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2巻
2-3
しおりを挟む「どうしました?」
「予想以上の出来だったんだよ。なんとレア度が幻想級なんだ!」
「えっ、ファ……ええぇぇぇぇ!?」
フィーネはそこまで言って、固まってしまった。
そんなに衝撃的だったか?
ともあれ、そろそろ王都だ。着く前にこの後の動きについてフィーネと共有しておかないとな。
「フィーネ、王都に着いたらまずは新月亭に戻って馬車と馬を預けよう。そのあとギルドに向かってから、俺は最前線に行く。フィーネは後方で待機していてくれ」
「は、はい、分かりました!」
一気に説明されたことでフィーネは正気に戻ったのか、素直に頷く。
そうこうするうちにあっという間に門に着き、冒険者カードと、この国の王であるディランさんに貰った短剣を見せて王都に入る。
厳戒態勢だから、短剣がなかったらこんなにあっさり入れてもらえなかっただろうな……
そのまま新月亭に到着すると、ジェインさんが出てきた。
「ハルトじゃないか。もう戻ってきたのか」
「まあな。悪いが馬と馬車を預かってもらえるか? 今からギルドに行かなくちゃならないんだ」
「例の魔物の大量発生か……気を付けるんだぞ。俺たちもじきに避難する予定だ」
「ああ、ありがとう。俺が全員倒してきてやるよ」
俺はそう言ってニッと笑う。
「フィーネも気を付けろよ!」
「はい! ……私は後方で待機ですけど」
「それでも、だ」
「……はい。ありがとうございます!」
ジェインさんの真面目な表情に、フィーネは頷く。
俺たちはジェインさんに背を向けると、すぐ近くにあるギルドへと駆け出した。
ギルドに到着し扉を開けると、受付エリアである酒場は人でごった返していた。
そのさらに奥で、ギルド長のゴーガンが毛のない頭を光らせながら、身振り手振りをまじえて状況を説明していた。
「魔物の大群は現在、北門に向かって進行している。数は約一万。四つある防衛線のうち、最前線である第一防衛線ではSランク冒険者三名大奮闘してるが、王都に到達するのも時間の問題だろう」
Sランク冒険者が三人? そのうちの二人はノーバンとダインだろうけど……この王都にもう一人Sランクがいたのか?
ゴーガンは続ける。
「軍は確実に国民と王族を守るため、各所に配置されているが、正直まだまだ数が足りない。だから、この国を守るためにお前たちの力を貸してほしい!」
そう言ってゴーガンが頭を下げた。
ギルドマスターが頭を下げるとは誰も思っていなかったのか、その場が静まり返る。
しかしすぐに、「やってやるぜ!」「俺たちに任せろ!」「あんたが頭を下げてどうする」といった声が上がった。
ゴーガンは顔を上げると、「ありがとう」と言う。
話が一段落ついたようなので、俺はゴーガンに声をかけることにした。
「ゴーガン、今戻ったぞ~」
そんな呑気な声をかけられたゴーガンは俺に気付き、目を丸くした。
「ハルト! 途中で戻ってきたのか!?」
「いや、ちゃんと倒してきたぞ。っていうかアイツ強すぎだろ、めんどくさい依頼を押し付けやがって……」
俺がそう愚痴ると、ゴーガンは申し訳なさそうな顔をした。
「それは悪かった……じゃなくて、ほんとに討伐したのか!? だとしたら戻ってくるのが早すぎないか!?」
「あー、証拠出すからちょっと待ってくれ。悪い皆、ちょっとどいてくれるか」
「証拠って、討伐証明の牙か?」
俺が周りの冒険者をどかしていると、ゴーガンが不思議そうに尋ねてくる。
「いや……こいつだ」
俺はそう言って、マジックバッグから取り出すフリをして異空間収納からワイバーン変異種の頭部を取り出す。
