真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE 4:紀平咲希

えっ!なんで?

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《赤城拓哉》
マンションに帰ると鍵が締まっていない。
なぜだ?
俺はゆっくりと扉を開ける。
中の様子を伺う。
誰かいる。
あっ!
白石真依だ。
突然、スマホが鳴る。
その音で白石真依も俺に気づいた。
電話は藤堂からだ。
「もしもし」
(藤堂だ)
「藤堂さんよ、なぜ、白石さんが俺のマンションにいる?」
(俺の?ちがうだろ。俺が貸してやってるんだ。勘違いするなよ)
「あっそう。質問に答えろよ」
(お前との、デートが原因だ。お嬢さんは注目されちまって家に帰れん)
「なぜ、俺のところなんだ?」
(実家がヤクザと書かれるより、恋人と幸せな生活と書かれた方が良いだろうが)
「白石さんのお父さんは知っているのか?」
(もちろんだ)
「そう」
(しばらく、頼んだぞ)
「わかった。じゃあな」
俺は電話をきって家にあがる。
白石真依が俺を笑顔で見る。
「お帰りなさい」
「ただいま」
そして、少し暗い表情になって俯いた。
「あの~、私がここにいると迷惑ですか?」
「全然、そんな事ないよ。白石さんこそ、迷惑じゃないか?」
「ううん。私は嬉しい」
「俺も」
「夕御飯を作っています。少し待ってて」
「あ、ありがとう」
「出来るまで、ビールでも飲んでる?」
「そうだね」
俺はビールを片手に持ち、料理を作る白石真依を見ていた。
とても可愛い。
胸の奥がキュンと締め付けられる。
「どうしました?あんまり、見詰められると少し緊張します」
「ごめん。こんな奥さんがいたら幸せだなと思ったんだ」
「私も出来る事ならここにいたい。拓哉さんの側にいたい」
「いてくれる?」
「ごめんなさい。ずっとは無理。私は近い将来にいなくなるから」
「どういう事?」
「なんでもない。すぐに出来るから」
白石真依の目から涙が流れる。
それをすぐに拭う。
俺は側にいき、優しく抱きしめた。
絶対に助けてみせる。
「俺も手伝うよ」
「じゃあ、お皿を出して並べて」
そこには無理に笑顔を作る白石真依がいた。
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