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第3章
17話:教育の時間2
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「わ、私を教育、だと……?」
ガタッと勢いよく立ち上がる聖王。てか、こいつの名前知らないけど、まあ問題になるわけでもないしいいか。
「だ、誰かいないのか!」
声を荒げ、助けを呼ぶ聖王は、そこでリリィに視線が向けられる。
「せ、聖女よ。今すぐ結界を張り、私を守るのだ!」
リリィが俺に顔を向ける。その目には「やってもいいの?」と問いかけているようだった。
俺をいくら恨んでいようが、性格と実力を知っているのでやりたくないのだろう。というか、死にたくないと言った方がいいか。俺は軽く頷くことで了承する。
「わかりました」
リリィが聖王を守るように結界を展開した。これが聖女の結界か。脆そうな結界だな~とか考えていると、聖王が勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「ははっ、これなら貴様の攻撃など効かない! すぐにでも騎士たちが来て、貴様を捕らえるだろう。楽に死ねると思うなよ」
うん。どうやら勘違いしているようだ。
そもそも、騎士たちは俺が王宮に入って来た時に、王宮にいるすべての騎士に囲まれたが、「死にたいならかかってこい」と言ったのに、俺の顔を知らない騎士たちが攻撃してきた。
その数、百は下らないだろう。襲ってきた騎士たちは一瞬で、エイシアスの魔法によって細切れにされた。その後、王宮に居るすべての騎士たちは顔を青くしており、少しだけ躾けをした。
「騎士は来ない」
「な、なにを言って……」
「はぁ、仕方がない。呼んでやるよ」
俺が指を鳴らすと、部屋の外から光の騎士たちが流れ込み、両端に立って忠誠のポーズをとった。
代表の片腕の騎士、光の騎士団第一騎士団長のアルノーが俺の前で跪き、首を垂れる。
「テオ様、お呼びでしょうか?」
その光景に聖王のみならず、リリィまでもが目を見開いて驚きを露にする。
光の騎士を含めたすべての騎士たちは俺を憎んでいた。
だから、しっかりと躾けをしてやったのだ。この通り、今では忠犬だ。
「お前たちのご主人様が呼んでいたぞ。忠犬なんだろう?」
「あのような王、我らの主人ではありません。命令を聞く義務もないでしょう。我ら一同、あなた様のために」
「「「あなた様のために!」」」
騎士たちが声を揃えてそう叫ぶ。
「アルノー。あ、あなたたちは光の騎士。女神様の忠実なる騎士なのですよ⁉」
リリィが叫ぶが、アルノーは首を横に振って否定した。
「聖女様。女神ルミナが我らを助けてくれましたか? 神託というあやふやな情報で、助けた気になっている小心者ですよ。助けもしない神を信仰するだけ無駄です。いい加減、現実を見てください」
アルノーにそう言われて、リリィも聖王も絶句していた。光の騎士であり、その筆頭騎士団長が言っていいセリフではない。ましてや、神を侮辱しはじめたのだ。
「め、目を覚ましてください! 今ならまだ――」
「我らは夢を見過ぎていたのですよ。先の戦いだって、女神は助けてくれましたか? 少しでも力を貸してくれましたか?」
「ッ! そ、それは勇者様を遣わせて……」
「それは女神に言われて、私たちが呼んだ結果です。忘れてはいませんよね?」
「うっ……」
「正義など幻想に過ぎません。信仰に頼る者は弱者であり、力なき理想にすがるのは愚かです。我々騎士団が信じるのは、テオ様の力のみ。テオ様に従うことで、我らは真の強さを手に入れる。強者だけが、真に世界を導くことができるのです。信仰を捨て、力を信じる。それが、我々の正義だ」
「狂っています……」
「貴様、本当にアルノーなのか……?」
聖王に問われたアルノーは立ち上がり、聖王に向き直る。
「ええ。テオ様の忠実なる僕です。テオ様とエイシアス様こそ、我らが信じるのに値するお方だ」
「もういい。控えろ」
「はっ」
そう言ってアルノー引き下がり、俺とエイシアスの後ろで直立不動の姿勢を保つ。
俺は聖王へと歩みを進め、結界の前で立ち止まる。それを見た聖王は、俺が結界を破壊できないと思ったのか、笑みを浮かべた。
「はっ、貴様がいくら強くても、聖女の結界を破壊することなどできない」
俺は結界に手を伸ばし、デコピンした。次の瞬間、結界はパァンッと弾け飛んだ。
「……え? あ? は?」
「やはり一撃で……」
リリィには予想できたようだ。そこまで驚きはしていなかった。
しかし、聖王は驚きのあまり固まってしまっている。
「さて、自分がどのような者を相手にしたか理解できたかな?」
これも教育の一つ。
俺はアルノーに命じる。
「アルノー。俺も座りたいから席を用意しろ」
「仰せのままに」
俺の意図を汲み取ったアルノーが聖王に近づく。歩み寄るアルノーにビクビクする聖王は、次の瞬間、胸倉を掴まれて床に投げ捨てられた。
「うぐっ」
投げ捨てた聖王を無視して、アルノーは俺の前に跪く。
「テオ様に相応しい席をご用意しました」
「御苦労」
俺は聖王が座っていた玉座に腰を下ろして足を組む。するとエイシアスが「私も失礼するよ」と言って、俺の膝の上に座りもたれかかる。
