魔力が無いアイツとドラゴン退治に行きます。

ドラゴンボム

第24話：最強の覚醒

ミノタウロス・アトラーヴは暗黒騎士団の猛攻を受け、巨体を震わせながら後退を余儀なくされていた。しかし、次の瞬間、ミノタウロス・アトラーヴの体が不気味な赤黒い光を放ち始めた。彼の全身がまるで灼熱の炎に包まれたかのように赤く輝き、角は鋭く長く伸び、両腕の筋肉はさらに膨張した。目は真紅の光を宿し、その瞳には獰猛な輝きが戻っていた。

巨体から発せられるオーラは、まるで戦場そのものを圧倒するようだった。ミノタウロス・アトラーヴが再び斧を振りかざすと、地面は激しく揺れ、地割れが広がった。衝撃波で周囲の兵士たちは吹き飛ばされ、戦場には絶叫が響き渡った。その一撃は、空間さえも切り裂くほどの威力を持ち、数十メートル先の障害物までも粉砕していた。

「まさか…進化するとはな」とルクスは驚きの表情を浮かべたが、その目には興奮の色が見え隠れしていた。

しかし、レオンティウスは逆に不敵な笑みを浮かべ、目の前のミノタウロス・アトラーヴを見据えた。「ようやく、面白くなってきたじゃないか」と、彼の口からはまるで楽しんでいるかのような声が漏れた。

レオンティウスは振り向きざまにルクスを呼び、「ルクス、行くぞ！」と鋭い声で命じた。ルクスはすぐに彼の横に並び立った。

「バルドゥス、アゼル、ミア、グロリア、ガルディオス！お前たちは他の敵兵を一掃しろ！」とレオンティウスが命令を下すと、暗黒騎士団のメンバーは即座に行動を開始した。

バルドゥスは巨体を揺らしながら大剣を振り下ろし、敵兵を一撃で両断した。アゼルは双剣を駆使して素早く敵の背後に回り、次々と致命傷を与えた。ミアは魔駆馬を猛スピードで駆け抜け、追尾弾を撃ち込んで敵を狙撃した。グロリアは影の中から現れ、黒豹を召喚して敵兵を引き裂いた。ガルディオスは岩のゴーレムを操り、敵兵を押しつぶすかのように突進させた。

戦場全体が暗黒騎士団の突撃によって混乱に陥り、敵兵たちは恐怖に駆られて逃げ惑うことしかできなかった。

ルクスは馬から飛び降り、大剣を両手で握りしめ、全身の力を解放するように集中した。身体中に走る力の波動が高まり、瞳は鋭く光り始めた。彼の姿は、まるで戦神のごとく堂々としていた。

レオンティウスもまた魔駆馬から降り、手に持つ青白く輝く魔剣をゆっくりと掲げた。「さあ、見せてみろ、お前の力を」と彼は小さく呟き、ミノタウロス・アトラーヴに向かって一歩踏み出した。

ミノタウロス・アトラーヴは怒りの咆哮を上げながら、巨大な斧を二人に向かって振り下ろした。斧は恐ろしい速度で落ち、地面が震えるほどの衝撃波が発生した。しかし、ルクスはその一撃を紙一重でかわし、鋭い一閃を放った。大剣はミノタウロス・アトラーヴの脚部を切り裂き、巨体が一瞬揺らいだ。

レオンティウスはその隙を見逃さず、手から魔弾を連続で放った。魔弾はミノタウロス・アトラーヴの胸に直撃し、赤黒い体を燃え上がらせた。それでも、ミノタウロス・アトラーヴは倒れず、再び斧を振り回しながら二人に襲いかかってきた。

「まだまだだ！」とルクスは叫び、敵の攻撃を受け流しながらさらに強烈な斬撃を繰り出した。大剣はミノタウロス・アトラーヴの右腕を切り裂き、赤黒い血が噴き出した。それでも、巨獣は戦意を失わず、なおも執拗に襲いかかる。

