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大森は小野木がレポートを読み終わるのをただ黙って待っていた。
小野木重治、昭西大学の教授だった。年は七十を越えている。
机の上には、専門書や書類が乱雑に積み上げられていた。小野木は、猫背の背をさらに丸め、書類の山に体を埋めるような格好でレポートを読んでいた。
教授室の入り口から三メートルの場所に大森と小野木を隔てる、見えないロープが張られていた。ここからは立ち入り禁止だった。
小野木は顔を上げ、ずり落ちそうになっているメガネ越しに、大森を見た。ああ、いたのか、という顔だった。
「君、何か、変わったことは、あるかね」
小野木は目をレポートに戻し、大森の顔を見ずに言った。
「いえ、別に何もありません」
大森は答えた。いつもと同じ答えだった。
「……二ヶ月か……」
小野木はレポートに打たれた数値を見てかってにうなずいていた。
小野木が見ているのは自分のデータのはずなのだが、大森本人には、何も知らされなかった。何のために行っているのか、その理由さえも説明されていない。
大森は痩せて眼鏡をかけた小柄な男を少し腹立たしい気分で見つめていた。
この男は自分を人間として認めていない。小野木の興味は、レポートに打たれている細かな数字だけで、大森という人間には何も興味がない。そのことは、小野木の態度からも充分すぎるほど分かった。
しかし、小野木は大森が通っている大学の教授であり、自分の成績や就職に影響があるかもしれないと思うと、あからさまに不機嫌な態度を取るわけにもいかなかった。
大森幸司は昭西大学の健康スポーツ学科に在籍していた。専攻はスポーツリハビリテーションだった。
高齢化が進む日本社会では、適切なスポーツやトレーニングを行うことは、健康な生活に必要な筋力を保つ上で大変重要であり、さらに、病気などで筋力の衰えた高齢者にたいして、適切な運動を指導できる人材の確保は云々と、大学のパンフレットには書かれていた。
大森がこの科を選んだのは、学科の理念に感動したためでも、社会的な使命を感じたためでもなく、高校まで陸上競技を続けていて、スポーツなら教えられだろうと思ったのと、ここなら学校の推薦で学科試験を受けなくても入学できると高校の担任に言われたのが理由だった。
担任の教師は、胸毛の目立つ柔道部の顧問だったのだが、彼が言った通り、昭西大学の健康スポーツ学科は、入学の目的を二百字ほど書いて、高等学校の推薦書を付ければ、簡単な面接だけで合格した。
小野木は健康スポーツ科の教授だった。大学の内規では教授の定年は六十五歳のはずだったが、小野木はよほど力があるようで、七十歳を越えても、教授のままで、秘書と教授室が用意されていた。
医師の免許を持ち、大学に来る前は、国が関与するどこかの研究所にいたらしいが、大森は、もちろん何も知らなかった。
夏休み明けに、大森は陸上部の顧問をしている浜崎大吾に呼ばれ、小野木の研究室に連れていかれた。
「この学生かね」
小野木は大森の体を上から下になめるように見た。
「はい。この学生です」
浜崎は一枚のレポート用紙を小野木に渡した。そこには、大森の名前や住所、身長、体重、スポーツ歴などが書かれていた。
小野木はレポートを読み、もう一度大森を見て、「いいよ。彼で」と浜崎にうなずいた。
「はい」
浜崎は不自然なほど恐縮し、深々と頭を下げた。
大森に研究の内容は知らされなかった。ただ、運動能力を向上させるビタミンかホルモンの臨床試験のようなことを、おぼろげに言われただけだった。
三日後、大森は指定された病院に行き、身体検査を受けた。身長、体重、血圧、さらには、血液検査や尿検査、心電図、レントゲン検査などを行った。
