真夜中の白魔術師

福澤賢二郎

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KARTE1:藤堂直文

どん底

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《赤城拓哉》
赤城拓哉は深夜の銀座を駆けていた。
後ろから派手なカッコウをした男が追いかけて来る。
「おい、待ちやがれ」
「誰が待つか!」
だが、とうとう交差点で捕まってしまった。
「藤堂さん、チンピラのクセに早いな」
「それだけが取り柄だ」
「金はもう一月、待ってくれ」
「ダメだな。マグロ船に乗れ」
「断る」
その時、突然に突き飛ばされた。
グレーのパーカーでフードを被っている男が藤堂に密着する。
「藤堂よ、探してたぜ」
「てめぇ、誰だよ」
「あんたに世話になった一人だよ」
「ん?」
「あんたのおかげで俺は全てを失ちまった。これはお礼だよ」
銃声が鳴り響いた。
グレーのパーカーは笑いながら足早に立ち去る。
藤堂は胸に手を当てて膝をつく。
指の間から血がこぼれ落ちていく。
拓哉は藤堂に近づいて出血している箇所をハンカチで強く抑えた。
「誰か救急車を呼んでくれ」
その五分後に救急車が到着した。

拓哉は救命医と共に救急車に乗り込んだ。
救命医は病院に連絡しているようだが、どこも受け入れてくれない。
救命医に訊ねた。
「病院は?」
「駄目です。どこも受け入れてもらえません」
拓哉は藤堂の方を見た。
「おい、藤堂さんを受け入れる病院が無いって。このまま死ぬか?」
「ふ、ふざけるな」
「一千万と借金チャラで助けてやろうか」
「な、なに」
「あんたが俺達家族にしてきた事を思えば、安いだろ。どうする?」
「て、てめぇにできるか?」
「好きな方を選べ」
「わ、わかった。一千万と借金をチャラにする。助けてくれ」
「よし、約束だぞ」
拓哉は救命医を見る。
「俺は医者だ。手術室を貸してくれれば良い。俺が治療をしよう」
「わかりました。杉山総合病院に運びます。今、対応できるのが、研修医だけですが、良いですか?」
「かまいません」
救急車は走り出した。




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