真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE 2:上原さくら

水曜日の深夜

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《赤城拓哉》
水曜日の深夜、俺は十階の上原さくらの部屋に行った。
「上原さくらさん、今から手術する」
「はい、お願いします」
俺はナースコールを鳴らした。
すると一人の看護士がすぐに現れた。
マスクで顔が良く見えない。
「藤堂さんから話は聞いています。手術室に移動します」
「頼む」
さあ、俺も準備をしよう。

場所は第三手術室が予約されていた。
中に入ると既にメンバーが揃っていた。
一人は外科の杉田泰三と言い、少しぽちゃり体型の男だ。
落ちそうになるメガネを何度も上げている。
歳は四十ぐらいだろうか。
看護師、麻酔医が一名ずついる。
二人ともマスクをしており、顔は良く見えない。
「外科の杉田です。僕は論文は得意だけど手術は得意ではありません。そこで、応援で先生を呼んでいます。え~と、名前は? まあ、いいか。皆、藤堂さんから呼ばれたワケありだよね。じゃあ、余計な詮索は無しで行こう。位置について」
その言葉で全員が位置についた。
俺は執刀医の場所だ。
「じゅあ、始めようか。一応、僕が手術担当医なんでメスだけ入れるね。いい?」
「どうぞ」
「じゅあ、肺をなんとかする手術を始めます」
杉田はメスで胸の皮膚を斬る。
「じゅあ、宜しく。ドクターZ」
「了解、肺、胸部の腫瘍摘出と再建手術を始める」
杉田は無視しているが、麻酔医は驚いていた。
「そんなの出来るわけが無い」
声から天才麻酔医の石垣由依だと直ぐにわかった。
「天才麻酔医さん、俺を信じろ」
「信じられるワケないでしょ。グズ内科医が手術なんて。それも新人のクセに」
「内科医が手術しちゃいけない理由があるのかよ」
杉田が壁を叩いた。
「君達、知り合い?早く進めてよ。僕、借金あるんだから。やらないと僕が殺られちゃうよ」
「わかった。杉田はそこで見てろ」

《藤堂直文》
藤堂は銀座のクラブでシャンパンを右手に持ち、左手に女の肩を抱いて飲んでいた。
時計を見る。
「そろそろだな」
「藤堂さん、何がそろそろなの?」
「新しい事業さ」
「ふ~ん」
「さあ、成功を祈って乾杯だ」
「うん、新しいのを入れても良い?」
「どうぞ」
藤堂はシャンパンの入ったグラスを持ち上げ、ライトに照らした。
泡がいくつも出て消える。

赤城拓哉よ、てめぇはこの泡の様に消えるなよ。
「赤城に乾杯」
藤堂は一気に飲み干した。
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