「なっ!?」
その巨大な頭を見て、ゴーガンが驚きの声を上げた。
周りの冒険者の中には、「ひぃ……」という小さな悲鳴を上げて後ずさる者もいた。
「ほら、これで信じられるだろ? あ、戻ってきた方法は秘密な」
「おいおい、マジかよ……はぁ、分かった。確かにワイバーン変異種の討伐を完遂したようだな」
ゴーガンはため息をついて、言葉を続ける。
「戻ってきて早々で悪いが、今の王都の状況は分かっているな?」
「ああ。今さっきのゴーガンの説明を聞いていたからな……それで、俺は何をすればいい?」
「そうか、それではダインたちがいる最前線に行ってくれないか?」
俺が頷こうとした途端、冒険者の数人が声を上げた。
「おいおいゴーガンさん、こいつはまだ若い! 危険な前線に向かわせる必要はないだろう!」
「そうだ、魔物たちの中には災害級が何十体といるって話じゃないか! こいつじゃすぐに……」
「こいつを行かせるくらいなら俺たちが行くぞ!」
うーん、装備なんかを見る限り、この三人はベテランっぽいな。きっといい人たちなんだろう。
ただ、俺がノーバンやダインに勝ったことを知らないらしいな。
周りの冒険者の中には、俺の実力を知っているからか、ゴーガンの意見に頷いているやつもいるが……
するとゴーガンが、三人組に言う。
「……お前らは任務で離れていたから知らんだろうが、このハルトはノーバンとダインとの模擬戦に勝っている。そしてそこのワイバーン変異種の頭だが、こいつはSランク昇格試験のための討伐依頼だった。こいつの実力は保証されてるから安心しろ」
それを聞いて、三人組は唖然としていた。
「さて、それじゃあ行くか」
俺はワイバーン変異種の頭を回収してから、周りを見渡してそう言う。
「戦いに出るやつらは俺と一緒に来い……ゴーガン、それで構わないな?」
「ああ……最前線は任せたぞ、ハルト」
俺はゴーガンの言葉に力強く頷いて、ギルドを後にするのだった。
俺とフィーネ、そして数十人の冒険者は、北門へと辿り着いた。
俺は一度、気配察知とマップを使って戦況を確認する。
ゴーガンの言っていた通り、最前線はすでに魔物の群れとぶつかっている。敵の中に切り込んでいる反応が三つあるが、これがダインたちSランク冒険者なのだろう。
彼らのおかげで進行は乱れているようだが、それでもいくつかの反応が第一防衛線を抜けて第二防衛線とぶつかっていた。第一防衛線が完全に破られるのは時間の問題だ。
急ぎ、前線に向かうことにした俺は、振り返って冒険者たちに告げた。
「残念だが、前線の状況はあまりよくない。皆は第二、第三、そして最終防衛線に入ってくれ!」
そして俺はフィーネに目配せして、走り始めた。
第三防衛線に辿り着いたところで、俺たちは足を止める。
「フィーネはここで防衛に参加してくれ」
「分かりました。気を付けてくださいね」
「ああ」
見回せば、既に防衛線に加わっている冒険者グループがいるようで、フィーネはそこに入っていった。
俺はさらに進み、第二防衛線に到着する。
ここでは現状最前線をすり抜けてきた魔物を討っているらしく、それなりの手練れが揃っているようだ。
と、そこで、前方に魔物の集団が現れた。
「なっ、あの数は……最前線は崩壊したのか!?」
「いや、よく見ろ、連中の後ろには敵が続いていない。たまたまあの規模で抜けてきただけだ!」
そんな怒号が飛び交う中、俺は敵の数を確認する。
大体百匹くらいか……それなら楽に倒せそうだな。
俺はそう判断すると、防衛線を構築する兵士と冒険者たちの間をすり抜けて、こちらへ向かってくる魔物目がけて進む。
「おっ、おい! そこのお前、早く戻れ!」
