真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

文字の大きさ
上 下
46 / 49
KARTE 6:白石真依

苦しみの果て

しおりを挟む
《白石真依》
真依はマンションで料理を作っていた。
赤城拓哉の事が頭から離れない。
彼の笑顔が見たくて料理を作っている。
時計を見ると六時三十分になる。
もう、赤城が帰ってくる時間だ。
楽しい事を考えていると時間が過ぎるのが早い。
チャイムが鳴った。
インターホーンから彼の声が流れ、モニターには彼の笑顔。
「はーい、今、開けるよ」
白石真依は玄関に行き、鍵を開けようとした。
その時、激しい頭痛。手が震える。足にも力が入らない。
「あ、あ、動けない。た、助けて」
鍵を開ける音が聞こえる。
ドアが開き、赤城拓哉が慌てて入ってくるのが見えた。
「真依さん、大丈夫?しっかり」
倒れそうなところを赤城拓哉が抱き止めた。
「私、死にたくないよ。私、大好きなあなたと一緒にいたい」
「俺が、俺が必ず助ける」
「あなたは私の事、好き?」
「好きだ。失いたくない。だから、生きてくれ」
微笑もうとしたが、上手く出来ない。
そのまま、暗闇へ落ちていく。

《赤城拓哉》
救急車で帝都病院へ向かう。
白石真依の意識レベルは低い。
急がないといけない。このままだど、自発呼吸も出来なくなっていく。
掌を白石真依の額に当てる。

‘’ちちんぷいぷい、痛いところ、ど~こだ?‘’

俺の脳に白石真依の脳内の映像、情報が流れ込んでくる。
意識がぐるぐると脳内を走りまくった。
腫瘍が見える。
CT画像と得られた情報が重なり、見えなかったところが見え始めた。
目の前にあるはずのない脳が浮かんでいる。
そこに光輝く糸のような細い道が伸びていく。

俺に出来るか?
いや、やるしかないだろ。
これこそが彼女を助ける唯一の方法だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

昇れ! 非常階段 シュトルム・ウント・ドランク

皇海宮乃
ライト文芸
三角大学学生寮、男子寮である一刻寮と女子寮である千錦寮。 千錦寮一年、卯野志信は学生生活にも慣れ、充実した日々を送っていた。 年末を控えたある日の昼食時、寮食堂にずらりと貼りだされたのは一刻寮生の名前で……?

一会のためによきことを

平蕾知初雪
ライト文芸
――8月、僕はずっと大好きだった〇〇ちゃんのお葬式に参列しました。 初恋の相手「〇〇ちゃん」が亡くなってからの約1年を書き連ねました。〇〇ちゃんにまつわる思い出と、最近知ったこと、もやもやすること、そして遺された僕・かめぱんと〇〇ちゃんが大好きだった人々のその後など。 〇〇ちゃんの死をきっかけに変わった人間関係、今〇〇ちゃんに想うこと、そして大切な人の死にどう向き合うべきか迷いまくる様子まで、恥ずかしいことも情けないことも全部書いて残しました。 ※今作はエッセイブログ風フィクションとなります。

私の主治医さん - 二人と一匹物語 -

鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。 【本編完結】【小話】 ※小説家になろうでも公開中※

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...