白衣の騎士

福澤賢二郎

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19無残

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《西島翔太》
カンファレンス終了後、小松七菜と共に佐藤梨沙子の病室を訪ねた。
佐藤梨沙子は俺の顔を見ると少し驚いた様子をした後に笑顔になった。
「西島先生、この病院にも勤務されていたんですね」
「そうなんです。アルバイトみたいなもんです」
「だから、小松先生を紹介してくれたんですね」
「そうです。帝都大では出来ない手術でもここなら出来ますから」
「本当にありがとうございます。私、まだ、希望を持って生きています。小松先生に出会えたから」
佐藤梨沙子は小松七菜を見て微笑んだ。
小松七菜も微笑んで頷く。
たぶん、小松はこれから凄惨な状態になる事を知らない。
そんな小松七菜と佐藤梨沙子を見ると辛くなった。

もし、子供を産めるところまで生かしたなら俺がなんとかすしてやる。

《小松七菜》
小松七菜は西島翔太と共に病室を出て、屋上に向かった。
「西島さん、頑張るから」
「簡単じゃないぞ」
「うん、わかっている」
青い空を眺めると、白い雲が流れていく。
頭に手を軽く乗せられてポンポンとされた。
西島翔太を見ると優しく微笑んでいる。
「お前は良い医者になれるよ」
胸がキュンと締め付けられる。

わたし、西島翔太が好き。
胸が破裂しそうだよ。

西島翔太は振り返り、歩き出した。
「戻るぞ」
「あっ、はい」
小松七菜は追いかける様に少しだけ駆ける。

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