「何やってるんだ、死にたいのか!」
「あいつ、ノーバンとダインに勝ったガキじゃねえか……いや、流石にあの敵の数は無理だ、引き返せ!」
兵士と冒険者がそんなことを叫ぶが、俺は気にしない。
そして魔物との距離が百メトルほどになった時、俺は威圧を放った。
「……道を開けろ」
その結果、魔物たちはいっせいに動きを止め、その場に立ち止まった。
「聞こえなかったか? 道を開けろと言ったんだ……ってまあ、何言ってるか魔物には分からないか」
俺はそう呟きながら、手の平に小さな火の玉を作り出し、魔物の群れの中心部へと放り投げる。
そして火の玉は魔物に触れた瞬間――大爆発を巻き起こした。
今俺が使ったのは、火属性上級魔法の大爆発。一見ただの火の玉だが、高密度の魔力が込められていて、着弾と同時に大爆発するという魔法だ。
周囲を爆風が襲い、後ろの兵士たちからは悲鳴が上がった。
俺はそれを気にせず、再び歩き始める。
風が吹いて砂煙が晴れると、魔物たちがいた場所はクレーターになっていた。
俺はそのクレーターを軽く飛び越え、最前線へと向かう。
背後では、いまだにどよめきが起こっていた。
第4話 Sランク冒険者たち
数分走り辿り着いた最前線では、兵士や冒険者たちに交じって、上半身裸のダインとノーバンが奮戦していた。
さらにもう一人、ダインとノーバンのように次々と魔物を屠っていく上半身裸の冒険者がいる。あれがもう一人のSランク冒険者なのだろう。
……ん? あいつ、どこかで見た気がするな。
俺が悩んでいると、こちらに気付いたダインとノーバンが、前線を兵士に任せて向かってきた。
「おお、兄貴! Sランクの試験に行ったって聞いたが?」
「そうだ。引き返してきたのか?」
疲れた様子でそう聞いてくるダインとノーバンに俺は答える。
「ああ、試験ならもう終わったぞ。ゴーガンにも報告してある……てか数匹ならともかく、百匹も抜けさせるなよな。俺が倒したからいいけど」
「いや悪い、後ろにも防衛線あるしって油断してたら抜かれちまった。倒してくれてありがとな、兄貴」
「ったく、気を抜きすぎじゃないか?」
そんな軽口を叩き合っていると、もう一人のSランク冒険者が歩み寄ってきた。
いやダインたちもだけど、魔物を放置してこっちに来るなよ……
呆れる俺に、そのSランク冒険者は手を差し出す。
「はじめまして、ハルト君のことは二人から聞いているよ。二人を試合で倒したんだってね」
……ああ、コイツ、よく見たら王都で何度か見かけた全裸野郎じゃないか。
俺は手を握り返しながら尋ねる。
「あんたは?」
男は「名乗ってなかったね。悪かった」と言って自己紹介をする。
「私はランゼ、Sランク冒険者だ」
「知ってると思うが晴人だ。よろしく」
そう言って手を離すと、戦っていた兵士から叫び声が上がる。
「お、おい! 早く戻ってきてくれ!!」
「なんかピンチっぽいぞ?」
俺がジト目を向けると、三人は焦ったように駆け出す。
「「「行ってくる!!」」」
「ああ、ってか服を着ろよ!」
俺はそこでようやくツッコミを入れた。なんで上半身裸なんだよ、自然すぎてツッコミが遅れたわ……
俺も武器を手に取り、魔物の群れに切り込んでいったのだが、数分後……
「ちょっ、兄貴ヘルプヘルプッ! 助けてください兄貴! 早く! 何も着てないから当たると洒落にならねーんだよ!」
「お、俺も助けてくれ! いや、助けてください!」
「あ、やばい! 私も頼む! お願いします!」
前線から少し突出した場所で魔物に囲まれながら戦うダイン、ノーバン、ランゼがピンチになっていた。
あいつら、俺が来るまでめっちゃ活躍してたんじゃないの? なんであんなことになってんだ?
