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第2章
8話:あまり舐めるんじゃねぇぞ
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翌日。宿の外には昨日の騎士が宿の前で、俺とエイシアスを待っていた。
「よっ」
「おはようございます。お願いしますよ?」
挨拶早々に念押しする始末。
まあ、何もされなければ普通に楽しむだけ。
「昨日も思ったが、部位分と綺麗な都だ」
「我が国を褒めていただけるのは素直に嬉しいですね。今日はどちらに?」
騎士の問いにエイシアスが俺を見る。
俺が決めろと言うことらしい。
「そうだな。騎士君に一任しようかな」
「……え?」
「だって土地勘とかないし、おすすめの場所とか知らない。だから君に一任するんだ」
「はぁ、胃が痛くなってきた」
苦労人なのだろうが、知ったことではない。
「では、ご案内します。文句を言わないでくださいよ」
そう言って騎士は俺とエイシアスを案内する。
騎士がおすすめする場所は良く、俺とエイシアスは十分に楽しめた。
何かあれば助けてやろうと、そう思うのだった。
俺とエイシアスがアーセリアにやってきて数日。
今日は騎士君の面持ちが随分と険しかった。
「今日か?」
「はい。これから王城にご案内します」
騎士君の後をついて行きながら俺は思う。
「にしても、自国の王子を殺した奴がいるのに随分な対応だな?」
王城の牢屋でも入れられるかと思ったが、そうではなかった。
しかも、干渉すらしてこなかったのだ。
それが気になってしまった。
「我々が説得させましたよ。軍隊ですら手を出せば一瞬で殺されるって」
「ははっ、確かにな。従えとか言ったら殺してたよ」
「……頼みますから、殺すのだけはやめてくださいね?」
念を押す騎士君。
大丈夫。殺さないよ。多分ね。
まあ……
「相手の出方次第だけど」
「それでも我慢してくださいって」
「それはできないね」
割って入ったのはエイシアスだった。
「強者は我慢をしない。我を通すのだよ」
「……できる限り穏便にお願いしますね」
騎士君は俺とエイシアスの説得を諦めたようだ。
「安心しろ。君と先の騎士たちには次の就職先が見つけてある」
「喜んでいいのやら……」
「喜べよ。この国を裏切っても雇ってくれるんだぞ」
「一体どこの国ですか」
「レグムント王国」
国名を出したら騎士君が押し黙った。
俺がギルドで王家の家紋が入った短剣を見せた時点で、レグムントの王家と関りがあるのは明白だ。
「まあ、困ったら言えよ?」
「ありがとうございます」
「主は随分と優しいな?」
「そりゃあ、王都を案内してくれたんだ。お礼くらいしないとだろ?」
「そういうものか」
程なくして俺たちは王城に到着した。
長い階段を登っていくと、先刻の騎士たちが待っていた。
「ルノー。よく二人を連れてきてくれた」
「隊長、俺には荷が重いですって」
どうやらこの騎士君はルノーというらしい。
「俺たちだって首の皮一枚繋がっている状況さ」
「まあ、王子が死んじゃいましたからね」
思ったより軽いな?
まあ、忠誠心なんてそんなものだ。結局は生きていくために従っているに過ぎない。
「何かあれば俺からレグムントの王家に言っとくから、次の就職先は心配するなよ」
「え?」
隊長がルノーを見ると、ルノーは頷いた。
「だが次の就職先よりも俺たちの首が繋がっているかが問題なんだが……」
「そこは俺に任せとけよ。案内と宿を取ってくれた礼に守ってやる」
「王家が滅びなければいいけど……」
不謹慎すぎる発言に、隊長の部下の騎士たちが苦笑いを浮かべていた。
そのことからも今更ということなのだろう。
なんかこの騎士たち、面白い。
俺の中でのお気に入りポイントがググっと上がった。
「さっさと行くぞ。案内しろ」
騎士たちは俺とエイシアスを城内へと案内するが、その足は若干重い。
城内に入ると、俺とエイシアスに視線が注がれる。
エイシアスは特にその美貌からか、男性からの視線が多い。
しかし当のエイシアスは気にした様子がない。
当然だろう。有象無象など彼女は気にしない。
「隊長君、どこ行くんだ?」
先導する隊長に行き場所を問うと、すぐに返ってきた。
「これから陛下と謁見だ。まあ、謁見という名の公開処刑だな」
「処刑? なんで突然……」
「ああ。お前も国王には手を出さないだろうと言う判断だ」
「随分と舐められたものだな」
「そうだな」
俺とエイシアスの口元が弧を描く。
