真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE 4:紀平咲希

さあ、どうするよ?

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《赤城拓哉》
紀平咲希の手術の日だ。
山谷から招集がかかった。
外科の会議室で手術の方法について最後の説明があった。
「赤城さん、内科には出来る事がないから手術室の外で待ってもらって良いんで」
「わかりました」
何となく、内科がバカにされた気分。
でも、その方が好都合だった。
こいつが失敗する事が容易に想像できていた。
外で準備をしておけば良い。
後は俺が助けてやる。

《石垣洋介》
洋介は妹の由依が言っていた外科医が気になっており、帝都医大に来ていた。
懐かしい。
外科の事務室へ行き、織田裕太を訪ねた。
織田を見つけた。
向こうも洋介に気付いたようだ。
「よっ、織田」
織田は立ち上がり、洋介の方にきた。
「どうしたんですか、石垣先輩」
「由依から優秀な外科医が現れたと聞いたもんでな。どんな面か拝んでおきたいなと思って」
「優秀な外科医は多いですねど」
「最近、来た奴とかいない?」
「いないですよ」
「そうか」
「あっ、ちょうど良かった。今から山谷の倅が難易度Aの手術をしますよ。見に行きますか?」
「山谷? 山谷総合の長男か?」
「そうです。今月で辞めるんですけど、記念に難度Aをやることになったんです」
「そうか。見に行こうか」
洋介は織田と一緒に第一手術室へ向かった。

第一手術室の閲覧室は外科部長の内山と山谷壮介がいた。
山谷壮介は山谷の父親でもあり、総合病院の病院長でもある。
その壮介が振り向いた。
「洋介君じゃないか。今日はどうしたんだい?」
「ちょっと、用事があったついでに見学させてもらおうと思って」
内山外科部長が洋介を見る。
「日本を代表する外科医じゃないか」
「ありがとうございます」
「今日の術式とメンバーを織田から聞きました」
「それで」
「天下の帝都医大も地に堕ちましたね」
「違うな。将来、山谷総合病院を背負って立つ青年が偉業を成す日だ」
「失礼ですが、無理でしょ」
「何が言いたい?」
「失敗した場合は今、手術に望む若い奴らの責任にするんですよね。特に山谷を誇張してライバルの山谷総合病院の評判を落とすのでしょう」
「それはそれで石垣にも悪い事じゃないだろうが」
「優秀な医師の卵を潰す事になる」
山谷壮介が手で洋介を制す。
「洋介君、心配をありがとう。でも、大丈夫。簡単には潰させないよ。さあ、始まる」

数人の医師達が入ってきた。
それぞれの持ち場につく
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