真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE 5:石垣洋介

バレたか?

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《赤城拓哉》
脳外科の事務所に顔を出してみた。
誰も知り合いはいない。
データベースにアクセスしたい。
どうする?
手前にいる一番若い男性医師に頼んでみよう。
「すみません」
「どうしました?」
「内科の赤城と言います。白石さんのカルテを見させてもらえないでしょうか。重要な案件になります」
「う~ん、少し待っていて下さい。上司に聞いてきますので」
「わかりました」
一番奥に座る黒淵メガネの女医師に聞いている。
何か怒られているようだ。
シュンとして戻って来た。
「駄目です。教授同士で話をつけて下さい」
「わかりました」
やっぱり簡単には見せてくれないよな。
一旦、諦めて内科の事務所に戻った。

内科の事務所の前で石垣洋介が待っていた。
「どうしたんですか?」
「少し良いか?」
「ええ、大丈夫です」
石垣洋介と屋上に上がった。

青い空が広がり、とても気持ちの良い日だ。
洋介に向く。
「先日はありがとうございました」
「いや、こっちこそ」
「今日は何の用でしょうか」
洋介は少し間をあけて話し出した。
「俺は外科医を辞めるよ」
「どうしてですか?」
「自分の限界を感じた。お前に勝てない」
「俺に勝てない?意味がわかりませんが。人を救うのに勝ち負けが必要ですか?」
「えっ?」
「切磋琢磨して技術を磨きあう事は重要だと思いますが、それが辞める理由になる事が理解できない。医療とは人を救う事。勝ち負けじゃない。祖父からその様に教わりました」
「俺はいつも勝つ事しか要求されなかった。良い祖父だな。祖父の名前は?」
「名字は深山です。名前はわかりません」
「深山?どこかで聞いた事がある」
「あるわけ無いですよ。小さな個人医院を離島でやっていただけなんで」
「そうか。あと、お前、医師免許あるよな?」
「もちろんです。あっ、忙しいのでそろそろ」
「ああ、悪かったな。医療に勝ち負けは無い。覚えておくよ。あと、免許の有無も関係ないよな」
俺は動揺を悟られないように会釈をして職場に戻った。
やばい。バレたか?

今夜、藤堂に連絡しておこう。
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