。

「魔女の件か?」
「ああ。帝国北部にあるガルガット山脈。前回、麓とはいったが、正確には中腹辺りだと思う」
「随分と曖昧だな」
「我々では、氷雪の女王の領域に立ち入れないのだ。いや、正確には、立ち入ってすぐに寒さで引き返すことになるのだ。麓も含め、ガルガット山脈の一部が氷雪で覆われており、極寒の地になっている」

 つまりは、寒くてすぐに引き返すことになると。

「帝国兵は軟弱だな~」
「お前たちが強すぎるんだよ……」

 呆れてため息を吐くカリオスは、すぐに真剣な表情に戻る。

「彼女は過去に、帝国にある街を一瞬で住民ごと氷漬けにした。今はもうない街だが、それが原因で魔女の討伐隊が組まれ、ガルガット山脈へと向かったが全滅した。それも一度限りだけじゃなく、何度もだ。そこから魔女に手を出すことはなく、現在に至る」
「魔女が強いってことはわかった。で、魔女を仲間にするか、討伐するか俺に任せるってことだよな」
「その通りだ。その説明も前回しているはずだ」
「だな。……改めて、引き受けてくれるか?」
「宿の恩だ。それくらいはしてやる」

 あっけらかんと答えるが、エイシアスが笑っていた。

「主よ、そうじゃなくても行っていただろう?」
「お前にはお見通しだな。そうだよ。そんな面白そうなヤツ、会ってみたいだろう?」
「うむ。私も興味がある」
「ってことだ、カリオス。準備してさっさと行くよ」

 カリオスは一瞬驚いた顔を見せた後、すぐに表情を引き締めて頷いた。

「分かった。帝国の支援物資も用意しておこう。ただ、あの地は本当に過酷だ。魔女の力もさることながら、自然そのものが敵だと思ってくれ」

「覚悟しておくさ」

 俺は軽く肩をすくめた。
 エイシアスも目を細め、慎重な表情を浮かべていた。

「ガルガット山脈はただの雪山ではない。古代から魔力の渦が潜んでいる場所だ。そこに住む魔女イシュリーナの存在は、その魔力をより一層不安定にしている」
「ははっ、ますます面白そうだ」

 俺は期待に胸を膨らませていた。
 カリオスは少し黙った後、再び口を開いた。

「くれぐれも気をつけてくれ。失われた街のことは今でも帝国にとって痛ましい記憶だ。お前たちを心配するだけ無駄だと思うが、無事に戻ってきてもらいたい」

 俺は適当に手をひらひらとして答えをし、そして視線をエイシアスに向ける。

「準備が整ったらすぐに行くぞ。冒険の始まりだな」
「うむ。主よ、氷雪の女王がどのような者か、この目で見定めてやろうではないか」

 カリオスが部屋を出ていくと、しんとした静寂が訪れた。
 窓の外に広がる白銀の世界は、冷たく硬質な輝きを放っている。
 凍てつくような風が吹き抜ける山脈の影は、どこか不吉な印象を与えた。
 俺は窓辺に立ち、雪に覆われたガルガット山脈を見据えた。その冷たくも美しい光景の中に、『氷雪の女王』が君臨しているのだと想像すると、胸の奥にかすかな興奮が広がっていく。

「面白い。どれだけの力を持っていようが、俺の前で跪くかどうか確かめてやるさ」
「ふふっ、それでこそ主だ」

 小さく呟いた。

「しかし、私から見てもガルガット山脈の魔力は多い方だろう。しかし、主なら関係ないか」
「当然だ。俺が世界を歩む限り、どのような者でも、俺の道を阻むことはできない」

 エイシアスの瞳に鋭い光が宿る。

「ならば、共に試してみよう。氷雪の女王がどれほどの力を秘めているかをな」
「ああ。行くぞ、エイシアス。待たせるのは俺の趣味じゃない」
「心得た、主よ」

 互いに一瞬視線を交わし、俺たちは部屋を後にした。
 扉が閉まると同時に、冷たい風が鋭く吹きつけ、ガルガット山脈への道が、まるで俺たちを誘うかのように広がっていくのが見えた。
 翌日になり、俺たちは城の前におり、カリオスが口を開いた。

「ガルガット山脈の麓まで馬車を用意している。そこからは歩いて行くしかないが……」
「必要ない」
「では歩いて行くのか?」
「お前、なんで赤丸がいると思っている?」

 俺の肩に乗っていた赤丸が空を飛び、本来の大きさを取り戻す。
 その光景に、誰もが驚き唖然としていた。

「こ、これは……」
「なんという魔力と威圧感でしょうか……」

 カリオスもリリアも、他の兵士たちも顔を真っ青にしている。魔女も赤丸だけで倒せると思うけどね。

「これが赤丸の本来の姿だ」

 俺とエイシアスは赤丸に飛び乗る。

「それじゃあ、楽しんでくるとするよ」

 俺が命令するまでもなく、赤丸はガルガット山脈に向けて飛び出した。
 冷たい風を感じながらも、俺は笑みを浮かべるのだった。
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