KAKERU 世界を震撼させろ

福澤賢二郎

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駆の章

初試合

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《空山隆之介》
俺は左サイドバックに入った。
残り十五分。
結果を出さないと終わりだ。
俺のマークはワカソだ。
走るのが速いし、ボールコントロールも素晴らしい。
前を向かした状態でボールを取らせてはいけない。
俺はワカソに密着するのではなく、少し離れてマークした。
ワカソへパスが来る。
俺はダッシュしてボールをカットする。
そして、素早く前線のフォワードの大海信吾へパスを供給した。
大海は前を向いた状態でトラップして一気に前に駆ける。
「カウンターだ。攻めろ!」
中盤も前に詰めて行く。
大海はドリブルで一人をかわして横にボールを流す。
ミッドフィルダーの柴咲がフリーで受け取り、シュート。
キーパーが弾き、敵のディフェンダーがそのまま、ワカソへボールを供給した。
ワカソは一気にトップギアに入れて日本ゴールに攻め寄せてくる。
「日本人はなんてノロマなんだ。楽勝だ」
俺は奴が何を言っているかわかった。
駆けた。
俺も伊達に走り込んじゃいない。
ワカソに追い付く。
「お、お前、俺様について来れるのか」
「いや、追い抜いてボールを取る」
ワカソの足からボールが離れた瞬間に体を入れてボールを奪い、横の味方のディフェンダーにボールを流した。
それを大きく前に蹴りだす。
スタジオから歓声が沸く。
ワカソが俺の方に来る。
「お前、なかなかやるな」
「サンキュー」

日本が再びボールを持つ。
俺は前に上がるが、パスが来ない。
明らかにフリーでチャンスになる場面でもだ。
キャプテンの柴咲に詰め寄った。
「なんでパスをくれないですか」
「なんで大事なボールをお前に預けないといけないんだ。そこまで努力をしてきたのか?信頼関係を築いてきたか?金に物を言わせてその背番号を買ったんだろ」
「わかりました」
ベンチを見ると一人の女性が柴咲に向かって怒っているのが見えた。
あれ? 里帆じゃないか。

とにかく、自分で切り開くしかない。
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