真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE 6:白石真依

苦しみの果て

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《白石真依》
真依はマンションで料理を作っていた。
赤城拓哉の事が頭から離れない。
彼の笑顔が見たくて料理を作っている。
時計を見ると六時三十分になる。
もう、赤城が帰ってくる時間だ。
楽しい事を考えていると時間が過ぎるのが早い。
チャイムが鳴った。
インターホーンから彼の声が流れ、モニターには彼の笑顔。
「はーい、今、開けるよ」
白石真依は玄関に行き、鍵を開けようとした。
その時、激しい頭痛。手が震える。足にも力が入らない。
「あ、あ、動けない。た、助けて」
鍵を開ける音が聞こえる。
ドアが開き、赤城拓哉が慌てて入ってくるのが見えた。
「真依さん、大丈夫?しっかり」
倒れそうなところを赤城拓哉が抱き止めた。
「私、死にたくないよ。私、大好きなあなたと一緒にいたい」
「俺が、俺が必ず助ける」
「あなたは私の事、好き?」
「好きだ。失いたくない。だから、生きてくれ」
微笑もうとしたが、上手く出来ない。
そのまま、暗闇へ落ちていく。

《赤城拓哉》
救急車で帝都病院へ向かう。
白石真依の意識レベルは低い。
急がないといけない。このままだど、自発呼吸も出来なくなっていく。
掌を白石真依の額に当てる。

‘’ちちんぷいぷい、痛いところ、ど~こだ?‘’

俺の脳に白石真依の脳内の映像、情報が流れ込んでくる。
意識がぐるぐると脳内を走りまくった。
腫瘍が見える。
CT画像と得られた情報が重なり、見えなかったところが見え始めた。
目の前にあるはずのない脳が浮かんでいる。
そこに光輝く糸のような細い道が伸びていく。

俺に出来るか?
いや、やるしかないだろ。
これこそが彼女を助ける唯一の方法だ。
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