12 / 49
KARTE 2:上原さくら
検査結果
しおりを挟む
《石垣由依》
石垣由依はPET撮像室にいた。
ガラス越しに上原さくらが横になっているのが見える。
隣には銀縁のメガネをかけた美女がいる。
内科医の柴咲雪でミス帝都医大にもなった事がある。
上原が優秀な女医の検査を要望という事で柴咲雪に白羽の矢がたった。
石垣由依は柴咲雪とは高校からの友達という事もあり、検査に立ち会わせてもらっていた。
「由依、あの患者、VIPだよね」
「そう。十階だよ」
「誰がこの患者の手術をしたの?」
「杉田」
「あの杉田?」
「そう。論文の杉田」
「あいつ、何をしたの?」
「なんで?」
「これを見て」
モニターに上原の画像が次々と写し出されていく。
「癌が無い」
「それだけじゃない。肺がある。切除したはずの肺がある」
石垣由依は軽くパニックになっていた。
あの晩の手術では、間違いなく肺を切除したはずだった。
柴咲と石垣は血液検査の結果を確認した。
腫瘍マーカー値も問題なし。
「由依、私の検査結果を言うね」
「うん」
「癌は完全に消えた」
「うん」
「私の診断に不足な部分がある?」
「無いと思う」
「信じられないの。以前に織田から見てくれと言われて診断した」
「それで」
「乳癌、肺癌でステー4で手術は不可能のはず」
「あいつは何をしたんだ?」
「私、上原さんに検査結果を伝える。一緒に来てくれる。少し自信が無い」
「気持ちわかるよ」
二人は内科医の事務室を出て、上原の病室に向かった。
上原の病室に入ると娘と楽しそうに会話していた。
「あ、柴咲先生、検査結果はどうでした?」
「検査結果を報告する前に傷口を見せてもらっても良いてすか」
「わかりました」
柴咲は上原を寝かせて、優しくガーゼを剥がした。
その手が止まる。
「由依、ちょっと見て」
「どうした?」
石垣は除き込むように見る。
「傷口はここで間違いない?」
「間違いないけど、ほとんど傷口が無い」
「凄い。何をしたんだろ」
もうガーゼも必要ない為に剥がした。
柴咲が上原に向き合う。
「検査結果を報告します」
「はい。お願いします」
「癌は消滅しています」
上原の目から涙が溢れだし、顔を抑えて伏す。
「ごめんなさい。嬉しくて」
娘が背中を優しく擦る。
柴咲と石垣は何が起きたのかわからないまま、検査結果の報告を終えた。
石垣由依はPET撮像室にいた。
ガラス越しに上原さくらが横になっているのが見える。
隣には銀縁のメガネをかけた美女がいる。
内科医の柴咲雪でミス帝都医大にもなった事がある。
上原が優秀な女医の検査を要望という事で柴咲雪に白羽の矢がたった。
石垣由依は柴咲雪とは高校からの友達という事もあり、検査に立ち会わせてもらっていた。
「由依、あの患者、VIPだよね」
「そう。十階だよ」
「誰がこの患者の手術をしたの?」
「杉田」
「あの杉田?」
「そう。論文の杉田」
「あいつ、何をしたの?」
「なんで?」
「これを見て」
モニターに上原の画像が次々と写し出されていく。
「癌が無い」
「それだけじゃない。肺がある。切除したはずの肺がある」
石垣由依は軽くパニックになっていた。
あの晩の手術では、間違いなく肺を切除したはずだった。
柴咲と石垣は血液検査の結果を確認した。
腫瘍マーカー値も問題なし。
「由依、私の検査結果を言うね」
「うん」
「癌は完全に消えた」
「うん」
「私の診断に不足な部分がある?」
「無いと思う」
「信じられないの。以前に織田から見てくれと言われて診断した」
「それで」
「乳癌、肺癌でステー4で手術は不可能のはず」
「あいつは何をしたんだ?」
「私、上原さんに検査結果を伝える。一緒に来てくれる。少し自信が無い」
「気持ちわかるよ」
二人は内科医の事務室を出て、上原の病室に向かった。
上原の病室に入ると娘と楽しそうに会話していた。
「あ、柴咲先生、検査結果はどうでした?」
「検査結果を報告する前に傷口を見せてもらっても良いてすか」
「わかりました」
柴咲は上原を寝かせて、優しくガーゼを剥がした。
その手が止まる。
「由依、ちょっと見て」
「どうした?」
石垣は除き込むように見る。
「傷口はここで間違いない?」
「間違いないけど、ほとんど傷口が無い」
「凄い。何をしたんだろ」
もうガーゼも必要ない為に剥がした。
柴咲が上原に向き合う。
「検査結果を報告します」
「はい。お願いします」
「癌は消滅しています」
上原の目から涙が溢れだし、顔を抑えて伏す。
「ごめんなさい。嬉しくて」
娘が背中を優しく擦る。
柴咲と石垣は何が起きたのかわからないまま、検査結果の報告を終えた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
一会のためによきことを
平蕾知初雪
ライト文芸
――8月、僕はずっと大好きだった〇〇ちゃんのお葬式に参列しました。
初恋の相手「〇〇ちゃん」が亡くなってからの約1年を書き連ねました。〇〇ちゃんにまつわる思い出と、最近知ったこと、もやもやすること、そして遺された僕・かめぱんと〇〇ちゃんが大好きだった人々のその後など。
〇〇ちゃんの死をきっかけに変わった人間関係、今〇〇ちゃんに想うこと、そして大切な人の死にどう向き合うべきか迷いまくる様子まで、恥ずかしいことも情けないことも全部書いて残しました。
※今作はエッセイブログ風フィクションとなります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
昇れ! 非常階段 シュトルム・ウント・ドランク
皇海宮乃
ライト文芸
三角大学学生寮、男子寮である一刻寮と女子寮である千錦寮。
千錦寮一年、卯野志信は学生生活にも慣れ、充実した日々を送っていた。
年末を控えたある日の昼食時、寮食堂にずらりと貼りだされたのは一刻寮生の名前で……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる