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第1章
21話:重力は便利
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決闘が終わり、俺はエイシアスたちの下に戻る。
倒れている子弟たちに大きな傷はないが、擦り傷や打ち身程度の軽い怪我しかしていない。
俺にしては手加減してやった方だ。
「随分と手加減をしたようだね」
「仕方がないだろ? 俺たちは招待された側だ。血の舞踏会にするわけにはいかない」
「まるでこの場じゃなかったら殺していたような発言じゃないか」
「当然だろ?」
「でも主のことを馬鹿にされたのは私も気に食わなかった。私だったらサクッと殺していたよ」
エイシアスも内心では怒っていたことに驚いたが、俺もエイシアスも同じ気持ちだったのかと思うと嬉しかった。
和気藹々とエイシアスと談笑していたが、会場が静かなことに気が付いた。
見渡すと、誰もが俺とエイシアスを見ていた。
「ん? どうした?」
「い、いや……中には上級魔法を使っていた子弟もいたのだが……」
「……上級魔法?」
エルセリオスが何言っているのか分からない俺は首を傾げる。
いや。魔法と言っているので、先ほどの決闘で使われた魔法関連なのだろう。
「テオ殿、本当に分からないのか?」
「俺、魔法は使えないし」
その発言に周囲の人たちが絶句した。
当然だろう。魔法も使えないのに、攻撃を防いていたのだから。
「では、どうして無傷なのだ?」
「実際あの程度の攻撃だと直撃しても無傷だが、折角用意してくれた衣装が汚れるのは嫌だろ? だから俺が持っている唯一のスキルを使っただけ」
みんなはあの決闘で俺が使ったスキルが、どのようなものなのか分かるはずがない。
故にリディアが答えた。
「あれが重力ですか……」
「リディア。重力って?」
「えっと……」
イスティリアがリディアに尋ねるが、誰もが聞きたそうにしていた。
リディアが教えてもいいものかと俺を見ている。
教えたところでレベルがカンストしている俺に勝てるはずがないので、実演をしながら教えることにした。
「重力とはなにかを知っているか?」
全員が首を横に振る。
ここで難しいことを説明しても、理解できないのでワイングラスを手に取った。
「じゃあ王様に質問。このグラスから手を離したらどうなると思う?」
「落ちる」
「その通り」
そう言って俺はグラスから手を離すと、そのまま落下して割れてしまう。
「自然に落下する現象こそが重力だ。この世界がどういった形をしているのかは分からない。だが、ジャンプしたら落ちるのと同じ、地面に向かって引っ張られる力のことを『重力』と呼ぶ」
その場の全員が「なるほど」と納得していた。
「俺のスキル名は『重力』。それを自在に操ることが出来る。だからこうして自分を重力から解放して浮くことだってできる」
俺は足を組んで座ったままの体勢で宙に浮く。
その光景に「飛行魔法……」と言っているが、これは魔力を使ってはいるが魔法ではない。
「他にも、こうやって引き寄せることだって可能だ」
離れた場所に置いてあった料理皿を手元に寄せ、それをエイシアスに渡すと食べ始めた。
まあ、うん。よく食べるね……
「逆に対象を固定して飛ばすこともできるし、体重の数千倍もの重力を加えることだってできる。身体を破裂させることも可能だ。他にも色々出来るが、重力は凄いってことだ」
誰もが黙って俺の話を聞いていた。椅子に座った俺にイスティリアが訪ねる。
「では、無傷だったのは?」
「俺に触れれば分かる」
そう言って手のひらを向け、触れるように言う。
イスティリアは言われるがまま触れようとして……
「触れない?」
「そう。これは俺の身体の周りに重力の膜を展開しているからだ。許可した者以外は触れない」
「凄いです……」
「まあ、引力。互いに引き合う力を利用したりすると、相手が放つ魔法の向きを変えることだってできるし――」
俺は瞬間移動でエルセリオスが座っていた豪奢な席に移動する。
「――こうして一瞬で移動もできる」
誰もが驚きで目を見開いていた。
「まあ、スキルを使うには魔力を使うんだけどね」
再び瞬間移動で元の席に戻る。
「他にも色々と出来るけど、それを見せたらつまらない。最高の技を見せてくれと言われたら、それはできない。だってこの国が物理的に消滅するからね」
重力を極限まで圧縮すればブラックホールだって作れる。
俺が全力を出した場合、この国が消滅する以上の被害がでるのでそれはできないし、しようとも思わない。
「主の力は理不尽だからな。理を自在に操っている。それを理解することだ」
エイシアスの発言に誰もが押し黙った。
程なくして舞踏会が終了し、俺と国王の話しは後日ということになった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
多くの人に本作を読んでいただき感謝いたします!
