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37: 暗闇の決断
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36: 暗闇の決断
完全に閉じ込められた玉座の間。そこは闇が支配する異様な空間に変わっていた。
周囲には何も見えず、ただ無限に続く暗黒だけが広がっている。
エリオットはその中で倒れ、身体の力は尽き、どこか遠くでドレイクの嘲笑を聞いていた。
「フフフ…愚かな試みだ。こんな薄っぺらい岩盤で私を閉じ込められると思ったのか?」
ドレイクの声が闇の中に響き渡る。
エリオットはその声に応じる力もなく、全身が重く感じられ、立ち上がることすらできなかった。
疲労が彼の身体を覆い尽くし、視界は暗闇に飲まれていた。
意識が遠のき、彼の心は次第に虚ろな世界に沈んでいった。
「この闇を突き破り、外へ出ることなど私には容易いことだ。そして、お前の大切な人々も全て…私の手で消し去ってやる!」
ドレイクの言葉に、エリオットの胸に鋭い痛みが走った。
しかし、彼は動けなかった。
アリアを守りたい、皆を救いたい…その願いは強く残っていたが、身体はそれに応じることができなかった。
「誰か…神様、どうか…僕に力を…」
エリオットは微かな声で祈りを捧げながら、次第に意識が途絶えていった。
その瞬間、闇の中で小さな光が揺らめいた。
それは、スプリンク、フレイム、そしてセレナの3匹のスライムが集まった光だった。
スプリンクが小さな身体を震わせながら、仲間たちに話しかけた。
「このままでは、エリオットも、アリア様も、皆も…助けられないよ…」
フレイムは赤い炎のように身体を揺らしながら、ドレイクの闇の圧倒的な力を感じ取っていた。
「最強体となっても…今のエリオットでは、あの魔王の力には太刀打ちできない。どうにかしないと…」
その時、白いスライムであるセレナが静かに言葉を口にした。
「究極体になれば…あるいは勝てるかもしれない。でも、その場合、私たちはもう戻れないの」
スプリンクとフレイムは驚いてセレナを見つめた。
「究極体…?でも、それじゃあ…」
セレナは静かに頷いた。
「究極体になれば、私たちの存在は消えてしまう。エリオットの体内で私たちは細胞の一部として散り散りになり、それぞれの意識は保てなくなる。そして…エリオット自身も、戻れないかもしれない。究極体の人格に乗っ取られてしまう可能性があるわ」
フレイムが低く唸るように答えた。
「唯我独尊の人格を持つ究極体…それは私たちにとっても未知の存在だ。エリオットを危険にさらすことになる…でも、このままでは皆が死んでしまう」
スプリンクは震えながら言った。
「僕たちはエリオットに助けてもらった。彼を守りたい…でも、こんなリスクをエリオットに背負わせるなんて…」
セレナは一瞬静かに考え込み、そして意を決して言った。
「エリオットは私たちを助けてくれた。そして今、彼は私たちに頼っている。究極体に賭けるしかないわ。これで皆を救えるなら…」
フレイムも頷いた。
「そうだな、エリオットをここで失うわけにはいかない。このまま闇に飲まれるよりも、賭けてみる価値はある」
スプリンクはしばらく考えた後、小さな体で頷き、仲間たちに同意を示した。
「僕もやるよ。エリオットのために…」
三匹のスライムはエリオットの周囲に集まり、彼を包むように光を放った。そして、それぞれが自らの身体を溶け込ませるようにエリオットに融合し始めた。
スプリンク、フレイム、セレナの身体が、エリオットの体の中へと吸い込まれ、細胞の一部となって散り散りに広がっていく。
エリオットの身体が次第に変化していった。全身が銀色に輝き、金属のように硬化し、筋肉は膨張して力強さを増していく。
炎のようなオーラが彼の全身から立ち上り、目には鋭い光が宿った。白い光がその身体を覆い、治癒と魔法無効化の力が彼の身体を包み込む。
そして、完全に変容したエリオットは、まさに究極体へと進化した。
彼の姿は半ば人間の形を保ちながらも、金属の鎧をまとったような硬質な外見を持ち、背中には炎の翼が広がっていた。
その目は冷たく光り、周囲の闇に怯むことはなかった。
究極体となったエリオットの意識はどこか遠く、唯我独尊の人格が浮かび上がっていた。
しかし、その奥底には、エリオット自身の想いが確かに残っていた。
彼は、アリアと仲間たちを守りたいという強い想いを胸に、この究極の力でドレイクに立ち向かう覚悟を決めた。
「ドレイク・ヴェリオン…もうお前の好きにはさせない」
その言葉と共に、エリオットは究極体の力を解き放ち、闇を突き破るべく立ち上がった。
周囲の暗黒は、彼の放つ光によって徐々に押し返され、闇の支配を崩し始めた。
「私を倒せるとでも思うのか…!?」
ドレイクが驚愕と共に叫んだが、エリオットの目には迷いはなかった。
