白衣の騎士

福澤賢二郎

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25 屈辱

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《西島翔太》
俺は帝都医大で午前中の外来を終えて、食堂に
来た。
もう、昼も過ぎて人はまばら。
カレーライスをとって席についた。
ここのカレーはコクがあって本当に美味しいんだ。
その時、目の前に誰かが座った。
びっくり、小笠原沙織だ。
それも怒りの形相。
「な、なあ、何か用ですか。そんなに睨まれるとご飯が食べれないんだけど」
「あんた、西都にアルバイトへ行ってるんだよね」
「そうです」
「西都では何が起きてる?」
「意味がわかりませんが」
「今回の佐藤さんの件も絶対に成功するはずがない。それを成功させたの。これで、帝都では助からないと判断した案件が四件とも成功させたの。何かある。教えなさい」
「自分で西都に行って聞いてくれば良いのではないですか?」
「そんな事、出来る訳ない。私は帝都の医師だもの」
「格下には聞けないってわけだ。さすが、天才」
「な、何、突然、ムカつく。三流が」
「一つ、教えますよ。手術した医師は小松という若い女医です。あなたより医師として上だ」
「あり得ない」
「今度、一緒に行きますか?俺の仕事を確認するという名目で」
「まあ、それなら」
「じゃあ、俺にお願いしますと言ってくれます?」
「な、なんで私が三流に頭を下げないといけないの。出来るわけない」
「じゃあ、この話は無かったという事で」
俺はカレー食べ始めた。
小笠原は拳を震わせていた。
「お願い、します、なんて言うわけない」
「はい、了解。じゃあ、また」
「くたばれ」
小笠原は立ち上がり、早足で歩き去った。
俺はニヤリと笑ってしまう。
「慌てなくても会えるさ」
午後からは事務処理をしないといけないな。

《石川憲治》
石川は屋上でタバコを吹かしていた。
そこへ小笠原が怒りの形相でやってくる。
石川は思わず笑ってしまった。
「な、何がおかしいの!」
「悪い、悪い。それで西都へ行けるようになったのか?」
「行くわけない。あの三流は生意気なの」
「西都では何が起きているんだろうな」
白い雲が速く流れていく。
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