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2巻

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 第1話 王都出発


 おれ――結城晴人ゆうきはるとは、ある日突然、クラス丸ごと異世界に勇者召喚された高校生。
 ところがステータスを確認してみると、『勇者』の称号はなく、勇者に与えられるはずの『ギフト』もないことが判明する。
 そのことを知った、俺たちを召喚しょうかんしたグリセント王国の王女マリアナは、『無能がいては足手まといになる』と言って、俺を王都から追い出したのだった。
 そうして隣街ワークスへと向かった俺だったが、マリアナの差し向けた騎士によって殺されかけ、気が付くと神様の前にいた。
 ギフトを与え忘れたおびとして、あらゆるスキルを作れるスキル万能創造ばんのうそうぞうや、全てを見通すスキル神眼ゴッドアイなどのチートスキルを手に入れた俺は、冒険者として活動し、グリセント王国へ復讐ふくしゅうすることをちかう。もちろん、元の世界へ帰る方法も探しながらだ。
 無事ワークスへと辿り着き、冒険者登録を終えると、グリセント王国と隣国ペルディス王国との国境にある街ヴァーナを経由し、ペルディス王国の王都へと向かった。
 ヴァーナで出会った冒険者の少女、フィーネとパーティを組んだり、ペルディス王国の第一王女、アイリスと知り合ったり、冒険者の最高峰であるSランク冒険者と手合わせしたりと、忙しくも充実した日々を過ごしていた俺。
 そんなある日、王都の冒険者ギルドマスターのゴーガンから、Sランク昇格のための試験を受けないかと打診だしんされる。
 正直断りたかったのだが、結局はゴーガンのねばりに負けて話を受けることに。
 そうして俺はフィーネと共に、試験内容であるワイバーン変異種討伐の準備を進めるのだった。


 そうして迎えた、出発当日の朝。
 俺とフィーネは、宿泊している新月亭しんげつてい女将おかみ、ソフィアさんに挨拶あいさつをしに行った。
 ワイバーンは西の山岳地帯にいるらしく、流石さすがにしばらく宿を空けることになる。部屋と荷物の扱いがどうなるのか聞いておきたかったのだ。

「おはようございます、ソフィアさん。ジェインさんも」

 宿の一階に下りると、そこにはソフィアさんだけでなく、宿の主人であるジェインさんもいた。普段は厨房ちゅうぼうに立っているから、あまり顔を合わせたことがないんだよな。
 二人に挨拶をした俺は、しばらく戻ってこないことを伝え、部屋と荷物の扱いについて尋ねる。
 するとソフィアさんが、宿泊代の仕組みについて説明してくれた。
 長期宿泊で先に料金を貰っているから、荷物は置きっぱなしでもいいそうだ。ただ、報告もなく三週間戻らなければ、荷物は処分されてしまうらしい。
 それほどの期間、連絡もなしだと、死亡扱いということになるんだとか。
 なるほどと頷いていると、ジェインさんとソフィアさんがさとすように言う。

「ハルト。フィーネのことをしっかりと守ってやるんだぞ?」
「そうね。それに、ハルト君が死んじゃったらフィーネちゃんが悲しむから気を付けるのよ」

 二人の顔を見ながら、俺はうなずく。

「分かってるって」
「わ、私だって戦えるんですから!」

 少し怒ったようにそう言うフィーネが微笑ほほえましくて、俺たち三人はクスクスと笑う。

美味うまい飯を作ってやるから、早く戻ってこい」

 ニッと笑みを浮かべるジェインさん。この人の飯はほんとに美味いから楽しみだな。

「ああ! ……ってやばい、待ち合わせに遅れる! 行くぞ、フィーネ!」
「はい!」

 今回は移動に時間がかかりそうだったので、馬車と馬を昨日購入したのだ。朝に店で引き取ることにしたため、あまりゆっくりしていると店の人に迷惑がかかってしまう。
 俺とフィーネは、ジェインさんとソフィアさんに「行ってきます」と告げ、急いで新月亭を出た。


