41 / 49
KARTE 5:石垣洋介
洋介と拓哉
しおりを挟む
《柄本》
来た時と同様に赤城拓哉の運転で帰宅している最中だった。
街のネオンが赤城の顔を照らす。
「赤城、お前凄いな。なんで内科医なんだ?」
「ごめん。俺はある人を助けたくて帝都医大に潜り込んだ」
「な、なんだと!」
「だから、内科医だったのは嘘」
「そ、そうなのか」
「ごめん」
それから、暫く沈黙してからだった。
柄本がしゃべりだした。
「俺はお前を誇りに思っている。人を救いたいという事が医療の根底に無ければならない。今日の行為もそれに相応しいと思った」
「ありがとう」
「救いたい人とは誰だ?力になりたい」
「白石真依」
「あ、あのピアニストの白石だよな」
「そうだよ。今、一緒に住んでる」
「な、な、なに!」
「うるさいな」
「今度、会わせろ。な、な、な、約束だぞ!」
「わかったよ」
ジャガーは順調に自宅へ近づいていた。
《石垣洋介》
まだ、帰宅できずにいた。
記者会見がある為だ。
オープンオペの撮影を頼んでいたクルーの一人が救命活動の様子も撮影しており、それがネットにアップされてしまった。
赤城拓哉の行動が美談になってしまっている。
死人が出てもおかしくなかった。
それが死人ゼロで奇跡である。
なんてコメントも追記されている。
石垣総合病院の評価も一気に上昇。
世間は赤城が石垣総合病院の医師だと思っているからだ。
だから、厄介なのだ。
今から石垣総合病院の医師ではなく、帝都医大の医師である事を言う為だ。
どのように伝えるか検討する為に家族と広報部長が第一会議室に集められている。
一番状況を理解出来ている幸太郎と由依が説明をしている。
それを腕を組ながら父である石垣寛貴が聞いていた。
「わかった。ところで、赤城という医師は何者だ?どこであれだけの技術を身につけたのだ?」
誰も解答できない。
「誰も知らんのか。すぐに調べさせろ。普通ではない」
洋介が口を開いた。
「俺、外科医をやめるよ」
父親が睨む。
「なぜだ?」
「赤城に完敗した。勝てる気がしない」
「帝都医大に行き、赤城とやらと話してこい。お前の発言がいかに馬鹿げているかわかるだろう」
洋介は拳を握りしめた。
父は由依を見る。
「由依よ、アイツを私のところへ連れて来い。結婚話を進める」
「な、なんで、そうなるんですか?」
「好きなんだろ」
「えっ」
「好きなのかと聞いている」
「は、はい。好きです。でも、彼の気持ちもある。それに内科医です」
「内科医のわけが無い」
幸太郎が尋ねる。
「メス捌きとかの技術ですか?」
「だから、お前は二流なんだ。アイツの言葉と態度には自信と覚悟がある。外科医として相当な修羅場をこなしてきているはずだ。お前達以上にな。比べる事が間違いなのだ」
石垣寛貴は記者会見の為に立ち上がった。
来た時と同様に赤城拓哉の運転で帰宅している最中だった。
街のネオンが赤城の顔を照らす。
「赤城、お前凄いな。なんで内科医なんだ?」
「ごめん。俺はある人を助けたくて帝都医大に潜り込んだ」
「な、なんだと!」
「だから、内科医だったのは嘘」
「そ、そうなのか」
「ごめん」
それから、暫く沈黙してからだった。
柄本がしゃべりだした。
「俺はお前を誇りに思っている。人を救いたいという事が医療の根底に無ければならない。今日の行為もそれに相応しいと思った」
「ありがとう」
「救いたい人とは誰だ?力になりたい」
「白石真依」
「あ、あのピアニストの白石だよな」
「そうだよ。今、一緒に住んでる」
「な、な、なに!」
「うるさいな」
「今度、会わせろ。な、な、な、約束だぞ!」
「わかったよ」
ジャガーは順調に自宅へ近づいていた。
《石垣洋介》
まだ、帰宅できずにいた。
記者会見がある為だ。
オープンオペの撮影を頼んでいたクルーの一人が救命活動の様子も撮影しており、それがネットにアップされてしまった。
赤城拓哉の行動が美談になってしまっている。
死人が出てもおかしくなかった。
それが死人ゼロで奇跡である。
なんてコメントも追記されている。
石垣総合病院の評価も一気に上昇。
世間は赤城が石垣総合病院の医師だと思っているからだ。
だから、厄介なのだ。
今から石垣総合病院の医師ではなく、帝都医大の医師である事を言う為だ。
どのように伝えるか検討する為に家族と広報部長が第一会議室に集められている。
一番状況を理解出来ている幸太郎と由依が説明をしている。
それを腕を組ながら父である石垣寛貴が聞いていた。
「わかった。ところで、赤城という医師は何者だ?どこであれだけの技術を身につけたのだ?」
誰も解答できない。
「誰も知らんのか。すぐに調べさせろ。普通ではない」
洋介が口を開いた。
「俺、外科医をやめるよ」
父親が睨む。
「なぜだ?」
「赤城に完敗した。勝てる気がしない」
「帝都医大に行き、赤城とやらと話してこい。お前の発言がいかに馬鹿げているかわかるだろう」
洋介は拳を握りしめた。
父は由依を見る。
「由依よ、アイツを私のところへ連れて来い。結婚話を進める」
「な、なんで、そうなるんですか?」
「好きなんだろ」
「えっ」
「好きなのかと聞いている」
「は、はい。好きです。でも、彼の気持ちもある。それに内科医です」
「内科医のわけが無い」
幸太郎が尋ねる。
「メス捌きとかの技術ですか?」
「だから、お前は二流なんだ。アイツの言葉と態度には自信と覚悟がある。外科医として相当な修羅場をこなしてきているはずだ。お前達以上にな。比べる事が間違いなのだ」
石垣寛貴は記者会見の為に立ち上がった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
一会のためによきことを
平蕾知初雪
ライト文芸
――8月、僕はずっと大好きだった〇〇ちゃんのお葬式に参列しました。
初恋の相手「〇〇ちゃん」が亡くなってからの約1年を書き連ねました。〇〇ちゃんにまつわる思い出と、最近知ったこと、もやもやすること、そして遺された僕・かめぱんと〇〇ちゃんが大好きだった人々のその後など。
〇〇ちゃんの死をきっかけに変わった人間関係、今〇〇ちゃんに想うこと、そして大切な人の死にどう向き合うべきか迷いまくる様子まで、恥ずかしいことも情けないことも全部書いて残しました。
※今作はエッセイブログ風フィクションとなります。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
冷たい外科医の心を溶かしたのは
みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。
《あらすじ》
都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。
アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。
ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。
元々ベリカに掲載していました。
昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。
キスで終わる物語
阿波野治
ライト文芸
国木田陽奈子はふとした偶然から、裕福な家庭の少女・小柳真綾と知り合い、小柳家でメイドとして住み込みで働くことになった。厳格なメイド長の琴音や、無口で無愛想なルームメイトの華菜などに囲まれて、戸惑いながらも新生活を送る。そんなある日、陽奈子は何者かから不可解な悪意を向けられ、その人物との対決を余儀なくされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる