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第2章
第63話:予選の始まり
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――予選が開かれる当日の朝。
「ではみんな、今日から予選が始まる。気を引き締めてかかれ」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてくる。
相当緊張しているようだ。
それに比べて俺とゼノアはいつも通りのんびりしていた。
何故か?
それは俺とゼノアにとって、余裕だからである。
まずレベルに差があり過ぎるのだ。対等なレベルに合わせようにも、弱体化のスキルやアイテムなど持ってはいない。
あれば使っているくらいだ。
「アキトさんとゼノアさんは緊張――何でもありません……」
クレアが何かを言おうとしたが、俺とゼノアがいつも通りのんびりしている姿を見て言うのを止めた。
「おいおいクレア。俺はこう見えても緊張しているんだぞ?」
「「「……え?」」」
クレアのみならず、みんなが俺を見て間抜けな声を上げる。
緊張の理由は……
「どう手加減するか。ミスったら即死だろうし……」
「そ、即死……」
全員の表情が引き攣っていた。
「じゃな」
唯一ゼノアだけがうんうんと頷き同意してくれた。
「力んだら一瞬で終わってしまうしのう~」
「「「……」」」
もう無言である。
「さ、さて。今日の日程だが」
ザイン先生が強引に話を切り出した。
そうすることによってみんな視線が、前に立つザイン先生へと視線が注がれる。
そうしてザイン先生は本日の予選試合についてのルールと、どこで行われるかの説明に入った。
「ルールだが、相手を死に至らしめる攻撃は勿論禁止となっている。相手の降参、または戦闘続行不可となった場合のみ勝利となっている」
みんなが真剣に聞く。
「まあそんなところだろ。多分……」
「頼り無い……」と全員の心の声が一致した瞬間だった。
それから会場の説明がされた。
「って感じだ。俺達Sクラスは一日同じ場所だから。わかったか~?」
「「「はい」」」
「よしっ。 二人を除いて本気で臨むことだ」
「「「はいっ!」」」
どう見ても俺とゼノアやん……
それにみんなこっち見てるし!!
そんなこんなで俺達は試合が行われる会場へと移動を始めた。
「緊張します……アキトさん。何か緊張しない方法とかありますか?」
見るとクレアの手が僅かに振るえていた。
「う~ん、レベル1でレベル100のゴブリンを相手するんじゃないんだ。気楽にいこうぜ」
そう言ったのだが……
「いや、レベル100のゴブリン相手とか緊張どころじゃないんですけど……普通に死にますからね!?」
「おっ、良いツッコミ」
「もういいです……」
「でも緊張はしなくなったろ?」
「あっ……」
気が付いたようだ。クレアの手の震えは気が付けば収まっていた。
「もしかしてそのために?」
「何のことかさっぱり」
「ありがとうございます」
クレアはボソッと俺に向けてお礼をした。
そんなつもりで言ったわけじゃないんだけどね。まあ、本人が緊張しなくなったならそれでいいか。
試合会場に到着すると、他のクラスメイトも緊張している様子だった。
ザイン先生も不安な表情をしている。
だから俺はみんなの緊張を和らげようと口を開く。
「何緊張してんだ。折角相手がいるんだぞ? 日頃のストレス発散をそいつでしてやれ。まあ、反撃してくる的とでも思えばいいさ。気楽にいこうぜ」
「そうじゃぞ。ボコボコにしてやるのじゃ。こう、シュッシュッってのう」
ゼノアは拳でファイティングポーズを取り拳を打ち出していた。
地味にブオンッと言う空気を切り裂くような鈍く重い音がする。
「「「――って、サンドバッグじゃねーからなっ!?」」」
息ぴったりに突っ込まれてしまった。
「まあみんな頑張ろうぜ。目指すは全員が大会出場の切符を手に入れようじゃないか!」
「「「おうっ!」」
こうして俺達の戦いと言う名の試合が始まるのだった。
「ではみんな、今日から予選が始まる。気を引き締めてかかれ」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてくる。
相当緊張しているようだ。
それに比べて俺とゼノアはいつも通りのんびりしていた。
何故か?
それは俺とゼノアにとって、余裕だからである。
まずレベルに差があり過ぎるのだ。対等なレベルに合わせようにも、弱体化のスキルやアイテムなど持ってはいない。
あれば使っているくらいだ。
「アキトさんとゼノアさんは緊張――何でもありません……」
クレアが何かを言おうとしたが、俺とゼノアがいつも通りのんびりしている姿を見て言うのを止めた。
「おいおいクレア。俺はこう見えても緊張しているんだぞ?」
「「「……え?」」」
クレアのみならず、みんなが俺を見て間抜けな声を上げる。
緊張の理由は……
「どう手加減するか。ミスったら即死だろうし……」
「そ、即死……」
全員の表情が引き攣っていた。
「じゃな」
唯一ゼノアだけがうんうんと頷き同意してくれた。
「力んだら一瞬で終わってしまうしのう~」
「「「……」」」
もう無言である。
「さ、さて。今日の日程だが」
ザイン先生が強引に話を切り出した。
そうすることによってみんな視線が、前に立つザイン先生へと視線が注がれる。
そうしてザイン先生は本日の予選試合についてのルールと、どこで行われるかの説明に入った。
「ルールだが、相手を死に至らしめる攻撃は勿論禁止となっている。相手の降参、または戦闘続行不可となった場合のみ勝利となっている」
みんなが真剣に聞く。
「まあそんなところだろ。多分……」
「頼り無い……」と全員の心の声が一致した瞬間だった。
それから会場の説明がされた。
「って感じだ。俺達Sクラスは一日同じ場所だから。わかったか~?」
「「「はい」」」
「よしっ。 二人を除いて本気で臨むことだ」
「「「はいっ!」」」
どう見ても俺とゼノアやん……
それにみんなこっち見てるし!!
そんなこんなで俺達は試合が行われる会場へと移動を始めた。
「緊張します……アキトさん。何か緊張しない方法とかありますか?」
見るとクレアの手が僅かに振るえていた。
「う~ん、レベル1でレベル100のゴブリンを相手するんじゃないんだ。気楽にいこうぜ」
そう言ったのだが……
「いや、レベル100のゴブリン相手とか緊張どころじゃないんですけど……普通に死にますからね!?」
「おっ、良いツッコミ」
「もういいです……」
「でも緊張はしなくなったろ?」
「あっ……」
気が付いたようだ。クレアの手の震えは気が付けば収まっていた。
「もしかしてそのために?」
「何のことかさっぱり」
「ありがとうございます」
クレアはボソッと俺に向けてお礼をした。
そんなつもりで言ったわけじゃないんだけどね。まあ、本人が緊張しなくなったならそれでいいか。
試合会場に到着すると、他のクラスメイトも緊張している様子だった。
ザイン先生も不安な表情をしている。
だから俺はみんなの緊張を和らげようと口を開く。
「何緊張してんだ。折角相手がいるんだぞ? 日頃のストレス発散をそいつでしてやれ。まあ、反撃してくる的とでも思えばいいさ。気楽にいこうぜ」
「そうじゃぞ。ボコボコにしてやるのじゃ。こう、シュッシュッってのう」
ゼノアは拳でファイティングポーズを取り拳を打ち出していた。
地味にブオンッと言う空気を切り裂くような鈍く重い音がする。
「「「――って、サンドバッグじゃねーからなっ!?」」」
息ぴったりに突っ込まれてしまった。
「まあみんな頑張ろうぜ。目指すは全員が大会出場の切符を手に入れようじゃないか!」
「「「おうっ!」」
こうして俺達の戦いと言う名の試合が始まるのだった。
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