 店の前では、昨日の店主が馬車と馬を準備し終えた状態で待っていた。

「悪い、待たせた」
「遅れてすみません」

 俺とフィーネは軽く頭を下げる。

「いえいえ、大丈夫ですよ……準備の方もできております」
「ありがとう。コイツ、昨日の夜はしっかり休んでいたか?」

 俺は馬車につながれている馬の頭をでながら、店主に問う。

「ええ、いつもは言うことを聞かず夜中も暴れるようなじゃじゃ馬だったのに、昨晩は驚くほど大人しく眠っていましたよ。きっと今日に備えていたんでしょうな」
「そうか。また馬を買いに来ることもあるかもしれないが、その時は頼む」
「はい。その時が参りましたらよろしくお願いします」

 俺は店主が頭を下げるのを横目に、馬車の御者台ぎょしゃだいに乗り込む。
 フィーネも後ろのスペースに座って、準備万端だ。

「よし、それじゃあ行くか!」

 俺の言葉に反応して、馬がこちらを振り向いて「ヒヒィーン」といなないた……まるで『俺に任せろ!』とでも言っているかのように。
 とても頼もしい相棒になりそうだ。
 俺とフィーネは店の前から離れると、西門へと向かう。
 ワイバーンがいる山岳地帯は西の方角に直線距離で三十キロメトル。まっすぐ道が伸びているわけではないし、フィーネの訓練のために途中で魔物を狩るつもりだから、普通よりゆっくり行く予定だ。ま、それでも二日もあればふもとに着くだろうけどな。
 王都近くでは魔物は出現せず、馬車を進めることしばし。俺はふと、思い出したことがあった。

「なあフィーネ、そういえばまだこの馬に名前つけてなかったよな」
「あ、そうですね。何か候補はあるんですか?」

 そう言われて俺は少しの間考えたが……思い付かない。

「ハルトさんが選んだんです。ハルトさんが決めるべきだと思いますよ?」

 フィーネがそう言うが、俺は首を横に振る。

「俺は名付けのセンスがないんだよ……」

 昔から、家族や友人たちに言われていたからな……

「そ、そうなのですか。でも何かいい名前が見つかるはずです! 二人で考えましょう!」
「そう、だな」

 俺をはげまそうと、フィーネが明るく振舞ふるまう。
 うっ、その優しさが心にみるぜ……!
 馬車を走らせつつ、いくつかフィーネに案を出してもらいながら、じっくりと考える。
 休憩がてら昼食を終えたところで、俺はようやく名前を決めた。

「よし! お前の名前はマグロだッ!」

 首の辺りをたたきながら言うと、マグロは『いい名前じゃねーか!』と言いたげに「ヒヒィーン」といなないた。

「ハルトさん。その名前ってどんな意味なんですか?」

 ん? この世界にはマグロはいないのか。

「意味、か……俺の故郷にいた、元気に泳ぎ回ってる魚の名前だよ。じゃじゃ馬だったっていうこいつにはぴったりだろ」
「本当にそれでいいんでしょうか……でもまあ、喜んでいますし」

 どことなく遠い目をしてフィーネが言う。
 俺もそう思うけど、当の本人が気に入ってるっぽいからなぁ……うん、まあ良しとしよう。

「よし! これからよろしく頼むぜ、マグロ相棒!」
「ヒヒィーン!」


 それからも何事もなく進み、暗くなり始めたところで野営の準備を始める。
 といっても眠るのは馬車の中だから、正確には夕食の準備だな。
 俺は拾ってきたまきに魔法で火をけ、異空間収納からあみと鍋を取り出した。
 その光景を見て、フィーネが「え? なんで鍋なんか出したんですか?」と尋ねてくる。
 ん? 俺、何か間違ったかな?

