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プロローグ

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 ――休日の昼。

 姉とどちらがアイスを買いに行くかと言うジャンケンに負け、俺――柊 秋人(「柊 秋人」にルビ「ひいらぎ あきと」)はアイスを買いに行くことになった。

 季節は夏。今日はニュースで今年一番の暑さという予報から、現在の気温は38度を超えていた。
 アスファルトから熱気が伝わってくる。

「暑い……クソッ、じゃんけんに負けていなかったら……」

 そんな言葉を吐きつつも俺は今ある体力を振り絞りコンビニへと歩いて向かう。
 しばらく歩きコンビニの前へと到着する。ここに来るまでに俺は大量の汗を流しており、脱水症状になるんじゃないかと思えるほどの汗の量だった。だが冷房が効いたコンビニの中の涼しさを考えるとそんなことはどうってことなかった。

 自動ドアが開きコンビニの中に入る。入った瞬間、コンビニの中は冷房が効いておりとても涼しく体から汗が引いていくのを感じた。

「この涼しさ、生き返る……」

 そしてアイスが売っているコーナーまで来て何を買うか選ぶ。
 俺と姉はガ〇〇リ君が好きなので、ソーダ味四本をカゴの中に入れて会計をする。

「四点で合計300円になります」

 財布から300円丁度を出してレシートを貰いコンビニを出た。
 ブワッと外の熱気が俺を襲う。

「姉貴には悪いが買った人の特権ってことで」

 俺はコンビニを出てすぐに袋からアイスを一本を取り出して食べ始めた。

「ん~! やっぱりガ〇〇リ君だよな。安いし美味いしもう最高っ! これぞ至高のアイスって感じ」

 そんな事を呟きながら青になった信号を渡ろうとしたが、みんなが何か叫んでいるのが聞こえた。

「危ないぞ下がれ!」
「トラックが突っ込んでくるぞ!」

 みんなの死線の先を見ると、一台のトラックが減速せずに交差点へと突っ込んできていた。トラックの運転手を見るとケータイを片手に弄って前を見ていなかった。
 トラックの先を目線で追うと、小学生位の女の子が横断歩道を「ママー」と言って渡っていた。それを見た母親は……

「カナっ!!」

 母親の怒声で女の子もといカナちゃんが、体をビクッと震わせその場動きを止めてしまった。
 そしてカナちゃん母親はもうダメかと思い、絶望の表情でその場に座り込んでしまう。

 他のみんなももうダメだと諦めている表情だった。
 誰も助けに行く人はいない。危険と知って自ら飛び込む者はいないだから。

 それを見た俺は、「このままではカナちゃんがトラックに轢かれてしまう」と思い目の前の少女を救うべく動いていた。
 この時、俺は死への恐怖感が全く無かった。
 ただ目の前で起こる悲劇を見たくなかったのだ。
 みんなの悲鳴が響き渡る。それは俺を見ての悲鳴なのか、それともカナちゃんのすぐ近くまで迫っているトラックを見てたのかは定かではない。

 俺はなんとかカナちゃんのところまでやってきたが、トラックがすぐそこまで迫っていた。逃げようにも間に合わないと悟った俺は、「轢かれるのならカナちゃんだけでも」と思いカナちゃんを腕に抱えた。

「もう大丈夫だ。安心しろ」

 そうカナちゃんに笑顔で告げた俺はその母親にも声を張り上げた。

「カナちゃんのお母さん、しっかりとキャッチしてくれよ!」

 俺は母親へとカナちゃんを思いっきり投げると、母親は「え?」とオロオロしながらも周りの人達と一緒に無事キャッチしてくれた。

 子供を投げるとはどうなのかと思ったが、これしか最速で安全な手段が無かったのだから仕方がない。
 母親が「君も早────」と叫んではいたが最後の言葉は聞こえ無かった。俺は「一人救えたのなら良しとしよう」と思い来るだろう衝撃に備えるのだった。


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