検査後、小野木が待つ奥の部屋で、左腕に注射を一本打たれた。
その後は、一日おきに、指定されたスポーツセンターに行き、インストラクターの指示で、二時間、筋力トレーニングを行った。二週間に一度、血液を採取され、筋力や瞬発力の測定を行った。
研究の目的、血液検査や体力測定の結果など、大森には何も知らされなかった。それでも、別に大森に不満はなかった。コンビニでバイトをするよりも時間は短く、金額は多い。初めて行うスポーツセンターでのトレーニングもそれなりに面白い。割の良いアルバイトだった。
「他人には、この研究の事は話さないように。もし君が誰かに話したら、その時点で契約は解消するから。分かったね」
病院での注射が終わった後で、小野木は、大森に、念を押すように、「分かったね」と二度繰り返した。
「はい。分かりました」と大森は答えた。
大森の答えに、小野木はうなずきながら、
「まあ、しかし、しゃべったところでね……」と呟いた。普通の人間には研究の内容が推察できるわけがない。そんな言い方だった。 大森は、二週間に一度、小野木の研究室に呼ばれた。呼ばれたと言っても、部屋の入り口に立ち、小野木がレポートを読み終わるのを待つだけだった。
「どこか変わったことはないか」
「いいえ。別にありません」
「そうか」
いつも同じことを言うだけで、他に聞かれることはなかった。
今日も同じだった。老人がデータを見終わるのを、お預けをくっている犬のように、ただ待っているだけだった。
「ああ、君はもういいよ」
小野木は顔も上げずに、出ていけと、手で合図をした。
「今度来るのは、一ヶ月後でいいから」
「はい」
「トレーニングは続けるように」
「分かりました」
お辞儀をして、大森は教授室をでた。
「ふー」と自然にため息が出た。
帰り際に小野木の秘書、佐藤友恵と目が合った。
「失礼します」と大森は挨拶をしたが、友恵は大森を無視するように、視線をそらせた。
「佐藤君」
教授室から小野木の声がした。
「はい」
友恵が答えた。
「コーヒーを入れてくれ」
「は~い」
友恵は間延びした返事をしながら、椅子から立ち上がった。
大森はもう一度「失礼します」と言って、部屋を出た。
「少し、薄めにしてくれ」
「わかりました」
小野木と友恵の声が聞こえていた。
大森は、ドアを閉め、「フー」と、息を吐いた。
小野木の教授室は、研究棟と呼ばれている建物の五階にあった。主に、教授室とゼミ用の小さな教室のある建物だった。
建物から出ると、外はもう薄暗くなっていた。大森は、大きく伸びをしながら、首を二三度回した。教授室にいたのは十五分ほどなのだが、緊張で体が硬くなっていた。
「用事は終わった?」
青井容子が大森に声をかけてきた。
「待ってたの?」
「待ってたわけじゃないけど。説明会が、少し前に終わって、グラウンドへ行ったら、研究棟に行ったて言われたから、ああ、小野木先生の部屋かなって思って、こっちに来てみたの」
「そうなんだ。説明会って?」
「来週から介護実習が始まるから」
「ああ、介護士の」
「うん」と容子はうなずいた。
大森は陸上部だった。昭西大学では、サッカー部やテニス部などは多くの部員を集めていたが、陸上部は人気がなく、部員は十人ほどで、練習もめいめいが勝手に行っていた。
大森は短距離だったのだが、十人の中で短距離の練習をしているのは大森一人だけだった。
容子は大森と並んで歩きながら、
「誕生日のプレゼントなんだけど」と言った。
「誕生日? 誰の?」
「幸司の」
「僕の? そうか、来週、誕生日か」
「自分の誕生日ぐらい覚えておきなさいよ」
「去年は成人式だったから、意識したけど、今年はね、誰にも言われそうにないし」
「私は、覚えてるわよ」
「ありがとう」
大森は容子の顔を見て、微笑んだ。
