魔力が無いアイツとドラゴン退治に行きます。

ドラゴンボム

第4話：赤いドラゴンの誕生

突如として、爆発の炎の中心から何かが蠢き出すような気配が感じられた。
リリアの視線が火柱に集中する中、巨大な赤い影が炎の中から姿を現した。
それは圧倒的な存在感を放つ赤いドラゴンであった。

ドラゴンの全身は燃えるような赤色に染まり、うろこ一枚一枚がまるで溶岩のように輝いている。
その体躯は圧倒的な大きさで、王都の建物を容易に覆い尽くすほどの巨大さを持つ。
ドラゴンは大きな口を開け、凄まじい轟音を発するように吠えた。
その咆哮は空を裂き、地面を揺るがし、周囲の空気を震わせる。
リリアはその神々しい光景に一瞬圧倒され、口元に驚きの息が漏れる。

ドラゴンの目は燃えさかる火のような赤い輝きを放ち、その瞳に込められた視線は人間など眼中にないとでも言わんばかりの冷徹さを宿していた。
その鋭い爪はまるで大地を引き裂くために作られたかのように見え、その巨大な翼が一度広げられると、まるで空全体を覆い尽くすかのような錯覚を与える。翼からは赤い炎のような魔力の波動がほとばしり、周囲の空気を焦がすような熱気を帯びていた。

ドラゴンはその翼を一気に広げると、重厚な風の音とともに一気に空へと飛び立った。
空気を引き裂くような音が響き渡り、巨大な体躯が上空に浮かび上がる。
その神々しさと暴力的な存在感は、見る者すべてに恐怖と畏怖を抱かせる圧倒的なものであった。
リリアはその威圧感に晒され、一瞬だけ身体が硬直する。
彼女は思わず後退しそうになるが、すぐに自分の恐れを振り払うようにして剣を握り直し、戦闘態勢を整えた。

「こんなものが…生まれたなんて…！」

リリアは内心で驚愕しつつも、目の前の敵に立ち向かおうとする決意を込めた。
しかし、ドラゴンの絶対的な威圧感に、彼女の体は震えを抑えられない。

レオンティウス・ヴァンヘルムは、満足そうに微笑みを浮かべた。
彼の微笑みには冷たさとともに、どこか優雅ささえ感じさせる余裕があった。
燃え盛る炎と赤いドラゴンを背に立つその姿は、まるで悪魔に支配されし王のような威厳と品格に満ちていた。
彼は動じることなく、上品な仕草で肩にかかった金髪を軽く払いのけると、ドラゴンに向かって冷静に視線を送る。

その瞬間、黄金の鷲が空から彼のもとに降り立った。
羽根は太陽に照らされて輝き、その存在自体が神聖な光を放つようであった。
レオンティウスは何のためらいもなく鷲の背に乗り、その姿勢さえも洗練されたものであった。
彼は品格を保ちながらも、強大な力を操る者としての威厳を見せつけるように、周囲に漂う魔力の波動を放っている。

レオンティウスはリリアに一瞥をくれることなく、黄金の鷲を操って空高く舞い上がる。
彼の背筋はまっすぐに伸び、動きには一切の無駄がなかった。
鷲の翼が風を切り裂き、レオンティウスはドラゴンの後を追うようにして、さらに高く空へと飛翔した。

その完璧な姿勢と品格、そして圧倒的な魔力を前に、リリアはただ唖然とするしかなかった。