異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

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第2章

第54話:王立魔法学院入学式

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 ──入学式当日。

「制服なんて久しぶりに着たな……」

 俺は学院支給の制服を見てそう呟いた。
 日本の学校制服とは似ているようで違う感じだ。
 そのまま下に降りるとフィアがおり俺に気づいた。

「お兄ちゃんおはよう!」
「おはようフィア」
「それが制服?」
「そうだが、変じゃないか?」

 フィアに俺の制服姿を尋ねる。

「うん! 凄く似合ってるよ!」
「そうか。ありがとう」

 フィアの頭を撫でてやる。
 あ~、癒される。

 そんなフィアの入学式は明日となっている。
 なので、今回は俺たちの入学式を見に来るので、フィリップさんに預ける予定だ。予定とは言っても話は通してある。

「ご主人様よ。先に起きるとはなんなのじゃ。妾も起こして欲しかったのじゃ……」

 そう言ってゼノアが起きてきた。振り向くと、ゼノアは制服に着替えていた。

「似合ってるじゃないか」

 俺の言葉にゼノアは照れたのか、顔を若干赤くした。

「ふ、ふむ。そうじゃろう。妾はなんでも似合うのじゃからな」
「そうかそうか。早く朝食にしよう。入学式に遅れてしまう」
「そうじゃったのう」

 三人で幽霊のアルハが作った朝食を食べ、俺たちは学院に向かった。
 学院に着くのと同時に、一際目立つ馬車が俺たちの前に現れた。この目立つ馬車の正体は王家の馬車だ。
 という事は、乗っている人はフィリップさんとクレアだろう。

 他の新入生達もその馬車を見つめていた。
 そして、護衛の騎士によって馬車の扉が開かれた。

「うむ」
「ありがとうございます」

 そう騎士にお礼を言いながら、フィリップさんとクレアが降りてきた。

 周りの新入生達は現れたフィリップさんとクレアへと注目が集まる。
 そこに、俺とゼノア、フィアの存在に気づいたフィリップさんとクレアが声をかけてきた。

「アキト殿にゼノア殿。それにフィア殿も今来たのか」
「アキトさんにゼノアさん、フィアちゃんもおはようございます」

 俺たちもフィリップさんとクレアの二人に各々返事を返す。

「アキト殿。首席の挨拶楽しみしている。面白い挨拶を期待しているよ」
「私もです」
「……おい。二人とも俺をからかっているのか?」

 そんな俺の話し方に、周りがヒソヒソと話していた。
 聞いてみると。

「あいつ陛下相手にタメ口なんて……」
「そうだ。それにクレア様と親しくしてる」
「それに学院に子供なんて連れてきて……」

 うん。まあ、予想していたかな。

 俺は気にすることなくフィリップさんとクレアの会話を続ける。

「そうだ。フィアの事お願いするよ。引き受けてくれてありがとう」
「なに。気にするな。アキト殿の頼みなら断れないからな」
「助かるよ」

 軽く頭を下げる。

「よしてくれ。アキト殿らしくない。おっと。早く行かないと遅れるぞ?」
「そうだな。フィア。フィリップさんの言うことを聞くんだぞ?」

 そうフィアに伝える。

「うん! 任せてお兄ちゃん! フィリップおじさんお願いしますなの!」

 胸を張ってそう返事をしたフィアは、フィリップさんに頭を下げた。

「それじゃフィアをよろしく頼む」
「任せてくれ。しっかりと守っておこう」
「悪いな。それじゃ先に行くよ」
「私もご一緒に」

 そう言ってクレアも横に来る。

「お兄ちゃんにゼノアお姉ちゃん頑張ってなの!」
「おうをフィアもいい子でな」
「行ってくるのじゃ!」

 俺とゼノア、クレアはフィアの頭を撫で、入学式の会場に向かった。

 席の位置を張り紙で確認した俺たちは席に着き、始まった。
 それから順調に進んでいった。

「それでは新入生首席代表の挨拶です」
「はい」

 俺は立ち上がりステージに上がった。紙もなんも持ってきていない。そもそもこの世界にはそういった事は行わないとクレアから聞いた。
 深く深呼吸をした俺は口を開いた。

「このような良い天気と共に、私たちはこの王立魔法学院の入学式を迎える事が出来ました。
 本日は、このような立派な入学式を行っていただき、ありがとうございます」

 ここで一呼吸置いた俺は続けた。

「保護者の皆様も、この度は御足労いただきありがとうございます。無事入学出来るか不安になった方もいるでしょう。
 ですが、努力が認められ私たちは今、この場に来ております。

 私は貴族では無く一般の出です。こんな一般人の出ではありますが、皆さんと仲良く出来たらと思っております。

 校長先生をはじめとする、諸先生方、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
 新入生代表、アキト」

 俺は一礼をする。
 拍手が終わり俺は席に着いた。

 するとクレアが小声で話しかけて来た。

「もっと適当かと思いました」
「失礼な。このくらいの定型文くらいは出来るさ」
「はははっ」

 何故か苦笑いするクレア。

「続きましては国王陛下からの挨拶となります」

 その言葉を合図にフィリップさんがステージに上がった。そして、周りを見渡し最後に俺らの方を見て笑みを浮かべてから、フィリップさんは口を開いた。

「新入生諸君入学おめでとう」

 そう切り出してから、フィリップさんは定型文である挨拶をする。

「この学院は貴族等といった身分は関係ない。そして、身分関係なく友達を作って魔法や勉学で競い合って欲しい。まあ、一人、いや、二人ほど化け物が混ざっておるがそれは別にいいだろう。改めて、王立魔法学院入学おめでとう。以上だ」

 おい待て。それ俺とゼノアの事じゃねーか!
 何言ってるんだよ!?

 ステージを降りるフィリップさんと目が合うと、ニヤッと笑われた。

「あ、アキトさん?」
「完全に俺とゼノアの事だろ……」
「は、ははっ……」

 苦笑いを浮かべるクレアであった。
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