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別々の道

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「こんなことするなんてっ、酷いですよ! 私はあなたを愛してるだけなのに!」
「愛がひねくれすぎて迷惑なの!」
「そんな…私のものにならないなんて、頭どうかしてますよ!」
「それは君かな! 人をモノ扱いした上に、ありもしないことをでっち上げるなんて、頭にお花咲いてるんじゃないかな!?」



「月島のツッコミ、キレキレだな」
「あんなに必死な智香、久しぶりに見た」
 口論するふたりを遠目に、御伽と黍島は、教員へ事情を説明しに、会議室へと消えた……


「……やっぱり、月島さんがそんな事をするとは思って無かったんです。誤解が解けてほっとしました………。でも、今回のはやりすぎですよ? 反省して下さいね」
「はーい……ごめんなさいせんせー」
 松林に職員室に呼び出され、月島は少し口をへの字に曲がらした。不機嫌なご様子。
「……月島さんが、あまり目立ちたがりでないのは知っています。たまたま、目立つ立場になってしまっただけで、できるだけ後ろ目に『当たり前』に『平凡』に生きたがっているのは、見て取れます。今回は一方的な被害者、として、これから先はお咎め無しにさせてもらいますが、近く生徒会の仕事は、真波くんが請け負ってくれるそうですので、しっかり心身を休ませてください」
 月島は意外だと思った。
 この担任は、案外私達を見ているのだ、と。
「? どうかしましたか?」
「先生って案外、私たちのこと理解してるんだなーって…」
「ああ………私自身が、変な熱熱教師に育てられたので、生徒に不憫な思いはさせたくないと思ったんですよ。義務教育最後の担任がくそなんて嫌でしょう?」
 にこりと笑う担任に、月島は少し固まったあと、ふっと微笑んだ。
「さすが、私の担任を二年もやってるだけありますね」
「ははっ。たかが二年じゃ、生徒の何も理解できないよ。だからあまり偉そうに言わないし、言えないね。最近の教員は道を間違えすぎてると思うけれど」
 隣のクラスの人は言った。
『担任がクソすぎる』と。生徒の全てを知ったかのように語る口に、生徒を縛る言動。
 生徒は言う。『あいつのクラスは嫌だ』『ストレスが溜まる』『もう疲れた』と。うちの担任もそうだと思っていた。でも案外違ったようだ。
「すいません。認識を間違っていました」
 月島はきちんと謝った。
 そして多少の雑談後、職員室を出た。






「さて、あいつらはどーするのかなあ?」








久々の更新で誠に申し訳ございません
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