そう思っていると、周りにいた冒険者と兵士が馬鹿を見るような目でダインたち三人を見ていた。
「ダインとノーバンのやつ、脱ぎ始めたランゼと張り合うから……」
「いやまぁ、ここまで相当奮闘したから疲れてるんだろうけどさ……」
「てかそもそもなんでランゼは脱ぎ始めたんだ?」
「いつもの病気だろ」
そんな会話も聞こえてくる。何やってんだアイツら……
まあ、めんどくさいからサクッと片付けるか。
「お前ら、動くなよ?」
俺はそう言って、三人の周りに空間断絶結界を張りつつ、魔物に向かって威圧を放って動きを止める。そして手に魔力を集め、火の玉を生み出した。
流石はSランク冒険者というべきか、三人は俺の手元を見て焦り始める。もっとも、焦りすぎて結界を張ったことには気付いていないようだが。
「あ、兄貴!? それは何だ?」
「大丈夫だ。ただの大爆発だ」
焦るダインに事も無げに答えると、ノーバンとランゼが悲痛な表情を浮かべる。
「兄貴、それは洒落にならないから!」
「勘弁してくれ!」
「ほれ、大爆発」
俺が放り投げた火の玉は三人の中間地点に着弾し、大爆発を起こす。さっきよりも威力は弱めだ。
少しして砂煙が晴れると、魔物はすっかりいなくなり、三人が白目を剥いて気絶していた。
結界は壊れてないから、音にやられたんだろうな。
三人に近付いて、気付け代わりに雷属性魔法を使って軽く電気を流すと、三人仲良く「アババババババッ」という声を上げて目を覚ました。
「兄貴、魔物は――」
言いかけたダインも、起き上がったノーバンもランゼも、周りを見て固まっていた。
それもそうだ、周囲五十メトルくらいの範囲に、魔物が一切いないのだから。
まだ残っている魔物は、こちらを遠巻きに見て近付く気配がない。
「三人とも動けるか? 今から暴れるから、防衛線まで戻ってくれ」
俺の言葉に頷く三人を視界に入れながら、俺は残りの魔物を見回す。
災害級が何十体もいるって言ってたけど、確かにそれらしきやつがいるな……
使えそうなスキルも持ってるっぽいし、効果の確認は後でするとして、とりあえず複製しまくるか。
それにこれだけ魔物がいれば、黒刀もコートも進化するかもしれないな。
よっしゃ、そうと決まればさっさと狩るか!
……と言いたいところだけど、あの飛んでるやつが厄介なんだよな。
結界をうまく使えば空中を移動することはできるけど、機動力じゃ勝てないしなぁ。
こう、押しつぶすように落とせればなぁ……
《スキル〈重力魔法〉を獲得しました。スキルレベルが10となり〈魔法統合〉へと統合されます》
お、久々に聞いたな、この無機質な声。
相変わらずスキル習得がイージーモードだ。
俺はざっと魔物を見渡して手をかざすと、重力魔法を発動する。
「――重圧」
魔法が発動するや否や、飛行していた魔物たちが地面に叩きつけられる。
加えて、地上にいた魔物たちも地面の染みへと変わる。
しかし今ので倒せたのはせいぜい五百体程度、殲滅には程遠い。
俺が次に放ったのは氷属性の古代級魔法。
「――ニブルヘイム!」
その詠唱と共に、魔物たちの足元に、巨大で複雑な魔法陣が展開する。
そして冷気が魔法陣から漏れ出した次の瞬間、魔物の群れは動きを止めた。
――いや、俺の魔法によって、一瞬にして凍結したのだ。
戦場に一瞬の静寂が訪れ、後ろの方にいるダインの声が俺の耳に届く。
「あ、あれは古代級の氷属性魔法――ニブルヘイムだ。普通は複数人の魔力を集めてようやく発動できるはずだが、兄貴は単独で行使可能なのか……?」
その言葉に周囲の兵士や冒険者たちはどよめくが、それも怒り狂った魔物たちの声でかき消される。
「ちっ、まだまだいるな。それなら……」
俺は舌打ちをして、更なる魔法を発動する。
今回発動する魔法は、複数の属性魔法と魔力操作を駆使して作ったオリジナルのものだ。
まずは重力魔法と火魔法、闇魔法の複合魔法だな。
「――八岐大蛇!」
俺がそう唱えると、背後に黒い炎が吹き上がり、渦巻きながら形を変えていく。
