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第2章

13話:神聖リュミエール王国へ

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 王城を後にした俺はふと、青く澄み渡った空を見上げた。
 今日も素晴らしい空だ。
 俺の心もこの雲一つない空のように、澄み渡っている。

「気分がいいようだね、主よ」
「ああ。あの王女様、アレティアはあの信念を持ち続ける限り、強くなり続けるだろう。そう思うと、成長が楽しみでしかたがない」
「ふふっ、私もそう思う。彼女は覇王としての素質を持っている。主が思っている通り、私も楽しみで仕方がない」

 エイシアスも同じことを思っていたようだ。
 アレティアはきっと、俺が想像している以上に、強い女王として成長してくれることだろう。
 そんな気がするのだ。

「そうだな。――赤丸」
『ギャウ!』

 赤丸はすぐに本来の姿になり、俺とエイシアスを空に運ぶ。
 ドラゴンが現れたことで騒ぎになったが、すぐに飛び立ったので大丈夫だろう。
 赤丸の上で空をのんびり移動する俺に、エイシアスが問うてきた。

「主よ、次はどこに行くのだ? 今回も楽しかったから次も楽しみだ」
「そうだな……」

 考える。
 楽しそうな国やおすすめの国の知識などは皆無だ。
 ならば、冒険者らしい冒険をするべきなのか。

「まだ何も考えてないな」
「考え付いてからでもいいだろう」

 どうするかなど、考える時間などいくらでもある。
 しばらくして、街を見つけたので、今日はそこで一泊することに。
 宿で夕食を食べていると、客が話しているのが聞こえてくる。

「聞いたか? 北方で魔王軍の動きが激化してるらしい」
「魔王軍か。動き出したのは数百年ぶり何だろう?」
「ああ。だが、神聖リュミエール王国が魔王に対抗するため、勇者・・を召喚したらしい」

 勇者という言葉に俺は反応する。
 この世界にも勇者は存在するようだ。しかし、先ほど彼らは召喚と言っていた。
 つまりは別世界から呼び出されたと言うことになる。
 エイシアスを見ると口元に笑みを作っていた。
 どうやら同じことを思っていたようだ。

「神聖リュミエール王国か」
「勇者か。これもまた、面白そうだ。では?」
「ああ。見て見ようじゃないか。勇者とやらを」

 次の目的地は決まった。
 ここから西にある、神聖リュミエール王国。
 勇者を見に行こうではないか。

「だが魔王の噂も気になる」
「だな。勇者の後は魔王でも会いにいくか」
「それは名案だ」

 どんな思いで魔王をやっているのかも気になるよね。
 部屋に戻った俺とエイシアス。

「聖女が女神ルミナの神託を受けて、異世界から勇者を召喚するらしい」

 宿で客が話していた内容だ。
 聖女もいるらしい。
 なんともテンプレな内容だが、まあいいだろう。
 聖女か。女神ルミナとかいうけど、正体はジジイだったりしないかな?
 まあ、会うこともないだろうけど。

「聖女か。どのような人物か気になるね。神託ということは、神の言葉を聞くことが出来るのだろう?」
「らしいな。妄言かもしれないぞ。政は嫌いだ。考えることが多すぎる」
「そうは同感だ。だがまあ、神の声を聞こえるのなら、それならそれで面白いじゃないか」

 ジジイ以外に神がいるのか気になるところだ。
 俺は自由に生きているが、魔王を倒せ、などといった使命など持ち合わせていない。
 あったら断っていただろうけど。あるいは放置していた。

「けど、行く場所は決まったな」
「うむ。まだまだ楽しめそうだ」

 果たして俺と同じ、地球からの来訪者なのかは気になるところだ。
 もしかしたら別の世界からかも知れない。
 それを確認するのも一興だ。
 魔王との戦争になったらちょっとめんどいが、気にすることでもないだろう。

「さて、さっさと寝て神聖リュミエール王国に行くとするか」

 俺とエイシアスはさっさと寝るのだった。
 翌朝、俺とエイシアスは赤丸に乗って神聖リュミエール王国を目指した。
 道中、代り映えするようなこともなく、数日で神聖リュミエール王国との国境まで到着した。
 警備は厳重で、どうやら魔族が人間に成りすまして国に入国するのを、この国境で防いでいるらしい。
 もし突破されても、次は街に入る時に展開されている結界で防げるようだ。
 
 まあ、俺とエイシアスは冒険者証を出すことで、すんなりと国境を抜け、無事に神聖リュミエール王国に入国することができたのだった。
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