魔力が無いアイツとドラゴン退治に行きます。

ドラゴンボム

第22話：協会の塔へ

ルクスは食事を終えた後、しばらく戦場の様子をうかがっていた。そして、ふと周囲を見渡すと、近くに高い建物があることに気づいた。それは、古い協会の塔だった。

「そこだな…」とルクスは小さく呟き、歩き出そうとした。

「どこに行くの？」とリリアが疑問の声を上げ、彼の腕を掴んだ。

ルクスは協会の塔を指差して、「あの上からなら戦場が見渡せるからな」と冷静に答えた。

リリアは驚いた表情を浮かべ、「でも、それって命令違反なんだけど？」と注意した。

しかし、ルクスは淡々とした口調で、「じゃあ、残れよ。俺は行く」と言い放ち、再び歩き出そうとする。

リリアは少し困ったように眉をひそめ、「う～ん、仕方ないわね。ついていこう」と言って笑顔を浮かべた。

「…まったく、お前ってやつは」とルクスは小さく笑みを浮かべながら、リリアと共に協会の最上階に向かうことにした。

二人は石造りの階段を駆け上がり、協会の最上階にたどり着いた。そこは小さなバルコニーのような場所で、辺り一面を見渡せる見晴らしの良い場所だった。

リリアとルクスは風に吹かれながら、広がる城下町を見下ろした。眼下には、あちこちに広がる戦場の様子がはっきりと見えた。家屋はところどころで破壊され、煙が立ち上っている。市民たちは避難する姿が見え、戦場となった街は混乱と不安の中にあった。

瓦礫が散乱する中で、騎士たちが戦闘態勢を取っているのが見えた。しかし、中央広場で眠っている赤いドラゴンは、依然として目覚めておらず、戦場に大きな動きはない。だが、その沈黙が不気味なほどに感じられた。

空には、沈みかけた太陽が赤く染まり、戦場に独特な陰影をもたらしていた。太陽の最後の光が戦場を血の色に染め、赤いドラゴンの姿と交差するように輝いていた。

「奇妙な静けさだな…」とルクスが呟いた。

「うん…」とリリアも頷きながら、彼の隣に立った。二人はしばらく無言で戦場を見つめ、胸の奥でこれからの戦いへの覚悟を新たにしていた。

そして、気づけば二人の距離が少しずつ縮まっていた。ルクスはちらりとリリアを横目で見た。彼女の顔は夕陽に照らされ、柔らかく美しい輪郭が際立っていた。

リリアもまた、ルクスの横顔をちらっと見て、「本当に変な奴ね…」と小さく呟いた。

「何か言ったか？」とルクスが問いかける。

「何でもないわ。ただ、あなたが信じられる人だって、思っただけ」とリリアは微笑みながら言った。

二人は少しだけ照れくさそうにしながらも、その瞬間に互いを意識し始めていることを感じていた。