「プレゼントなんだけど、新しいジャージでいい?」
「ジャージ?」
「ほら」
容子は大森の膝を指さした。
「ああ、これ」
トレーニングウェアの右の膝がすり切れ、ウェアの下に膝頭が見えていた。
大学入学の時にスポーツ店の閉店バーゲンで買った運動着だった。灰色の売れ残ったスポーツウェアだった。見たことのないロゴが上着の胸のあたりに刺繍されていた。三年間、ウェアはこれ一着だけですごした。
「これね」
大森は右足をぶらぶらとさせた。生地が薄くなっていて、いまにも切れてしまいそうだった。
「そう、そう」と容子がうなずく。
「そうだな……どうしよう。陸上、止めようかなって思っているから」
「そうなの」
「そろそろ、就職活動を始めないとさ」
「そうか」
大学三年の秋だった。大学はもちろん四年制なのだが、就職活動は、三年の夏過ぎから本格的に始まっている。
「でも、まだ、着るでしょ。クラブじゃなくたって」
「ああ、着るよ、容子のプレゼントなら、喜んで」
「じゃ。決まり」
「ありがとう」
図書館の前を行き過ぎると、グラウンドが見えた。ラグビー部はまだ、練習していたが、陸上部の姿はなかった。
照明で照らされたグラウンドを過ぎ、ベンチの置かれた広場に出ると、急に暗く感じた。授業も終わり、学内に残っている学生の姿もだいぶ減っていた。
広場の街灯の下で、演劇部らしき五人の男女がセリフの練習をしていた。どこからかサックスの音が聞こえてきた。大学らしいゆったりとした時間が流れていた。
大森と容子は、手をつなぐと、少し気恥ずかしそうに、うつむき加減に歩いていった。
大森と青井容子が知り合ったのは大学に入学した後のだった。容子は社会福祉科で大森は健康スポーツ科、学部も学科も違っていたのだが、一年生の前期、偶然とった中国語の講義で一緒になった。
二人とも郷里が北関東の奥に位置する田舎町で、入学したてのころは、今もそうなのだが、東京の華やかさや喧噪にとまどいを感じていた。
他の学生と比べても、服装も雰囲気も明らかに野暮ったく、流行のブランドショップなどには、とても入って行く勇気がなかった。
知らない言葉次々と出てくるようで、周りの会話について行けなかった。
田舎はみんな顔見知りなのだが、東京では、隣に住む人間でさえ知らなかった。朝、挨拶をしても、かえって迷惑そうな表情をされてしまう。
中国語の講義は、二十人ほどの少人数で進められた。教室も大教室ではなく、高校の教室のようにこぢんまりとしていた。
二人は、おどおどと教室の一番後ろで隠れるように座り、授業を受けていた。そして、ある日、教科書を忘れた大森に容子が見せてあげ、しだいに挨拶をかわすようになり、方言が同じことに気づき、夏前には近くの公園でデートをする仲になっていた。
大学三年になり、ぎごちない恋愛もそれなりの関係を結ぶまでにはなっていたのだが、親の手前もあり、同じ部屋に住むのはやめていた。
その日、二人は珍しく、ファミリーレストランで夕食をとった。
二人とも裕福な家庭ではなかった。大森の父親は近くの工業団地で、エアコンの組み立てを行っていた。高校二年生の妹が一人いるが、大学進学か就職かで迷っていた。
容子の父親は地元の農協に勤めていた。来年は弟が大学進学を控えていて、母親がスーパーのパートに出る予定だった。
二人とも、仕送りは十分ではないが、増やしてくれとは言えず、足りない分はアルバイトをして生活費をまかなっていた。
二人が揃う夕飯は、スーパーで買い物をして大森のアパートで作って食べるのが定番のコースになっていた。
アジの干物にほうれん草のごま和え。肉じゃが。鯖の味噌煮。カレーライス。少し懐かしさを感じるほど庶民的な献立だった。
ファミリーレストランで食事をするのは、小さな贅沢だった。今日は、二人とも、アルバイトの金が入った。
