白衣の騎士

福澤賢二郎

文字の大きさ
上 下
16 / 29

15.青峰祥永

しおりを挟む
《俺》
焼き鳥の火の鳥へ入る。
中は多くの人で賑わい、焼き鳥の香ばしい匂いが漂っていた。
その中で見回して真祐を探した。
奥のテーブルに真祐を見つけたが、正面に男が座っている。
背中しか見えないから誰かわからない。
真祐がこちらに気づいて、手を振る。
「翔にぃー、こっちだよ」
真っ赤な顔だ。
俺は真祐の隣に座る。
目の前には不服そうな青峰祥永が座っている。
「三流、何で来たんだよ」
「俺もあんたがいると知っていれば来ないさ」
「もう、二人とも仲良くする」
「酔ってんのかよ」
「少しね」
笑顔で俺を見る。何故か胸が締め付けられる。
妹だ、妹だ。と何度も言い聞かせながら、そっぽを向く。
「おい、何か飲むか?」
「俺はウーロン茶で」
「飲まないのか?」
「あんたこそ」
たぶん、俺と同じだ。帝都医大から呼ばれても対応できる様に飲まないと思う。
「おまえ、本当に三流か?」
「いや、こいつが三流だ」
隣でうとうとする真祐を見る。
「まあ、良いじゃないか。可愛いからな」
「ふん、そうかね」
青峰祥永は店員を読んで俺の分の飲み物と焼き鳥の盛り合わせを頼む。
こいつ、意外と良い奴かもな。
「これから、三流と呼ぶのは止める」
「何で?」
「手術の腕前は知らないが、お前の外来での診断は一流だ」
「わぁ、やめろ、やめろ。帝都の奴に誉められるなんて居心地が悪い」
「西島、今夜はアルコール無しで飲もう」
「天才外科医の青峰の自慢話でも聞いてやるよ」
「有りすぎて帰れなくなるぞ」
「それは困る。適当にしといてくれ」
俺達は青峰の自慢話と帝都医大での葛藤を聞いた。
その横で真祐はすやすやと寝ている。

人を呼んどいて寝るとは。

俺は真祐を背負って帰る。
昔を思い出していた。
公園で遊び疲れて家に帰るまでに疲れたと泣き出す。
仕方なく真祐を背負って帰った。
背中から夕日が当たり、影が道に伸びていた。

あの時は幸せだった。

しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

わかりあえない、わかれたい・11

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

悪魔の初恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

アムリタ

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:3

子宮筋腫と診断されまして。《12/23 完結》

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:42

緊張と興奮の王女ユフィー完成QⅣ4

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...