上 下
27 / 82
第2章

1話:ヴァルミス港

しおりを挟む
空を飛び続けて数日、俺たちはついにヴァルミス港に辿り着いた。
目の前に広がるのは、活気に満ちた港町だ。大小の船が海に浮かび、商人たちが賑やかに取引を行っている。塩風が吹き抜け、港特有の香りが鼻をくすぐった。

「ここがヴァルミス港か……」

俺は目の前の光景に感嘆の声を漏らした。
異世界に転生して以来、初めて見る海が広がる光景に、どこか心弾む感覚があったが、それと同時にこの場所に潜む危険な雰囲気も感じ取っていた。

「主、案外良いところだな」
「だね。でも色々な商人や貴族がいるから、厄介ごとも多そうだ」
「然り」
「早く降りて宿を探そうか」

 港町から離れた場所で赤丸から降りた俺とエイシアスは歩を進める。
 しばらくして港町の入り口に到着し、検問を受けて中へと入った。
 通行人が俺とエイシアスに注目する。
 エイシアスの圧倒的な美に誰しも目が奪われているようだった。だが当の本人は気にした様子がなく、珍しそうに周囲を見ている。
 俺は近くの露店で軽食を買いながら店主におすすめの宿を尋ねる。

「おすすめの宿かい。う~ん、なら『せせらぎ』だな。料理がおいしく、清潔感もあっておすすめだよ」

 店主にお礼を伝え、おすすめされた宿へと向かった。
 看板に『せせらぎ』と書かれており、立派な建物だった。

「いっらっしゃい。二人かい?」
「ああ。とりあえず一週間泊まりたいが大丈夫か?」
「大丈夫だよ。ちょっとまってな」

 女将だろう人に会計をしながら宿の説明を受ける。

「と、こんな感じだが大丈夫かい?」
「問題ない」
「はいよ。部屋は三階の一番奥、101だよ」
「ありがとう」

 鍵を受け取って俺とエイシアスは部屋に向かった。
 当然、宿の食堂で食べている人から視線が集まるも、無視している。
 気にしたらキリがない。
 部屋は店主が言っていたように清潔感があり、綺麗に手入れされていた。
 エイシアスがベッドにダイブし、枕に顔を埋めながら聞いてくる。

「この後はどうするのだ?」
「う~ん、部屋でのんびりしてもいいが……」

 窓を開けて外を眺めていると、香辛料の匂いが漂ってきた。
 するとエイシアスが起き上がって俺を見た。

「レオルドが、ここは海鮮料理が美味いと言っていたんだ。食べなきゃ損だろ?」
「私も食べたいと思っていたところだ」

 すぐに宿を出て街で一番露店が多く立ち並ぶ場所へと向かう。
 至る所で食欲のそそられる匂いが立ち上っている。

「ここではシーフードシチューが名物らしい」
「シチュー?」
「だし汁やソースで煮込んだ煮込み料理みたいなものだな」
「ふむ。ではそのしーふーどしちゅーとやらを食べるとしよう」
「賛成だ」

 俺とエイシアスは露店を回り、一番人が多そうな店で注文した。
 近くで食べる席が用意されており、そこに座って俺とエイシアスは食べることに。
 名物のシーフードシチューをいただくことに。
 スープは白ワインと野菜や魚介類から出ただし汁がベースとなっており、香辛料が使用されたことで深い味わいになっていた。

「美味い!」

 思わず口に出してしまうほどのおいしさをしており、エイシアスも「これは美味だ」と感嘆の言葉を零していた。

「がははっ! そんなに美味しいか!」

 店主のおじさんが俺の感想に反応した。

「本当に美味しい。名物というだけはある」
「他にも美味しい料理がある。ゆっくり楽しんでくれよ」
「ああ、そうするつもりだ」

 俺とエイシアスは様々な料理を堪能し、宿に戻ることにした。
 お腹もいっぱいになったが、宿の料理を食べる分はある。
 席で待っていると女将が料理を持ってきた。

「はいよ。にしてもあんた、随分と別嬪さんを連れているね?」
「ありがとう。エイシアスのことか? まあ、俺の相棒だ」
「ふふっ、私にとっても最高の主さ」
「美男美女のカップルね。ここには旅行かい?」
「観光だな」
「そりゃあいい。楽しんでいきなよ」

 そう言って去ってしまった。
 しかし、視線が多いも絡んでくる輩はいない。
 俺が周囲を軽く威圧しているだけだけど。一々構っていられない。
 面倒ごとを避けるにはこうして威圧していればいいのだ。
 それでも絡んでくるなら誰に喧嘩を売ったのか分からせるしかない。
 そして夜になり、宿の部屋から覗く夜景は美しく、エイシアスと一緒に晩酌をしながら眺めるのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最近一気に冷え込みましたね。
今日から新章です。
別に章分けしなくてもよくね?とは思いました。

下にある【♡】をポチッと押すのと、【ブクマ】をしていただけたら嬉しいです!
作者の励みになり、執筆の原動力になります!
少しでも応援したい、という方はよろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...