容子は、介護の資格をいかして、老人ホームで働いていた。大森は、小野木のバイトだった。
「今度の大会で陸上は止めようかと思っているんだ」
大森はハンバーグを箸で食べながら言った。
「止めちゃうの」
「就職活動も始まるし、記録も伸びないからね。趣味では続けるけど」
「そうなんだ」
容子はスパゲッティを食べていた。
「あーあ。陸上を止める前に、一度ぐらい速く走れないかな」
大森が水を飲みながら言った。
「何、言ってるの。十分速いじゃない。私なんて運動会は、いつもビリだったから、足の速い人はうらやましくて」
容子が食べ終わり、口の周りのケチャップをナプキンで拭いた。
「百メートルの自己最高記録は十秒八八。これじゃ陸上の短距離をやってましたなんて言えないよ。女子の世界記録より、はるかに遅いんだぜ。一回でいいから、ほら火事場の馬鹿力だっけ、こう、だだだって凄いスピードで走れないかな」
大森は両腕を振って、走る格好をした。
「大森選手。速い速い」
容子がアナウンサーのまねをする。大森が必死で走る。
「大森選手、トップにたちました。大森選手。ゴールです」
両手を上げて、ゴールテープを切る。
「大森幸司選手、なんと世界記録です」
容子が拍手をする。
他のテーブルの客が二人に振り向き、大森と容子は笑いながら俯いた。
「ふー」と大森はため息をつく。
「……奇跡なんて起こるわけないしね」
「世界記録って出してみたい?」
容子が大森を見つめた。
「えっ? そうね……そりゃ、まあね。陸上をやってる人間なら、みんな同じだよ。世界記録が出せたらって、誰だって一度は夢を見るから。特に、百メートルは特別だから、何て言っても、世界一速いんだから」
「世界一か……世界一速いって、どんな気持ちなんだろうね」
容子が聞いた。
「さあ……」
大森には想像もつかないことだった。
大森と容子がファミリーレストランから出ると、二人の正面からサングラスをかけた男が歩いてきた。
男は人目を気にする様子もなく、連れの女性の肩を抱き、大声で話しながら歩いていた。
「あれっ」
男とすれ違い、大森は振り返った。
「あいつ、確か……」
「知ってる人?」
「沢田だ……」
「誰、それ?」
「沢田武志。百メートルの日本記録保持者」
「へえ。そうなの。すごい若そうだけど」
「同じ年」
「同級生?」
沢田武志、二十一歳。明和大学三年。百メータの自己記録は九秒九三。
日本短距離界のホープ。日本人で初めて決勝に残った男。去年の世界陸上で沢田は、百メートルの決勝に残った。順位は六位。次のオリンピックではメダルを期待されている。
「何かのコマーシャルにも出てたし、もう、結構有名人だよ」
「そうなんだ」
容子も振り返ってみたが、沢田はすでに人混みに消え、姿を見ることはできなかった。
大森が言うように、沢田と大森は同じ学年だった。
二人とも覚えてはいないが、一度だけ同じ大会で走ったことがあった。高校時代の地方大会だった。
もっとも、二人は予選の組が違い、大森は決勝に残れず、途中で帰ってしまったのだから、覚えていないのも無理はなかった。
沢田とすれ違った日から二週間後、大森は首都大学陸上競技大会に出場し、百メートルで優勝した。
大会の名前は厳めしいが、陸上競技では弱小の大学が集まって開かれる大会だった。
しかし、ともかく大森にとって、初めての優勝だった。記録は十秒五三。自己記録を大幅に更新していた。
大森が容子から送られた新しいトレーニングウェアを着て賞状をもらっているその日、国立競技場では、化粧品会社の名前を冠した陸上大会が開かれ、そこで、沢田は日本人で初めて九秒九を切り、アジア新記録を作った。
沢田が一位でゴールラインを駆け抜け、競技場の時計が九秒八八で止まった。