究極体の力を完全に引き出し、この最後の戦いに全てを賭ける覚悟がそこにあった。
完全に閉じ込められた玉座の間。そこは闇が支配する異様な空間に変わっていた。
周囲には何も見えず、ただ無限に続く暗黒だけが広がっている。
エリオットはその中で倒れ、身体の力は尽き、どこか遠くでドレイクの嘲笑を聞いていた。
「フフフ…愚かな試みだ。こんな薄っぺらい岩盤で私を閉じ込められると思ったのか?」
ドレイクの声が闇の中に響き渡る。
エリオットはその声に応じる力もなく、全身が重く感じられ、立ち上がることすらできなかった。
疲労が彼の身体を覆い尽くし、視界は暗闇に飲まれていた。
意識が遠のき、彼の心は次第に虚ろな世界に沈んでいった。
「この闇を突き破り、外へ出ることなど私には容易いことだ。そして、お前の大切な人々も全て…私の手で消し去ってやる!」
ドレイクの言葉に、エリオットの胸に鋭い痛みが走った。
しかし、彼は動けなかった。
アリアを守りたい、皆を救いたい…その願いは強く残っていたが、身体はそれに応じることができなかった。
「誰か…神様、どうか…僕に力を…」
エリオットは微かな声で祈りを捧げながら、次第に意識が途絶えていった。
その瞬間、闇の中で小さな光が揺らめいた。
それは、スプリンク、フレイム、そしてセレナの3匹のスライムが集まった光だった。
スプリンクが小さな身体を震わせながら、仲間たちに話しかけた。
「このままでは、エリオットも、アリア様も、皆も…助けられないよ…」
フレイムは赤い炎のように身体を揺らしながら、ドレイクの闇の圧倒的な力を感じ取っていた。
「最強体となっても…今のエリオットでは、あの魔王の力には太刀打ちできない。どうにかしないと…」
その時、白いスライムであるセレナが静かに言葉を口にした。
「究極体になれば…あるいは勝てるかもしれない。でも、その場合、私たちはもう戻れないの」
スプリンクとフレイムは驚いてセレナを見つめた。
「究極体…?でも、それじゃあ…」
セレナは静かに頷いた。
「究極体になれば、私たちの存在は消えてしまう。エリオットの体内で私たちは細胞の一部として散り散りになり、それぞれの意識は保てなくなる。そして…エリオット自身も、戻れないかもしれない。究極体の人格に乗っ取られてしまう可能性があるわ」
フレイムが低く唸るように答えた。
「唯我独尊の人格を持つ究極体…それは私たちにとっても未知の存在だ。エリオットを危険にさらすことになる…でも、このままでは皆が死んでしまう」
スプリンクは震えながら言った。
「僕たちはエリオットに助けてもらった。彼を守りたい…でも、こんなリスクをエリオットに背負わせるなんて…」
セレナは一瞬静かに考え込み、そして意を決して言った。
「エリオットは私たちを助けてくれた。そして今、彼は私たちに頼っている。究極体に賭けるしかないわ。これで皆を救えるなら…」
フレイムも頷いた。
「そうだな、エリオットをここで失うわけにはいかない。このまま闇に飲まれるよりも、賭けてみる価値はある」
スプリンクはしばらく考えた後、小さな体で頷き、仲間たちに同意を示した。
「僕もやるよ。エリオットのために…」
三匹のスライムはエリオットの周囲に集まり、彼を包むように光を放った。そして、それぞれが自らの身体を溶け込ませるようにエリオットに融合し始めた。
スプリンク、フレイム、セレナの身体が、エリオットの体の中へと吸い込まれ、細胞の一部となって散り散りに広がっていく。
エリオットの身体が次第に変化していった。全身が銀色に輝き、金属のように硬化し、筋肉は膨張して力強さを増していく。
炎のようなオーラが彼の全身から立ち上り、目には鋭い光が宿った。白い光がその身体を覆い、治癒と魔法無効化の力が彼の身体を包み込む。
そして、完全に変容したエリオットは、まさに究極体へと進化した。
彼の姿は半ば人間の形を保ちながらも、金属の鎧をまとったような硬質な外見を持ち、背中には炎の翼が広がっていた。
その目は冷たく光り、周囲の闇に怯むことはなかった。
究極体となったエリオットの意識はどこか遠く、唯我独尊の人格が浮かび上がっていた。
しかし、その奥底には、エリオット自身の想いが確かに残っていた。
彼は、アリアと仲間たちを守りたいという強い想いを胸に、この究極の力でドレイクに立ち向かう覚悟を決めた。
「ドレイク・ヴェリオン…もうお前の好きにはさせない」
その言葉と共に、エリオットは究極体の力を解き放ち、闇を突き破るべく立ち上がった。
周囲の暗黒は、彼の放つ光によって徐々に押し返され、闇の支配を崩し始めた。
「私を倒せるとでも思うのか…!?」
ドレイクが驚愕と共に叫んだが、エリオットの目には迷いはなかった。
究極体の力を完全に引き出し、この最後の戦いに全てを賭ける覚悟がそこにあった。
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