そうして現れたのは、体長十メトルを優に超える、日本神話に登場する怪物の名前通りに八つの頭を持つ、黒炎の龍の姿だった。
「焼き払え」
俺の言葉に従って、八岐大蛇は八つの口を開け、黒い炎のブレスを広範囲にわたって吐き出す。
八岐大蛇の黒炎を喰らった魔物は、一瞬にして灰燼となって風で飛ばされていった。
今ので千体以上は倒せたと思うが、それでも残りの魔物は大体六千体。
八岐大蛇で殺すには骨が折れそうだ。
そう判断した俺は八岐大蛇を消し、次の魔法を発動した。
次は雷魔法と重力魔法の複合魔法。
「――雷神の鉄槌!」
その言葉と共に、上空を覆う雲からゴロゴロと雷の音が響き始める。
俺が手を振り下ろした次の瞬間、轟音と共に雷の柱が魔物たちに降り注いだ。
雷が収まった頃には、バラバラになった魔物の死体のパーツが転がっていて、魔物の数は四千程度まで減っていた。
まだまだ数は多いが、ある程度は黒刀で倒して経験値を吸収させてやらないとな。
俺は黒刀を抜き、魔物の群れに突っ込んでいった。
剣を振るい、魔法を放ち、戦場を蹂躙する。
スキルを複製したり、黒刀に吸収したり、素材を異空間収納に収納したりして、大体千体くらいを狩ったところで、俺は大きく跳躍して防衛線まで下がる。
俺の背後では、兵士や冒険者たちがざわついていた。
「な、なんなんだよ……」
「俺たちが苦戦していた魔物がゴミのようだぞ」
「他のSランク冒険者よりも圧倒的じゃねーか……」
そんな声が聞こえる中、一際はしゃいでいるSランク冒険者が三人。
「「「兄貴マジパネェっす!!」」」
……なんでランゼまで兄貴呼びになってんだよ。
俺はため息をつくが、頭を切り替えてポツリと呟く。
「さて、そろそろ幕引きとするか……こいつに耐えられるかな?」
そして右手の人差し指を、上空に向ける。
俺の指の先に何があるのか雲の隙間から見えたのだろう、ノーバンは焦った声を上げた。
「お、おい、お前ら! 空を見てみろ!」
「……なんだありゃ?」
「嘘だろ……」
ダインとランゼが、信じられないとでも言いたげに呟く。
俺はその声を背後に聞きながら、ニヤリと笑った。
俺が発動したのは、ついさっき習得した魔法系スキル『メテオインパクト』。
文字通り、はるか上空にある隕石を、任意で落とすことができるスキルだ。
とはいえ無差別に落とすことしかできないので、重力魔法で軌道をコントロールする必要がある。
宇宙空間から地上を目指して進む隕石は、風を切る轟音と共に、上空を覆っていた雲を突き抜けた。
雲は円形に吹き飛ばされ、千切れていく。
「こいつで全部吹き飛ばしてやるよ――メテオインパクト!」
俺がそう言い切った直後、隕石は地表に到達する。
同時に俺は魔物たちを囲うように、円柱形の空間断絶結界を展開し――
次の瞬間、すさまじい音と共に地面が揺れた。
衝撃波や風、岩塊の破片などは空間断絶結界によって遮られたが、音と震動は容赦なく襲い掛かってきた。
一方の空間断絶結界内は、爆風と衝撃が吹き荒れる。
魔物たちが熱風に焼かれ、あるいは岩の破片に吹き飛ばされ、見る見るうちに数を減らしていく。しかしそれも、蔓延する砂塵と煙で見えなくなった。
ある程度の衝撃を逃がすために空間断絶結界は円柱形に展開したのだが、その上空には、巨大なキノコ雲が出来上がっていた。
しばらくして轟音と震動が収まったところで、空間断絶結界を解除し、風魔法で砂塵と煙を吹き飛ばす。
そこに残っていたのは、ぽっかりと地面に空いたクレーターと、ところどころに転がる岩のみ。三千近くいた魔物は、影も形もなくなっていた。
「ハ、ハハッ……もしかして、やりすぎた?」
それを見た俺の脳内に、フィーネやディランさんに正座で叱られ続ける未来予想図が浮かび、背中に冷や汗が流れるのだった。
応援ありがとうございます!
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