上 下
24 / 42

24: 敵との激闘

しおりを挟む
24: 敵との激闘

敵の攻撃が絶え間なく続く中、エリオットは全身の魔力を集中させて炎の魔術をさらに強く放ち、目の前に迫りくる敵を一掃した。
燃え上がる炎が敵の兵士たちに向かって迸り、何人かの敵を吹き飛ばす。
炎の閃光が庭園を照らし、その瞬間、敵の動きが一瞬止まった。

しかし、敵の数は想像以上に多く、倒れた者たちの隙間から次々と新たな敵が現れる。
その数に圧倒されそうになりながらも、エリオットは決して後退しなかった。
彼の背後には、アリア王女がいたのだ。守るべき存在がいる限り、彼は一歩も引くわけにはいかない。

「まだ終わりじゃない…!」

エリオットは心の中で叫び、自分の中にある全ての力を絞り出した。
彼の手のひらから再び炎が放たれ、まるで怒りに満ちた竜のように轟きながら敵に向かって噴きつけた。
燃え上がる熱気が敵を押し返すが、それでも周囲にはまだ敵が取り囲んでいた。

「ガレス、右側が危険です!」

ミリアの叫び声が聞こえ、エリオットは右側に目を向けた。
そこには再び弓矢を持った敵が矢を引き絞り、王女を狙っていた。
エリオットはすぐに反応し、地魔術を発動して土の槍を地面から突き上げさせ、その敵を突き刺した。

「ナイスだ、エリオット!」

ガレスが叫びながら、彼自身も炎の魔術で敵を押し返していた。
ガレスの炎は巨大で、彼の経験がその炎の扱いに顕著に表れていた。
彼は敵の中心に向けて大きな炎の球を放ち、その爆発が敵の一部を焼き尽くす。

しかし、それでも敵の数は減ることなく、むしろ増援が次々と現れるように思えた。敵は紛争のケリをつける為に全戦力を注いでいる様だ。
エリオットは息を切らしながら、それでも次の魔術を準備していた。
彼は自身の体力が限界に近づいていることを感じつつも、絶対に諦めるつもりはなかった。

「守る…必ず守り抜くんだ!」

彼は再び手を地面に押し付け、地から立ち上る柱で敵を押し返した。
その時、アリアの目がエリオットを見つめていることに気付いた。彼女の目には、エリオットに対する信頼が浮かんでいた。それが彼にとってさらなる力の源になった。

「エリオット!左側の敵を止めてくれ!」

エドガーの声に応じ、エリオットは即座に左に向けて手を掲げた。彼の中にある炎の魔力が再び爆発し、敵の群れに向けて火の弾を放った。火の弾は真っ直ぐに飛び、敵軍の中で大爆発。

「うひょー、すげぇな」

エルガーが感嘆していたが、敵も死ぬ気で攻めてきているため、進軍を止める事が出来たのは僅かな時間だった。
味方の数が圧倒的に少なく、徐々に追い込まれていく。

「後退するな!王女様を囲んで守るんだ!」

ガレスの指示が飛び、護衛メンバーたちは円を描くようにアリアを囲み、その場で敵に対抗する防御線を形成した。
エリオットもその輪の中に加わり、決して敵を王女に近づけないよう、全力で魔術を使い続けた。

敵の攻撃は一瞬たりとも止まらず、矢や魔術が次々と飛び交った。
しかし、エリオットたち護衛チームもまた全力で応じていた。
不思議な事が起きていた。
エリオットの放つ炎が強さを増している。
彼の手から放たれる炎は敵を激しく燃やし尽くす。
そして、地から立ち上る土の壁は王女を守る盾となり、時には敵を押し潰す。
敵も対抗して炎魔法や風魔法で反撃してくるが、エリオットは白の力を発動して、振り払うように無効化していく。

絶体絶命という戦いの中で必ずアリアを守るという強い思いが彼に爆発的な力を覚醒させたかもしれない。

「必ず守るから」

エリオットは再び敵に向かって魔術を繰り出しながら、その言葉を心に刻んだ。
敵は強力で数も多かったが、エリオットには守るべき存在があり、彼の心には決して折れない強い意志が宿っていた。

炎と土の力が次々と敵を打ち倒し、エリオットの奮闘が王女を守る盾となって機能していた。
数に押される状況であっても、彼は先頭に立ち、一歩も引くことなく戦い続ける。
その姿勢は他の護衛たちにとっても大きな励みとなり、全員が力を合わせて敵の攻撃に対抗していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ
ファンタジー
“美少女だね” “可愛いね” “天使みたい” 知ってる。そう言われ続けてきたから。 だけど… “なんだコレは。 こんなモノを私は妻にしなければならないのか” 召喚(誘拐)された世界では平凡だった。 私は言われた言葉を忘れたりはしない。 * さらっとファンタジー系程度 * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

処理中です...