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第1章

3話:強くなろう

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 スキルの練習を始めてから一カ月が過ぎた。
 拠点を変えながら森の出口を探していたが一向に見つからないので早々に諦めていた。
 その間、筋トレは忘れていない。今の俺、貧弱だからね。

 それと初日の練習で俺は魔力を感じることに成功した。
 初日の練習で疲れた感覚があり、もしかして魔力を使っているのではと考えたのだ。
 そんで漫画とかであるように瞑想したら感じるんじゃね? 的な感じでやっていたら成功したのだ。
 身体強化みたいのも使えるようになった。
 魔力操作もお手の物だ。今では自在に操れる。
 漫画様様である。
 偉大な日本の文化に感謝である。

 そして日々兎のような小動物を掴まえてはスキルの練習をしていた。
 スキルを使うと自身の魔力を消費する。初日に気絶したのはいい思い出だ。
 対象に手で触れ『拡散』と意識を向ければ爆散する。これは俺の魔力を使うのではなく、相手の体内に存在する魔力を引力で拡散する感じでやっている。全身の血管が破裂するといえば分かりやすいだろう。
 グロいが、これはこれでかなり使えた。
 別に相手に魔力がなくても血流を操作したり、体内から破裂させることもできる。
 重力ってすごいね。

 魔力で拳を強化して、突き出す時に重力を加えればかなりの威力がある。
 威力はレベルに応じて上がるようだ。
 今のレベルは小動物を相手にしていたのでまだまだだ。
 魔物を相手に戦っていればレベルは自然と上がるので放置でいい。

 そんな感じで俺はスキルの研究を一カ月行っていた。
 俺は次の段階に移るべく魔物を探す。
 次の段階とは、実戦でレベル上げとスキルの熟練度上げである。
 森を散策しているとファンタジー定番のゴブリンが現れた。
 数は三体とちょうどいい相手である。

「いっちょ付き合ってくれや」

 そして俺とゴブリンの戦闘が始まった。
 一体が俺に迫りボロボロの短剣を振り下ろしてくるが、あと一メートルというところで動きを止めた。
 否。俺がスキルで動きを封じたのだ。
 拘束というより、重力によって固定させたというほうが近い。
 そのままゴブリンに触れると爆散し肉片が周囲に散った。

「悪くないね」

 驚きに固まっているゴブリン目掛けて、数メートルも距離があったが、動けない相手に俺は拳を突いた。
 するとゴブリンは、くの字に吹き飛んで背後の気に衝突したがまだ死んでいなかった。
 もう一体は腕を振るうことで衝撃波を飛ばして吹き飛ばし、先ほど吹き飛ばしたゴブリンに接近して魔力で強化した拳と重力を加えて殴り飛ばすと絶命した。
 残りは一体になり、ゆっくりと近づく俺を見て怯えていた。

「悪いな」

 俺が手のひらをゴブリンに向けると、急に膝を突いた。
 ゴブリン周辺の引力を操って上から圧力を加えた。レベルが低いので今はこれが限界だ。
 そしてゴブリンに触れ――爆散した。

 初の魔物相手の実戦だったが上手くいった。
 あとは経験を積んでいけば大丈夫だろう。
 レベルも15に上がっていた。

 その後は魔力がなくなるギリギリまで戦闘を続けることに。
 夜になり夕食を食べながら考える。
 引力を操れるなら瞬間移動みたいなこともできるのではないかと。
 簡単ではない。まだまだ研鑽が必要だろう。
 そして俺は決めた。
 数年はかかるだろうがこの森で暮らし、生態系の頂点に立つことを。
 森から出られなくて諦めたわけじゃないんだからな!
 本当だからな⁉

 ◇ ◇ ◇

 二年が経過した。
 何故か進むにつれて魔物が強くなっている。
 気のせいではない。
 レベル1000を超えた俺が苦戦する敵がいるのだから。

「おかしくない? レベルだって今1300だぜ? なんでそんな俺と対等に戦っているんだよ⁉」

 お陰で異常な速度でレベルとスキルの熟練度が上がっていく。
 今の俺に魔法攻撃は無意味。拡散することで消すことができるし、範囲を限定した極小のブラックホールで吸い込み、それを俺に還元することもできる。
 問題は物理攻撃だ。
 今は体術とそれに見合ったスキルの使い方を模索している最中だ。

「さて、次の魔物を探しますか」

 俺は森を歩き始めるのだった。
 出口とは真逆の奥深く、深層に向かっているとは知らずに。
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