「そりゃ料理するんだから鍋は必要だろ?」

 俺がそう言うと、フィーネは呆れてため息をついた。

「ハルトさん、野営での食事は、干し肉や干した果物等を食べるのが普通です。野外でしっかりとした料理をすると、匂いにられて獣や魔物が寄ってくることがありますからね。だいたい、護衛の時だってそうしてたじゃないですか」
「確かにそうだったな。でも食事は大事だからな、ちゃんとしたものを食べないと」

 俺はそう言って、そのまま料理を作り始める。

「あっ、結局作るんですね……」

 そんなフィーネの呟きを聞き流して、俺は料理に取りかかる。時間がもったいないからな。
 そういえば、この世界に来てから料理するのは初めてだな。美味くできるといいんだが……
 今日のメニューは肉が多めの野菜スープだ。
 まずは異空間収納から、王都で買っておいた鳥の魔物の肉を取り出し、一口サイズに切る。それを油をひいておいた鍋に入れ、軽く焦げ目がつくまでしっかりと火を通す。
 次に野菜を加えて炒めてから水を入れる。沸騰ふっとうしたところでスパイスと塩を入れ、味を調えたら完成だ。
 いつのまにか、俺たちの馬車の周りには獣たちが集まりつつあった。
 といっても、どれも大したことない雑魚ざこばかりだ。軽く威圧いあつしてやると、あっという間に去っていった。
 気配察知とマップで確認しても近くに獣や魔物はいないので、ゆっくり飯を食べられそうだな。
 俺はマグロの前にえさの果物を置いてから、自分とフィーネの分のスープを器によそい、さっそく食べ始める。
 俺の特製スープを口にしたフィーネは、目を輝かせていた。

「ん~、美味しいです! まさかこんなに美味しい料理を、野営の時に食べられるとは思いませんでした!」

 喜んでもらえて何よりだ、と思いながら俺もスープを一口。
 お、思っていたよりうまくできたな。見慣れない野菜だから少し不安だったけど、いい味が出ている。肉も食感がいいな。
 俺とフィーネは雑談を交えながら食事を進め、結局スープを一滴も残さずに完食した。
 その後は俺が食事の片付け、フィーネが寝床の準備と役割を分担し、テキパキと動く。
 あっという間に作業を終えた俺たちは、特にやることもないので寝ることにした。
 とはいえ、片方は見張りをする必要があるため、交代で一人ずつ寝ることになる。
 食事の時に話し合って、フィーネが先に見張り番をすることになっていた。
 もっとも、フィーネ一人に全てを任せるのは申し訳ない。
 そのため俺は、結界魔法を使うことにした。

「フィーネ、魔物や盗賊が出るかもしれないから、一応結界を張っておいた。災害級までなら防げると思うから、安心してくれ」
「結界ってあの強力なやつですか……」

 フィーネが言っているのは、アイリスが襲われた時に使ったやつのことかな?

「ああ。でも別に強力ってほどでもない、普通の結界だぞ?」
「ふ、普通ですか?」

 引いているように見えるフィーネは放っておいて、俺は寝ることにした。

「おやすみ、フィーネ」
「は、はい。おやすみなさい、ハルトさん……」

 やっぱり引いてるよな?


