魔力が無いアイツとドラゴン退治に行きます。

ドラゴンボム

第8話：共闘の決意

リリアは魔駆馬をさらに加速させ、瓦礫の散らばる王都を駆け抜けた。
後席にいるルクスは激しい揺れに耐えながらも、しっかりとリリアの腰に掴まっていた。
二人の間には依然として不信感が漂っていたが、今はドラゴンの成獣化を防ぐことが最優先だった。

「必ず食い止める…！」リリアは心の中で強く誓い、魔駆馬のスピードを限界まで引き上げた。
青白い魔力の光が排気口から噴き出し、重低音のエンジン音が王都の混乱に響き渡った。

城下に近づくにつれ、リリアとルクスは異様な光景を目にした。
巨大な赤いドラゴンが空を飛び回り、鋭い爪で建物を破壊しながら人々を次々と襲っていた。
逃げ遅れた市民たちが絶望的な悲鳴を上げ、ドラゴンに丸呑みにされる様子が彼らの目に映る。

リリアはその惨状に怒りを感じ、剣を強く握りしめた。

「こんなこと、絶対に許せない…！」

ルクスも冷静な目でその光景を見つめ、

「成獣になる前に倒さないと…手遅れになる」

「わかっているわ！」

リリアは短く応じ、さらに魔駆馬の速度を上げた。

リリアとルクスは、目の前に広がる混沌を振り切るように、まっすぐドラゴンのもとへと向かった。
彼らの背後では、団長ガウスと星刻騎士団の騎士たちが魔駆馬で駆けつけ、人々の避難を開始していた。
ガウスは鋭い声で命じる。

「市民の避難を最優先！星刻団は城下の北から南へ向かって全力で援護しろ！」

騎士たちは一糸乱れぬ動きで展開し、まるで王都を守る鋼鉄の壁のように広がった。
魔駆馬たちは猛スピードで通りを駆け抜け、瓦礫を跳び越え、炎の中を突き進む。
星刻騎士団は、炎に包まれた街の中で次々と市民を救助し、無事な場所へと導いていく。

「リリア、ルクス、早く行け！ドラゴンを成獣化させるな！」

「了解！」

リリアは背後にルクスを乗せたまま、全速力でドラゴンのもとへと進んだ。
魔駆馬の轟音が混乱の中で響き、リリアとルクスはあらゆる障害を乗り越えて前進する。


炎の中を駆け抜ける魔駆馬のスピードは限界に達し、リリアは狭い路地や破壊された建物の間を、まるで獣のような俊敏さで突き進んでいく。
彼女の操縦技術は一流であり、ルクスもそれに驚きを隠せなかった。

「お前、本当にすごいな」

「今は褒めてる場合じゃないでしょ！」

リリアは即座に応じたが、その言葉には少しの誇りが込められていた。

彼らは互いに不信感を抱きながらも、目標は同じだった。二人の目には、赤いドラゴンを倒し、王都を守るという強い決意が宿っている。 

「行くぞ…あのドラゴンを止める」

「ええ、全力でね！」

リリアが応じ、魔駆馬は再び轟音を立てて加速した。

炎と混乱の中、リリアとルクスはまるで一つの意志を持つように動き、戦場へと突き進んでいった。
その姿は、混沌に立ち向かうために集まった鋼鉄の戦士たちのようだった。