お前は自分で用意しろと言いたいが、まあいいか。
「さて、教育はまだ始まったばかりだ」
ガタッと勢いよく立ち上がる聖王。てか、こいつの名前知らないけど、まあ問題になるわけでもないしいいか。
「だ、誰かいないのか!」
声を荒げ、助けを呼ぶ聖王は、そこでリリィに視線が向けられる。
「せ、聖女よ。今すぐ結界を張り、私を守るのだ!」
リリィが俺に顔を向ける。その目には「やってもいいの?」と問いかけているようだった。
俺をいくら恨んでいようが、性格と実力を知っているのでやりたくないのだろう。というか、死にたくないと言った方がいいか。俺は軽く頷くことで了承する。
「わかりました」
リリィが聖王を守るように結界を展開した。これが聖女の結界か。脆そうな結界だな~とか考えていると、聖王が勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「ははっ、これなら貴様の攻撃など効かない! すぐにでも騎士たちが来て、貴様を捕らえるだろう。楽に死ねると思うなよ」
うん。どうやら勘違いしているようだ。
そもそも、騎士たちは俺が王宮に入って来た時に、王宮にいるすべての騎士に囲まれたが、「死にたいならかかってこい」と言ったのに、俺の顔を知らない騎士たちが攻撃してきた。
その数、百は下らないだろう。襲ってきた騎士たちは一瞬で、エイシアスの魔法によって細切れにされた。その後、王宮に居るすべての騎士たちは顔を青くしており、少しだけ躾けをした。
「騎士は来ない」
「な、なにを言って……」
「はぁ、仕方がない。呼んでやるよ」
俺が指を鳴らすと、部屋の外から光の騎士たちが流れ込み、両端に立って忠誠のポーズをとった。
代表の片腕の騎士、光の騎士団第一騎士団長のアルノーが俺の前で跪き、首を垂れる。
「テオ様、お呼びでしょうか?」
その光景に聖王のみならず、リリィまでもが目を見開いて驚きを露にする。
光の騎士を含めたすべての騎士たちは俺を憎んでいた。
だから、しっかりと躾けをしてやったのだ。この通り、今では忠犬だ。
「お前たちのご主人様が呼んでいたぞ。忠犬なんだろう?」
「あのような王、我らの主人ではありません。命令を聞く義務もないでしょう。我ら一同、あなた様のために」
「「「あなた様のために!」」」
騎士たちが声を揃えてそう叫ぶ。
「アルノー。あ、あなたたちは光の騎士。女神様の忠実なる騎士なのですよ⁉」
リリィが叫ぶが、アルノーは首を横に振って否定した。
「聖女様。女神ルミナが我らを助けてくれましたか? 神託というあやふやな情報で、助けた気になっている小心者ですよ。助けもしない神を信仰するだけ無駄です。いい加減、現実を見てください」
アルノーにそう言われて、リリィも聖王も絶句していた。光の騎士であり、その筆頭騎士団長が言っていいセリフではない。ましてや、神を侮辱しはじめたのだ。
「め、目を覚ましてください! 今ならまだ――」
「我らは夢を見過ぎていたのですよ。先の戦いだって、女神は助けてくれましたか? 少しでも力を貸してくれましたか?」
「ッ! そ、それは勇者様を遣わせて……」
「それは女神に言われて、私たちが呼んだ結果です。忘れてはいませんよね?」
「うっ……」
「正義など幻想に過ぎません。信仰に頼る者は弱者であり、力なき理想にすがるのは愚かです。我々騎士団が信じるのは、テオ様の力のみ。テオ様に従うことで、我らは真の強さを手に入れる。強者だけが、真に世界を導くことができるのです。信仰を捨て、力を信じる。それが、我々の正義だ」
「狂っています……」
「貴様、本当にアルノーなのか……?」
聖王に問われたアルノーは立ち上がり、聖王に向き直る。
「ええ。テオ様の忠実なる僕です。テオ様とエイシアス様こそ、我らが信じるのに値するお方だ」
「もういい。控えろ」
「はっ」
そう言ってアルノー引き下がり、俺とエイシアスの後ろで直立不動の姿勢を保つ。
俺は聖王へと歩みを進め、結界の前で立ち止まる。それを見た聖王は、俺が結界を破壊できないと思ったのか、笑みを浮かべた。
「はっ、貴様がいくら強くても、聖女の結界を破壊することなどできない」
俺は結界に手を伸ばし、デコピンした。次の瞬間、結界はパァンッと弾け飛んだ。
「……え? あ? は?」
「やはり一撃で……」
リリィには予想できたようだ。そこまで驚きはしていなかった。
しかし、聖王は驚きのあまり固まってしまっている。
「さて、自分がどのような者を相手にしたか理解できたかな?」
これも教育の一つ。
俺はアルノーに命じる。
「アルノー。俺も座りたいから席を用意しろ」
「仰せのままに」
俺の意図を汲み取ったアルノーが聖王に近づく。歩み寄るアルノーにビクビクする聖王は、次の瞬間、胸倉を掴まれて床に投げ捨てられた。
「うぐっ」
投げ捨てた聖王を無視して、アルノーは俺の前に跪く。
「テオ様に相応しい席をご用意しました」
「御苦労」
俺は聖王が座っていた玉座に腰を下ろして足を組む。するとエイシアスが「私も失礼するよ」と言って、俺の膝の上に座りもたれかかる。
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