更新時間はストックさえ尽きなければ18時10分の固定更新です。
まだストックありますのでご安心を。
最近、章で別けようかと考えてはいるけど「まあいいか」と考えないようにしています。
もしかしたらすると思います。
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倒れている子弟たちに大きな傷はないが、擦り傷や打ち身程度の軽い怪我しかしていない。
俺にしては手加減してやった方だ。
「随分と手加減をしたようだね」
「仕方がないだろ? 俺たちは招待された側だ。血の舞踏会にするわけにはいかない」
「まるでこの場じゃなかったら殺していたような発言じゃないか」
「当然だろ?」
「でも主のことを馬鹿にされたのは私も気に食わなかった。私だったらサクッと殺していたよ」
エイシアスも内心では怒っていたことに驚いたが、俺もエイシアスも同じ気持ちだったのかと思うと嬉しかった。
和気藹々とエイシアスと談笑していたが、会場が静かなことに気が付いた。
見渡すと、誰もが俺とエイシアスを見ていた。
「ん? どうした?」
「い、いや……中には上級魔法を使っていた子弟もいたのだが……」
「……上級魔法?」
エルセリオスが何言っているのか分からない俺は首を傾げる。
いや。魔法と言っているので、先ほどの決闘で使われた魔法関連なのだろう。
「テオ殿、本当に分からないのか?」
「俺、魔法は使えないし」
その発言に周囲の人たちが絶句した。
当然だろう。魔法も使えないのに、攻撃を防いていたのだから。
「では、どうして無傷なのだ?」
「実際あの程度の攻撃だと直撃しても無傷だが、折角用意してくれた衣装が汚れるのは嫌だろ? だから俺が持っている唯一のスキルを使っただけ」
みんなはあの決闘で俺が使ったスキルが、どのようなものなのか分かるはずがない。
故にリディアが答えた。
「あれが重力ですか……」
「リディア。重力って?」
「えっと……」
イスティリアがリディアに尋ねるが、誰もが聞きたそうにしていた。
リディアが教えてもいいものかと俺を見ている。
教えたところでレベルがカンストしている俺に勝てるはずがないので、実演をしながら教えることにした。
「重力とはなにかを知っているか?」
全員が首を横に振る。
ここで難しいことを説明しても、理解できないのでワイングラスを手に取った。
「じゃあ王様に質問。このグラスから手を離したらどうなると思う?」
「落ちる」
「その通り」
そう言って俺はグラスから手を離すと、そのまま落下して割れてしまう。
「自然に落下する現象こそが重力だ。この世界がどういった形をしているのかは分からない。だが、ジャンプしたら落ちるのと同じ、地面に向かって引っ張られる力のことを『重力』と呼ぶ」
その場の全員が「なるほど」と納得していた。
「俺のスキル名は『重力』。それを自在に操ることが出来る。だからこうして自分を重力から解放して浮くことだってできる」
俺は足を組んで座ったままの体勢で宙に浮く。
その光景に「飛行魔法……」と言っているが、これは魔力を使ってはいるが魔法ではない。
「他にも、こうやって引き寄せることだって可能だ」
離れた場所に置いてあった料理皿を手元に寄せ、それをエイシアスに渡すと食べ始めた。
まあ、うん。よく食べるね……
「逆に対象を固定して飛ばすこともできるし、体重の数千倍もの重力を加えることだってできる。身体を破裂させることも可能だ。他にも色々出来るが、重力は凄いってことだ」
誰もが黙って俺の話を聞いていた。椅子に座った俺にイスティリアが訪ねる。
「では、無傷だったのは?」
「俺に触れれば分かる」
そう言って手のひらを向け、触れるように言う。
イスティリアは言われるがまま触れようとして……
「触れない?」
「そう。これは俺の身体の周りに重力の膜を展開しているからだ。許可した者以外は触れない」
「凄いです……」
「まあ、引力。互いに引き合う力を利用したりすると、相手が放つ魔法の向きを変えることだってできるし――」
俺は瞬間移動でエルセリオスが座っていた豪奢な席に移動する。
「――こうして一瞬で移動もできる」
誰もが驚きで目を見開いていた。
「まあ、スキルを使うには魔力を使うんだけどね」
再び瞬間移動で元の席に戻る。
「他にも色々と出来るけど、それを見せたらつまらない。最高の技を見せてくれと言われたら、それはできない。だってこの国が物理的に消滅するからね」
重力を極限まで圧縮すればブラックホールだって作れる。
俺が全力を出した場合、この国が消滅する以上の被害がでるのでそれはできないし、しようとも思わない。
「主の力は理不尽だからな。理を自在に操っている。それを理解することだ」
エイシアスの発言に誰もが押し黙った。
程なくして舞踏会が終了し、俺と国王の話しは後日ということになった。
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