「明和大学、沢田選手。記録は九秒八八。これはアジア新記録です」
テレビ中継のアナウンサーが絶叫した。
場内のアナウンスが、妙に落ち着いた声で、
「ただいまの百メートル競技の結果。一位、第四コース、沢田武志選手、記録は九秒八八です。この記録は日本新記録、およびアジア新記録になります」
と告げた。
競技場は観衆の歓声と拍手に包まれた。沢田は観客に向かって、手を大きく広げ、拍手と歓声にこたえた。
カメラマンが沢田に向かって突進していく。無数のフラッシュが、沢田を光で包み、現代の神に変えていく。
レポーターが沢田にマイクを差し、妙に興奮した口調で、
「アジア新記録ですが、ご感想はいかがですか」と言った。
「来年のオリンピックの抱負もお願いします」
沢田は、まあまあ、といったように、興奮を両手で制しながら、
「まあ、そんなに騒がないでよ。うれしいけどさ、アジア記録なんて、ただの通過点だから。来年は世界を狙うし、まあ、期待しててよ」
と答えた。
沢田が観客席に向かって拳を突き上げると、大きな歓声が競技場を包んだ。レポーターが何か言ったが、その声は、歓声にかき消され、誰の耳にも届かなかった。
翌日のスポーツ新聞の一面には沢田の笑顔が載っていた。次のページにも、やはり沢田の記事が載り、プロ野球とサッカーの試合結果、競馬の予想記事などが書かれていたが、大森の名前は、どこにも見つけることはできなかった。
小野木重治、昭西大学の教授だった。年は七十を越えている。
机の上には、専門書や書類が乱雑に積み上げられていた。小野木は、猫背の背をさらに丸め、書類の山に体を埋めるような格好でレポートを読んでいた。
教授室の入り口から三メートルの場所に大森と小野木を隔てる、見えないロープが張られていた。ここからは立ち入り禁止だった。
小野木は顔を上げ、ずり落ちそうになっているメガネ越しに、大森を見た。ああ、いたのか、という顔だった。
「君、何か、変わったことは、あるかね」
小野木は目をレポートに戻し、大森の顔を見ずに言った。
「いえ、別に何もありません」
大森は答えた。いつもと同じ答えだった。
「……二ヶ月か……」
小野木はレポートに打たれた数値を見てかってにうなずいていた。
小野木が見ているのは自分のデータのはずなのだが、大森本人には、何も知らされなかった。何のために行っているのか、その理由さえも説明されていない。
大森は痩せて眼鏡をかけた小柄な男を少し腹立たしい気分で見つめていた。
この男は自分を人間として認めていない。小野木の興味は、レポートに打たれている細かな数字だけで、大森という人間には何も興味がない。そのことは、小野木の態度からも充分すぎるほど分かった。
しかし、小野木は大森が通っている大学の教授であり、自分の成績や就職に影響があるかもしれないと思うと、あからさまに不機嫌な態度を取るわけにもいかなかった。
大森幸司は昭西大学の健康スポーツ学科に在籍していた。専攻はスポーツリハビリテーションだった。
高齢化が進む日本社会では、適切なスポーツやトレーニングを行うことは、健康な生活に必要な筋力を保つ上で大変重要であり、さらに、病気などで筋力の衰えた高齢者にたいして、適切な運動を指導できる人材の確保は云々と、大学のパンフレットには書かれていた。
大森がこの科を選んだのは、学科の理念に感動したためでも、社会的な使命を感じたためでもなく、高校まで陸上競技を続けていて、スポーツなら教えられだろうと思ったのと、ここなら学校の推薦で学科試験を受けなくても入学できると高校の担任に言われたのが理由だった。
担任の教師は、胸毛の目立つ柔道部の顧問だったのだが、彼が言った通り、昭西大学の健康スポーツ学科は、入学の目的を二百字ほど書いて、高等学校の推薦書を付ければ、簡単な面接だけで合格した。