  ◇ ◇ ◇


 ハルトが寝た後、フィーネは焚火たきびの番をしながら、一人考えていた。
 いつから自分は、彼のことを好きになったのかと。
 出会いは偶然だった。国境の町ヴァーナで四人組の冒険者に絡まれたのを、助けてもらったのだ。
 その時は、ただ強くて優しい人だなとしか思わなかった。
 しかしその後の護衛依頼で、彼の凄さを実感した。
 魔力弾とかいう聞いたこともない魔法を使って、指先から魔力のかたまりを放ち、ゴブリンを瞬殺しゅんさつしたのだ。
 それから襲いかかってきた盗賊を倒した時も、アイリス王女を守った時も、そしてSランクの冒険者との模擬戦に勝った時も……
 ハルトはその力を、堂々と振るっていた。
 しかし決して、力におぼれて非道な行いをすることはなかった。
 それどころか今は、フィーネの身を案じて結界まで張ってくれている。
 アイリスを守った時から薄々うすうす気付いていたが、ハルトはやはり、仲間を大切にする優しい人間なのだ。
 そのことを改めて理解したフィーネの胸には温かいものが溢れてきていた。
 フィーネはちらりと、馬車を見る。
 そこで眠るハルトの姿を見て、確かに胸が高鳴った。
 これが恋なのだと、フィーネはようやく認めた。
 そして同時に考える。
 ――ハルトは自分のことをどう思っているのだろう、と。
 そもそも、彼は自分のことを嫌っているのではないか、と考えかけ、すぐに首を横に振る。
 もしそうだとしたら、この旅に同行することや、それどころかパーティを組むことだって拒否しただろう。
 では、彼は自分のことが好きなのだろうか?
 いくら考えても、フィーネにはその答えは見つからない。
 ハルトは優しい。それゆえに、自分に向けられている優しさが恋愛的な好意なのか判断がつかないようだった。
 ふと、そこで考える。
 あれほどの力を持っている彼は、どうしてあそこまで優しいのだろうか?
 もっと傲慢ごうまんになったり、あるいは誰彼かまわず乱暴に振舞うようになったりしてもおかしくないのに。
 それでも彼は、優しさを忘れない。
 力を得たのが先か、優しさを元々持っていたのか、それは分からないが、今の彼になるきっかけがあったはずだ。

「ハルトさんのこと、もっと知りたいです……」

 焚火にかけられたその言葉は、誰にも届くことなく消えていくのだった。



 第2話 亜空間とワイバーンの討伐


 翌朝、俺が朝食を作っていると、匂いで目が覚めたのかフィーネが起きだしてきた。

「おはようフィーネ。少し待っててくれ、あと少しで朝食ができるから」
「おふぁようございます、ふぁ~……」

 フィーネは目をこすりながら眠そうに答える。

「……顔を洗ってきたらどうだ?」
「ふぁい……そうします」

 フィーネはまだふらふらしていたが、俺の言葉に従って近場の川へと向かった。
 俺は鍋に入ったスープをかき混ぜながら、その姿を見送る。
 今日の朝食は王都で買ったパンと、思っていた以上に硬かったそれをやわらかくするためのスープだ。
 スープの味を確認した俺は、異空間収納から果物を取り出して、マグロに与えた。

「今日もよろしくな、相棒」
「ヒヒィーン!」

 マグロは元気よくいななき、果物をバクバクと食べ始めた。
 と、その時、フィーネが戻ってきた。

「お待たせしました……いい匂いですね」

 フィーネは鼻をスンスンと鳴らしながらそう言う。

「ああちょうど今できたところだよ。食べようか」
「はい」

 スープを器によそった俺たちは丸太の上に座り、手を合わせた。

「「いただきます!」」

 俺はさっそく、パンをスープに浸して口に入れる。
 うん、少し濃い目の味付けにしたけど、ちょうどいいみたいだな。
 フィーネを見ると、俺の真似をしてパンを口に運び、幸せそうな笑みを浮かべていた。

「んん~っ! スープがパンに染みていて、とてもおいしいです!」

 ……おっと、あまりにも可愛いから見惚みとれてしまっていた。
 なんだか照れくさくて、俺は誤魔化ごまかすように朝食を進めるのだった。


 朝食を終えた俺たちは、山岳地帯を目指して出発した。
 ここから先は魔物が出てくるようになるので、細心の注意を払う。
 とはいっても、群れからはぐれたような魔物が一、二匹現れるだけだったため、基本的には訓練がてらフィーネに戦ってもらった。俺は指導係兼後方支援だ。
 午前に二回、昼食を挟んでさらに三回の襲撃しゅうげきを退け、俺たちは夕方頃には山岳地帯の麓にある森へと辿たどいた。
 大体予想通りの進み具合だが……このタイミングで、また襲撃か。