レオンティウスは満足そうに笑い、「面白い。ならば、終わりにしてやる」と宣言した。青白く輝く魔剣を大きく振りかぶり、ルクスと一瞬だけ目を合わせた。ルクスはその合図を理解し、全力で跳躍した。

「これで決める…！」とルクスが叫び、力強い斬撃をミノタウロス・アトラーヴの首元に叩き込んだ。大剣の一撃は重く、鋭く、確実に致命的だった。ミノタウロス・アトラーヴの首がそのまま落ち、巨体が砂漠の地面に崩れ落ちた。

ミノタウロス・アトラーヴを討ち取った瞬間、レオンティウスとルクスは互いに無言のまま目を合わせた。彼らはすぐに視線をジャハード城へと向け、一瞬の躊躇もなく突撃を開始した。

「全力で行け！」とレオンティウスが叫び、青白く輝く魔剣を再び振りかざした。彼の攻撃は城壁を次々と打ち破り、ルクスも大剣を振るって敵兵をなぎ倒しながら進んでいった。 

暗黒騎士団の他のメンバーもすぐに合流し、それぞれが圧倒的な戦力を発揮して城内を破壊しながら突き進んだ。バルドゥスは大剣を振り回し、アゼルは双剣を交差させて敵を斬り伏せ、ミアは追尾弾を連射して敵を倒した。グロリアは影から現れ、ガルディオスは岩のゴーレムで城壁を崩壊させた。

ジャハード城の城主もまた暗黒騎士団に対抗しようと最後の抵抗を試みたが、レオンティウスの魔剣による一撃で倒された。城は完全に制圧され、暗黒騎士団は戦場において圧倒的な力を示した。


ジャハード城を完全に制圧した後、暗黒騎士団は戦場の片隅に集まり、勝利を祝うかのように休息を取っていた。砂漠の夜風が吹き、戦闘の熱気が少しずつ冷めていく。広場の真ん中には簡素なテーブルが設けられ、各自が持参した食糧を広げていた。

「これが、今夜のご馳走か」とバルドゥスが大きな肉の塊を手に持ち、満足げに笑った。彼の隣にはアゼルが腰を下ろし、焼きたてのパンを口に運んでいた。

「やれやれ、今日の戦いは骨が折れたな」とアゼルは軽く肩をすくめながら言った。「だが、これでようやく一息つける。」

「アゼル、君の動きは相変わらず速かったわね」と、ミアが感心したように言いながら、ワインを口に含んだ。彼女は深紅の魔駆馬を脇に寄せ、楽しげに笑っていた。

グロリアは影を使って召喚した黒豹を撫でながら、ルクスに向かってにっこり微笑んだ。「ルクス、今日の君も相変わらずだったわね。あんなに果敢に戦うなんて…本当にすごい。」

ルクスは照れくさそうに顔を背け、「いや、みんながいたからだ」と短く答えた。彼の表情は少し柔らかくなり、目の前のスープを静かにすくって飲んだ。

レオンティウスは一同を見渡し、口元に微笑を浮かべた。「よくやった、皆の者。これが暗黒騎士団の力だ。そして、これからも…世界を変えていく力となるだろう。」

「乾杯！」とバルドゥスが声を上げ、全員が笑顔で杯を掲げた。

笑い声が響く中、彼らはまるで普通の仲間同士のように和やかな時間を過ごしていた。敵を倒した後の安息のひととき、それは暗黒騎士団にとって、束の間の平和の象徴でもあった。 

戦場の恐怖はどこかへ消え、満天の星空の下で、彼らはしばしの間だけ戦いを忘れ、友情を分かち合っていた――それは、後に続く過酷な戦いを前にした、かけがえのない瞬間だった。

この戦いをきっかけに、暗黒騎士団は他国にとって「恐怖の軍団」として名を轟かせることとなった。彼らの圧倒的な力と残酷な戦術は、すべての国々に恐怖と戦慄を植え付けた。

ルクスはその光景を見つめながら、深い満足感を覚える一方で、どこか虚しさも感じていた。「これが…俺たちの進むべき道だったのか」と心の中で自問する日々だった。