真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE1:藤堂直文

ふたたび、藤堂

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《赤城拓哉》
藤堂が撃たれた事件から一ヶ月が経過していた。
ある日、藤堂から呼び出しがあった。
横浜にある馬車道という喫茶店だ。
借金を帳消しにして、一千万も渡すとの事だ。
やりぃー

俺は電車を乗り継ぎ、指定のあった喫茶店に行った。
中に入ると二十席ぐらいあり、窓際の奥に藤堂が座っている。
客はチラホラといるな。
藤堂が俺に気づき、手を軽く上げる。
「よう、久しぶりだな」
「藤堂さん、元気そうだな」
俺はホットコーヒーを頼んで藤堂の正面に座る。
「まあ、お前のおかげだ」
「約束は覚えているかい?」
「もちろんだ。借金は無し。そして、一千万」
藤堂は分厚い封筒を俺に差し出した。
「遠慮なく貰う」
「どうぞ。なあ、良い儲け話がある。お前、仕事無いんだろ?」
「仕事なくしたのアンタだろ」
「人のせいにするな。お前を裏切った奴らを恨めよ」
「あっそう。じゃあ、帰るわ。貰うもんもらったし」
俺は立ち上がろうとした。
「待て、ある人を診てくれ。百万払う」
「うん?」
「お前、医者だろ。それも凄腕なんだろ」
「俺、医師免許ないけど。アンタらのせいで剥奪されちゃったから」
「そんなの関係無い。救えば良いんだよ。救えば!」
「で、どこの誰?」
「今から行けるか?」
「まあねぇ。仕事なくしちゃったから」
「嫌みな言い方だな」
「そう?」
「行くぞ!」
俺と藤堂は喫茶店を出て藤堂の車に乗り込んだ。

向かった先は和風の壁で囲まれた物凄いデカイ家だった。
表札は鈴木と書いてある。
「藤堂さんよ、ここはもしかして」
「そうだ。もしかしてだ!」
ここは関東最大の指定暴力団の鈴木組じゃないか。
ヤバイぞ。
「帰るわ」
その時、藤堂は門が空いたので、車を進めてしまった。
「悪い。もう入っちまった」
「アンタねぇ。やり方がズルいぞ!」
「俺も一旗揚げたいんでね」
「一人でやってくれ」
「診るだけだ。殺されねぇよ」
「ちっ」
もう成るようになれ!
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