真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE 3:松山大輔

連絡

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《赤城拓哉》
深夜零時、予定通りに第三手術室に入った。
もう松山大輔は運ばれてきている。
手術メンバーは前回と同じだ。
杉田が口を開く。
「今回は松山大輔が左手を誤ってナイフで切ちゃった。その手当てをすると同時に右肘の靭帯断裂部分の再建をついでに行います」
天才麻酔医の石垣が杉田を見る。
「もう松山は落ちてる。あんたがやるの?」
「違うよ。僕は左手の手当て担当。右手はドクターZの担当だよ」
「器械出しはどっちにつくんだ?」
「器械出しXはZについて。僕は勝手にやっておくから気にしないで」
石垣由依が俺を見る。
「通常は左手の靭帯を移植するとかだけど」
「言葉の通りさ。さあ、始めようか」
杉田がぶうたれる。
「それ、僕のセリフだから」
「じゃあ、言えよ」
「もう、いいよ。始める」
杉田はそう言うと左手の処置に入った。
俺は器械出しに手を出した。
「メス」
パッシと渇いた音と同時にメスが手渡される。
それが、しっくりと手に馴染む。
そして、テンポが作られていく。
この器械出しも優れた看護士だと容易に判断がついた。
俺は大胆に割く。
器械出しのXと石垣由依が目を見開き、驚く。
それもその筈だ。
肘下から胸まで割いたのだから。
「本当に大丈夫なの?」
「黙ってろ」
俺は実態顕微鏡を降ろして靭帯を繋ぎ合わせていく。
実際はピンセットを介して力を使って良質細胞を増幅させながら紡いでいく。
他の者が見た場合は単に繋げていふだけに見えるだろう。

‘’ちちんぷいぷいいたいのいたいの飛んでいけ‘’

呪文を呟きながら周辺の筋肉断裂部分も柔く強靭なものにする。
これを胸筋まで行っていく。
とても気長な作業になるな。
でも、仕事だ。頑張ろう。

《唐沢雅明》
高級ホテルのレストランで柴咲雪と食事をして、そのまま部屋でベッドインしていた。
お互いに欲求に従い貪欲に貪りあった。
ちょうど一回戦が終了した時に病院から電話が入った。
夜勤担当の看護士からだ。
「どうした?」
(たいした事ではありませんが、松山大輔様が果物ナイフで左手を怪我したという事で第三手術室に運ばれました)
「手術室?処置室ではなくてか?」
(そうなんです。少し変だと思い連絡を入れさせてもらいました)
「誰が対応している?」
(杉田先生です)
「杉田?」
(はい、そうです)
「ありがとう。君は自分の仕事に戻ってくれ」
唐沢雅明は手術室に運ばれた事が気になっていた。
柴咲雪が唐沢雅明の乳首をいじりながら胸にもたれる。
「病院から?」
「そうなんだ」
「気になるなら行っておいでよ。待ってるから」
「すまない。様子を見てすぐに戻るよ」
「ハイハイ」
唐沢雅明はベッドから飛び出て服を着て帝都医大へ愛車のポルシェで向かった。

何が起きてるんだ?







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