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ドラゴンボム

第21話:最強の騎士団の到着

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リリアとルクスが静かに食事を取っている最中、中央広場に轟音が響き渡った。それは、**煌焔騎士団**の到着を告げる音だった。彼らの装備は豪華な鎧で統一され、燃え上がるような赤と金の色彩が特徴だった。その堂々たる姿は、まさに「最強」と呼ぶにふさわしい威容を放っていた。

「すごい…」とリリアは思わず呟いた。煌焔騎士団は、ただの騎士団ではなく、国中から選ばれた精鋭中の精鋭たちだった。その統率の取れた動きと圧倒的な存在感に、リリアも思わず見入ってしまった。

突然、その中から一人の若者がリリアに近づいてきた。彼は煌びやかな鎧に身を包み、若いながらも威厳を持ち合わせている。彼の名はリュカ・ファルダン、王族の一人であり、煌焔騎士団の有力なメンバーの一人だった。

「リリア、久しぶりだな」とリュカは軽く微笑みながら言った。「お前がここにいるとは思わなかったが、ちょうどいい。俺と一緒に来い。特等席でドラゴン退治を見せてやるよ。」

リリアはその申し出に戸惑い、すぐに「ごめんなさい、私はここでの任務があるから」と断ろうとした。しかし、リュカは笑顔を崩さないままリリアの腕を掴み、強引に連れて行こうとした。

「やめてください!」とリリアは嫌がり、必死に抵抗した。

その瞬間、ルクスが立ち上がり、リュカの腕を掴んだ。「彼女は俺のパートナーだ」と、低く強い声で言い放ち、リュカの手を振りほどいた。

リュカは驚き、怒りを込めて睨みつけた。「俺は煌焔騎士団の一員であり、王族だぞ!そんな態度を取っていいと思っているのか?」

ルクスは鼻で笑い、あくまで無視した。その態度にリュカは激昂し、拳を振り上げた。「いいだろう…!」と叫び、ルクスの顔を狙って殴りかかった。

しかし、ルクスは避けることなく、わざとその拳を受けた。だが、彼は殴られる方向に顔を向け、膝を柔らかく使って衝撃を吸収し、自ら飛んで吹き飛ばされたように見せた。

「ルクス!」とリリアはすぐに駆け寄り、「大丈夫?」と心配そうに尋ねた。そして、リュカに向かって冷たい目で言った。「暴力を使う人は、嫌いです。」

リュカはその言葉に一瞬言葉を失ったが、何か言い返そうと口を開けた。しかし、リリアのまっすぐな視線に耐えきれず、悔しそうな顔を浮かべてその場を去った。

リュカが去った後、リリアはルクスに向き直り、「わざと殴られたでしょ」と言った。

「ばれたか」とルクスは苦笑しながら立ち上がった。

リリアは少し微笑んで、「ありがとう」と小さな声で礼を言った。

その瞬間、二人の間には微妙な空気が流れた。お互いに意識し始める何かが心の中に生まれ、戦場の騒がしさの中で、静かな一瞬が二人の間に広がった。

「さあ、行こうか」とルクスが言うと、リリアも小さく頷き、再び戦闘に備えるための準備を始めた。
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