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KARTE 5:石垣洋介
洋介と拓哉
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《柄本》
来た時と同様に赤城拓哉の運転で帰宅している最中だった。
街のネオンが赤城の顔を照らす。
「赤城、お前凄いな。なんで内科医なんだ?」
「ごめん。俺はある人を助けたくて帝都医大に潜り込んだ」
「な、なんだと!」
「だから、内科医だったのは嘘」
「そ、そうなのか」
「ごめん」
それから、暫く沈黙してからだった。
柄本がしゃべりだした。
「俺はお前を誇りに思っている。人を救いたいという事が医療の根底に無ければならない。今日の行為もそれに相応しいと思った」
「ありがとう」
「救いたい人とは誰だ?力になりたい」
「白石真依」
「あ、あのピアニストの白石だよな」
「そうだよ。今、一緒に住んでる」
「な、な、なに!」
「うるさいな」
「今度、会わせろ。な、な、な、約束だぞ!」
「わかったよ」
ジャガーは順調に自宅へ近づいていた。
《石垣洋介》
まだ、帰宅できずにいた。
記者会見がある為だ。
オープンオペの撮影を頼んでいたクルーの一人が救命活動の様子も撮影しており、それがネットにアップされてしまった。
赤城拓哉の行動が美談になってしまっている。
死人が出てもおかしくなかった。
それが死人ゼロで奇跡である。
なんてコメントも追記されている。
石垣総合病院の評価も一気に上昇。
世間は赤城が石垣総合病院の医師だと思っているからだ。
だから、厄介なのだ。
今から石垣総合病院の医師ではなく、帝都医大の医師である事を言う為だ。
どのように伝えるか検討する為に家族と広報部長が第一会議室に集められている。
一番状況を理解出来ている幸太郎と由依が説明をしている。
それを腕を組ながら父である石垣寛貴が聞いていた。
「わかった。ところで、赤城という医師は何者だ?どこであれだけの技術を身につけたのだ?」
誰も解答できない。
「誰も知らんのか。すぐに調べさせろ。普通ではない」
洋介が口を開いた。
「俺、外科医をやめるよ」
父親が睨む。
「なぜだ?」
「赤城に完敗した。勝てる気がしない」
「帝都医大に行き、赤城とやらと話してこい。お前の発言がいかに馬鹿げているかわかるだろう」
洋介は拳を握りしめた。
父は由依を見る。
「由依よ、アイツを私のところへ連れて来い。結婚話を進める」
「な、なんで、そうなるんですか?」
「好きなんだろ」
「えっ」
「好きなのかと聞いている」
「は、はい。好きです。でも、彼の気持ちもある。それに内科医です」
「内科医のわけが無い」
幸太郎が尋ねる。
「メス捌きとかの技術ですか?」
「だから、お前は二流なんだ。アイツの言葉と態度には自信と覚悟がある。外科医として相当な修羅場をこなしてきているはずだ。お前達以上にな。比べる事が間違いなのだ」
石垣寛貴は記者会見の為に立ち上がった。
来た時と同様に赤城拓哉の運転で帰宅している最中だった。
街のネオンが赤城の顔を照らす。
「赤城、お前凄いな。なんで内科医なんだ?」
「ごめん。俺はある人を助けたくて帝都医大に潜り込んだ」
「な、なんだと!」
「だから、内科医だったのは嘘」
「そ、そうなのか」
「ごめん」
それから、暫く沈黙してからだった。
柄本がしゃべりだした。
「俺はお前を誇りに思っている。人を救いたいという事が医療の根底に無ければならない。今日の行為もそれに相応しいと思った」
「ありがとう」
「救いたい人とは誰だ?力になりたい」
「白石真依」
「あ、あのピアニストの白石だよな」
「そうだよ。今、一緒に住んでる」
「な、な、なに!」
「うるさいな」
「今度、会わせろ。な、な、な、約束だぞ!」
「わかったよ」
ジャガーは順調に自宅へ近づいていた。
《石垣洋介》
まだ、帰宅できずにいた。
記者会見がある為だ。
オープンオペの撮影を頼んでいたクルーの一人が救命活動の様子も撮影しており、それがネットにアップされてしまった。
赤城拓哉の行動が美談になってしまっている。
死人が出てもおかしくなかった。
それが死人ゼロで奇跡である。
なんてコメントも追記されている。
石垣総合病院の評価も一気に上昇。
世間は赤城が石垣総合病院の医師だと思っているからだ。
だから、厄介なのだ。
今から石垣総合病院の医師ではなく、帝都医大の医師である事を言う為だ。
どのように伝えるか検討する為に家族と広報部長が第一会議室に集められている。
一番状況を理解出来ている幸太郎と由依が説明をしている。
それを腕を組ながら父である石垣寛貴が聞いていた。
「わかった。ところで、赤城という医師は何者だ?どこであれだけの技術を身につけたのだ?」
誰も解答できない。
「誰も知らんのか。すぐに調べさせろ。普通ではない」
洋介が口を開いた。
「俺、外科医をやめるよ」
父親が睨む。
「なぜだ?」
「赤城に完敗した。勝てる気がしない」
「帝都医大に行き、赤城とやらと話してこい。お前の発言がいかに馬鹿げているかわかるだろう」
洋介は拳を握りしめた。
父は由依を見る。
「由依よ、アイツを私のところへ連れて来い。結婚話を進める」
「な、なんで、そうなるんですか?」
「好きなんだろ」
「えっ」
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「は、はい。好きです。でも、彼の気持ちもある。それに内科医です」
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「メス捌きとかの技術ですか?」
「だから、お前は二流なんだ。アイツの言葉と態度には自信と覚悟がある。外科医として相当な修羅場をこなしてきているはずだ。お前達以上にな。比べる事が間違いなのだ」
石垣寛貴は記者会見の為に立ち上がった。
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