だが、当の騎士たちはこれから何が起きるのかを想像したのか、顔が青かった。
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「よっ」
「おはようございます。お願いしますよ?」
挨拶早々に念押しする始末。
まあ、何もされなければ普通に楽しむだけ。
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「我が国を褒めていただけるのは素直に嬉しいですね。今日はどちらに?」
騎士の問いにエイシアスが俺を見る。
俺が決めろと言うことらしい。
「そうだな。騎士君に一任しようかな」
「……え?」
「だって土地勘とかないし、おすすめの場所とか知らない。だから君に一任するんだ」
「はぁ、胃が痛くなってきた」
苦労人なのだろうが、知ったことではない。
「では、ご案内します。文句を言わないでくださいよ」
そう言って騎士は俺とエイシアスを案内する。
騎士がおすすめする場所は良く、俺とエイシアスは十分に楽しめた。
何かあれば助けてやろうと、そう思うのだった。
俺とエイシアスがアーセリアにやってきて数日。
今日は騎士君の面持ちが随分と険しかった。
「今日か?」
「はい。これから王城にご案内します」
騎士君の後をついて行きながら俺は思う。
「にしても、自国の王子を殺した奴がいるのに随分な対応だな?」
王城の牢屋でも入れられるかと思ったが、そうではなかった。
しかも、干渉すらしてこなかったのだ。
それが気になってしまった。
「我々が説得させましたよ。軍隊ですら手を出せば一瞬で殺されるって」
「ははっ、確かにな。従えとか言ったら殺してたよ」
「……頼みますから、殺すのだけはやめてくださいね?」
念を押す騎士君。
大丈夫。殺さないよ。多分ね。
まあ……
「相手の出方次第だけど」
「それでも我慢してくださいって」
「それはできないね」
割って入ったのはエイシアスだった。
「強者は我慢をしない。我を通すのだよ」
「……できる限り穏便にお願いしますね」
騎士君は俺とエイシアスの説得を諦めたようだ。
「安心しろ。君と先の騎士たちには次の就職先が見つけてある」
「喜んでいいのやら……」
「喜べよ。この国を裏切っても雇ってくれるんだぞ」
「一体どこの国ですか」
「レグムント王国」
国名を出したら騎士君が押し黙った。
俺がギルドで王家の家紋が入った短剣を見せた時点で、レグムントの王家と関りがあるのは明白だ。
「まあ、困ったら言えよ?」
「ありがとうございます」
「主は随分と優しいな?」
「そりゃあ、王都を案内してくれたんだ。お礼くらいしないとだろ?」
「そういうものか」
程なくして俺たちは王城に到着した。
長い階段を登っていくと、先刻の騎士たちが待っていた。
「ルノー。よく二人を連れてきてくれた」
「隊長、俺には荷が重いですって」
どうやらこの騎士君はルノーというらしい。
「俺たちだって首の皮一枚繋がっている状況さ」
「まあ、王子が死んじゃいましたからね」
思ったより軽いな?
まあ、忠誠心なんてそんなものだ。結局は生きていくために従っているに過ぎない。
「何かあれば俺からレグムントの王家に言っとくから、次の就職先は心配するなよ」
「え?」
隊長がルノーを見ると、ルノーは頷いた。
「だが次の就職先よりも俺たちの首が繋がっているかが問題なんだが……」
「そこは俺に任せとけよ。案内と宿を取ってくれた礼に守ってやる」
「王家が滅びなければいいけど……」
不謹慎すぎる発言に、隊長の部下の騎士たちが苦笑いを浮かべていた。
そのことからも今更ということなのだろう。
なんかこの騎士たち、面白い。
俺の中でのお気に入りポイントがググっと上がった。
「さっさと行くぞ。案内しろ」
騎士たちは俺とエイシアスを城内へと案内するが、その足は若干重い。
城内に入ると、俺とエイシアスに視線が注がれる。
エイシアスは特にその美貌からか、男性からの視線が多い。
しかし当のエイシアスは気にした様子がない。
当然だろう。有象無象など彼女は気にしない。
「隊長君、どこ行くんだ?」
先導する隊長に行き場所を問うと、すぐに返ってきた。
「これから陛下と謁見だ。まあ、謁見という名の公開処刑だな」
「処刑? なんで突然……」
「ああ。お前も国王には手を出さないだろうと言う判断だ」
「随分と舐められたものだな」
「そうだな」
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