機兵大戦

福澤賢二郎

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撤退7

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黒い機兵《黒王》は刀を抜き、降り下ろす。

物凄い速く強い剣激だが、それに負けない強さで《白王》が、グレートロングソードを放つ。

刀と剣がぶつかり、火花が激しく飛ぶ。

「お前の名前は?」

「ノブナガだ。お前は?」

「織田信長だ。東の王が継ぐ名前だ」

「信長? ノブナガ? 俺と同じ?」

「お前は私の従兄だ。ただ、お前は先代の負け犬の息子で、俺は信長の名を継ぐ唯一の後継者だ」

「意味がわからない」

「馬鹿か? お前の父が真の王の器であれば、お前が信長となっていた」

「俺の父は王だった?」


「そうだ」

「じゃあ、何故、?」

「私の父がお前の父を追放した。国民を裏切った容疑者として」

「なんで」

「王の器ではないからだ。信長は俺だけで十分。死ね」

黒王と白王は剣を何度も重ねる。
空気と大地が震える。

覚醒した機兵の能力は互角、操手の技量も互角。

両機とも物凄い速さで動き、人知の領域を越えている。

そこに一機の銀色の機兵が現れた。
何となく手が長い。

肩当てには瓢箪の紋章。
左手には女が握られている。

黒王と一旦、距離をとる。
銀の機兵の左手の女はイリアだった。

「信長さま、言われた通りにデルシュタイン軍の頭領を捕まえて来ました」

「イリア、イリアなのか?」

「ノブナカ、逃げろ。アルベルトもデルシュタイン軍も全滅した。もう、勝てない」

「頼む。イリアを離してくれ」

「さあ、どうするかな?」

「なんでもするから」

「わかった。猿、放してやれ」

「承知しました」

銀の機兵はイリアを地面に投げつけた。

イリアは地面に衝突して、バウンドした。
「イリア~」
呼び掛けても動かない。

《白王》を操作してイリアの側へ駆け寄る。

「さあ、憎いだろう。憎しみを持ってかかって来い」

俺はそれどころではない。

《白王》から降りて、イリアを抱き抱える。

「ノブナガか? 真っ暗で何も見えない」

「そうだ。ここにいる」

「私は死ぬのだろうな」

「そんな事はない」

「嘘つき」

「イリア」

「ノブナガ、愛してる」

「俺もだ」

イリアがニッコリと笑い、そのまま、動かなくなった。

「うわああああああああああああああああ」

《黒王》が近づいてくる。
「織田、徳川、武田、伊達、上杉、真田が攻めている。もう西連合は終わりだ。そして、お前もだ」

信長は《黒王》で俺を蹴り飛ばした。
意識が無くなっていく。

もう、どうでも良いや。守るものもない。





 
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