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第1章

第19話:秋人の過去

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 ───村を出てから少し


 俺は話の途中だったのを話し出す。


 「フィア、なんで「わかる」と言ったかだよね?」
 「…う、うん」
 「それはね俺もフィアと同じ歳に親を二人とも亡くしているからだよ。まあ俺の場合は姉がいたけどね…」
 「え……」

 フィアは予想外だったのか「そんな!?」的な顔で俺の顔を見て来た。
 
 俺はその日の事を思い出しながら話し出す。


 ☆


 季節は秋。俺が12歳の時だった。

 家族みんな休みだった俺は家族3人で父の運転で山にドライブに来ていた。

 姉は友達と遊ぶと言う事でドライブには来てはいなかった。

 山を車で下っている時、後部座席に座っている俺が父に言う。


 「ねぇねぇお父さん!」
 「なんだ秋人?」
 「ここからの景色綺麗だよ!」
 「本当か?」
 「うん!」


 車はカーブを曲がる。父は窓の外の景色を見る。

 山の紅葉は綺麗で紅、オレンジ、黄、茶色といった様々な色で山が彩られていた。

 そこに母の声が。


 「あなた前!」


 母の叫び声が聞こえて父と俺は前を見ると────目の前から車が猛スピードでカーブを曲がって来た。車線からははみ出ておりどう見てもぶつかるコースだった。

 そして車に衝撃が走る。ぶつかった。俺達が乗る車は衝撃によりガードレールを超えて崖の下に逆さまで落ちてしまう。

 ぶつかった時よりも更に激しい衝撃が車と俺達に走る。俺は痛みで目を開けると、目の前のフロントガラスが割れそこに血だらけで居る父と母の姿がそこにあった。

 俺は痛みに耐えながらも車から抜け出して父と母に近寄って声を掛ける。


 「父さん!母さん!しっかして!ねぇってば!」


 俺は大きな声で父と母を呼ぶ。

 そこに父と母の声が微かに聞こえて来た。


 「うぐっ…秋、と…ごめん、な…父さんと、母さんはもう…た…助からない。だから───」


 俺はそれを遮る様に父に言う。


 「何言ってんのだよ!まだ行くところがあるだろ!」


 そこに母さんが。


 「ゴホッ…うぐっ…ごめんね、秋人…父さんの、言う通り、もう、助からないわ…」


 母さんが言ってそちらを向くと、脇腹に太い木の枝が刺さっていた。そこから流れる様に血が流れ出す。


 「母さんも何言ってるんだよ!また美味しい料理を食わせてくれよ!」


 そこに母の声が。


 「ゴホッゴホッ…諦めが、悪い、うぐっ…子ね。ハァ…ハァ…いい?よく、聞くのよ。秋人が生まれた季節は…秋。うぐっ……。秋の様に色とりどりの顔を…ハァ…ハァ…。見てみたかった」

 「もう喋らないでよ!それ以上喋ったら死んじゃうよ!」


 俺は母が喋るのを止めさせようとするが。母は続けて話す。


 「まあ…こうして今も…うぐっ……見たことがない顔を…ゴホッ…見せてくれて、うぅ……嬉しい、わ」

 「わかったから!ぐすっ、もう…もう喋らないでくれよ!」


 俺はもう泣きながら母に向かって叫んでいた。そこに父が。


 「これで最後…よ。ゴホッゴホッ…いい秋人…よく、聞くの…よ?うぐっ…これからは…好きな、ように…元気で…生きて行くの…よ………」
 
 そこに父の声が。

 「母さんの…言う、通りだ…うぐっ…自由に生きろ…。女、子供には…優しく…しろ…よ、な………」


 「父さん!母さん!父さん!母さん!とう…さん…か、あ…さん…うぅ…」


 俺は何度も何度も呼びかけるが反応が無かった。

 それから警察が来て俺は知っていながらも、すがり付いて言う。


 「お巡りさん!父さんと母さんを助けてよ!」


 俺は自身が右腕骨折、脇腹3本骨折、左足骨折の重症を負いながらも警察の人に話しかける。だが。


 「君のお父さんとお母さんはもう……」


 俺は知っていた。もう父さんと母さんは死んでいる、と。それでもなお生きていることを信じてすがり付いた。

 俺はそれから救急車で病院へと運ばれた。気づけば外は夜。隣に違和感があり見ると姉が俺の手を取って寝ていた。起きようとするが体中に痛みが走って声が漏れる。


 「いっ、うっ…ぐ…」


 そして俺の声で姉が目を覚ます。


 「秋人!」
 「ねえ…ちゃん?」
 「そうだよ!大丈夫だった!?」


 そこで俺は思い出して言う。


 「父さんと母さんは!?」
 「父さんと母さんは…………」

 
 それだけで俺は察した。分かっていても聞いた。もし、もしかしたら助かっていたかもしれないという小さな希望をみて。

 だがそんな俺に現実は理不尽で運命や希望なんてありはしない。それを知った俺は心を閉ざすようになった。

 退院した俺は母の実家で暮らす事になった。

 姉は心を閉ざした俺を元気にさせようと色々と試してきた。姉も辛いのは同じ。なのに俺を励まそうと何度も何度も俺の元には来ては見してきた。
 

 「親が大好きだった俺は親の死に心を閉ざしたよ。それでも姉は俺をどんな手を使ってでも励まして来たよ何度も何度もね。姉ちゃんも辛い筈だったのにね…」


 フィアとゼノアは黙って話しを聞いている。


 そしてある日、姉は俺をある場所へと俺を連れて行った。そう、あの山だ。それもあの日と同じく綺麗な紅葉の景色だった。



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