「フィーネ、気配察知に魔物が引っ掛かった。気配は五つ。グレイウルフだな」
「分かりました!」

 俺の言葉に、フィーネは力強く頷く。
 流石にフィーネ一人で五匹の相手はできない。せいぜい二匹同時だろうな。
 そんなことを考えながら、俺とフィーネは馬車から降りて襲撃に備える。
 するとすぐに、グレイウルフが五匹、目の前に飛び出してきた。
 俺はすかさず敵の集団の中心に、氷属性の初級魔法、アイスボールを放つ。
 二匹はフィーネ側、三匹はこちら側へと回避した。よし、うまく分断できたな。
 俺はそのまま距離を詰めると、『抜刀術ばっとうじゅつ』のスキルで腰に差していた黒刀こくとうを抜き、三匹を同時に仕留めた。
 グレイウルフの死体を異空間収納に回収しながらフィーネに目を向けると、彼女はちょうど一体を剣で倒したところだった。
 今日一日で何度か戦いを経験したおかげか、動きはかなりスムーズだ。
 さらに背後から襲い掛かってきたもう一匹に対しても、冷静に対応する。
 フィーネは振り向きざまに手の平をかざし、魔法名をとなえた。

「アイスボール!」

 フィーネの手の平から十五センチ弱の氷のかたまりが出現し、グレイウルフへと放たれる。
 グレイウルフは空中で身をよじって氷の塊をかわすが、そこへフィーネがすかさず剣を突き入れ、無事に仕留めることができたのだった。
 最後まで見届けた俺は、フィーネに賞賛しょうさんの言葉を送る。

「凄いな。以前より戦い方がよくなってるよ」
「ありがとうございます! ようやく、一人でここまで戦えるようになりました!」
「もっと強くならないとな」
「はい!」

 フィーネは実力が上がったことを喜んでいた。
 この調子なら、あっという間に成長するだろうな。


 そこから再び馬車を進め、山を登りつつ森を抜けたのだが……

「ここから先は馬車では無理そうだな……」

 その先は、とてもではないが馬車が通れる道ではなかった。

「ハルトさん、どうしましょうか。馬車はここに置いていきますか?」

 うーん、せっかく買った馬車だから、それは避けたいんだよな。
 不安そうにフィーネが見つめる中、俺は頭を働かせる。
 異空間収納には馬車は仕舞えるけど、マグロはどうだろうな……生き物は入れたことがないし、かといってマグロで試したくもない。
 異空間収納に使っている時空魔法で、たとえばどこか遠い場所に繋がる門みたいなものを作るのはどうだろうか? でも繋げる先がないんだよな。
 いっそのこと、俺だけの別の空間、というか世界とか作っちゃうか? 流石にやりすぎかな?
 ……いや、実際アリかもしれないな。
 俺の万能創造は、望むものは何でも作れてしまう。
 その力と時空魔法を利用して、俺だけの世界――『亜空間』を作ればいいんだ。
 俺はそのことに思い至ると、パッと顔を上げてフィーネを見つめる。

「フィーネ、いい案を思いついたからちょっと待っていてくれないか?」
「は、はい……ハルトさんにお任せします」

 フィーネはなぜか顔を赤くしているが、俺は気にせずに魔力を練り上げていく。
 まずは大量の魔力と時空魔法の力で、亜空間を作る。そしてそこに繋がる門を作れば……

「ハ、ハルトさん! この黒いの、何ですか!?」

 フィーネの言葉通り、俺たちの目の前には、人が余裕で通れそうな大きさの黒いモヤのようなものが現れた。

「これは亜空間に続く門だ」
「亜空間、ですか? 初めて聞きました」
「こことは隔離かくりされた、もう一つの世界みたいなもんだよ……少し中を見てくるからそこで待っててくれ」
「え、はい……」

 俺はそう言って、フィーネと馬車の周りに結界を張る。これで俺が亜空間にいる時に襲われても大丈夫だ。
 亜空間への門に近付いてみるが、真っ暗で何も見えない。
 恐る恐る手を入れてみても、くうを切るだけだった。
 そこで思い切り首を突っ込んでみると……

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