真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE 3:松山大輔

誰だ

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《唐沢雅明》
病院に着くと急いで第三手術室の見学室に駆け込んだ。
外科医の杉田が左手の処置をしている。
もう終わるところだった。
だが、右手は知らない奴が何かをしている。
胸部の方まで割いたようだ。
「いったい何をやったんだ?」
見た事の無い医師が右手に何か塗り薬を塗って包帯で巻いて手術を終えた。
奴らを捕まえて何をやったのか吐かせてやる。
唐沢雅明は自分の担当患者に対して勝手に手術した事が許せなかった。
見学室から出て行こうとした時、黒スーツの男が入ってきた。
「どうも、唐沢先生」
「誰だ? 俺は忙しい。そこをどいてくれ」
「まあ、そう言わずに聞いてくださいよ」
「どけ!」
「今、手術をしている奴らを捕まえるですか?」
「そうだ。アイツらは俺の患者に対して勝手に手術した」
「松山も承知しているんで見逃してやってくれませんか?」
「そんな事は関係ない」
「じゃあ、こちらも世間に公表しないといけなくなるな」
「何をだ!」
「この時間に担当医師はどこで何をしていたか。不倫については世間は厳しいですよ。お子さんもいるんでしょ。学校でどんな扱いを受けるんでしょうね?」
「お前、脅すのか?」
「悪いようにしませんよ。松山が以前のように投げれるようになれば、あなたの成果だ。駄目なら松山は引退をするだけだ」
「本当だな」
「本当ですよ。だから、もうこの件に関わらないで下さいね。これからは外科の杉田が担当しますので」
「勝ってな事を」
「あなたは賢い人だと信じていますよ。じゃあ、失礼します」
唐沢雅明は第三手術室の方を見た。
片付けは完了しており、チームメンバーは解散したようだ。

いったい何なんだ?
唐沢雅明は悔しい夜を過ごした。
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