小野木は健康スポーツ科の教授だった。大学の内規では教授の定年は六十五歳のはずだったが、小野木はよほど力があるようで、七十歳を越えても、教授のままで、秘書と教授室が用意されていた。
医師の免許を持ち、大学に来る前は、国が関与するどこかの研究所にいたらしいが、大森は、もちろん何も知らなかった。
夏休み明けに、大森は陸上部の顧問をしている浜崎大吾に呼ばれ、小野木の研究室に連れていかれた。
「この学生かね」
小野木は大森の体を上から下になめるように見た。
「はい。この学生です」
浜崎は一枚のレポート用紙を小野木に渡した。そこには、大森の名前や住所、身長、体重、スポーツ歴などが書かれていた。
小野木はレポートを読み、もう一度大森を見て、「いいよ。彼で」と浜崎にうなずいた。
「はい」
浜崎は不自然なほど恐縮し、深々と頭を下げた。
大森に研究の内容は知らされなかった。ただ、運動能力を向上させるビタミンかホルモンの臨床試験のようなことを、おぼろげに言われただけだった。
三日後、大森は指定された病院に行き、身体検査を受けた。身長、体重、血圧、さらには、血液検査や尿検査、心電図、レントゲン検査などを行った。
検査後、小野木が待つ奥の部屋で、左腕に注射を一本打たれた。
その後は、一日おきに、指定されたスポーツセンターに行き、インストラクターの指示で、二時間、筋力トレーニングを行った。二週間に一度、血液を採取され、筋力や瞬発力の測定を行った。
研究の目的、血液検査や体力測定の結果など、大森には何も知らされなかった。それでも、別に大森に不満はなかった。コンビニでバイトをするよりも時間は短く、金額は多い。初めて行うスポーツセンターでのトレーニングもそれなりに面白い。割の良いアルバイトだった。
「他人には、この研究の事は話さないように。もし君が誰かに話したら、その時点で契約は解消するから。分かったね」
病院での注射が終わった後で、小野木は、大森に、念を押すように、「分かったね」と二度繰り返した。
「はい。分かりました」と大森は答えた。
大森の答えに、小野木はうなずきながら、
「まあ、しかし、しゃべったところでね……」と呟いた。普通の人間には研究の内容が推察できるわけがない。そんな言い方だった。 大森は、二週間に一度、小野木の研究室に呼ばれた。呼ばれたと言っても、部屋の入り口に立ち、小野木がレポートを読み終わるのを待つだけだった。
「どこか変わったことはないか」
「いいえ。別にありません」
「そうか」
いつも同じことを言うだけで、他に聞かれることはなかった。
今日も同じだった。老人がデータを見終わるのを、お預けをくっている犬のように、ただ待っているだけだった。
「ああ、君はもういいよ」
小野木は顔も上げずに、出ていけと、手で合図をした。
「今度来るのは、一ヶ月後でいいから」
「はい」
「トレーニングは続けるように」
「分かりました」
お辞儀をして、大森は教授室をでた。
「ふー」と自然にため息が出た。
帰り際に小野木の秘書、佐藤友恵と目が合った。
「失礼します」と大森は挨拶をしたが、友恵は大森を無視するように、視線をそらせた。
「佐藤君」
教授室から小野木の声がした。
「はい」
友恵が答えた。
「コーヒーを入れてくれ」
「は~い」
友恵は間延びした返事をしながら、椅子から立ち上がった。
大森はもう一度「失礼します」と言って、部屋を出た。
「少し、薄めにしてくれ」
「わかりました」
小野木と友恵の声が聞こえていた。
大森は、ドアを閉め、「フー」と、息を吐いた。
小野木の教授室は、研究棟と呼ばれている建物の五階にあった。主に、教授室とゼミ用の小さな教室のある建物だった。
建物から出ると、外はもう薄暗くなっていた。大森は、大きく伸びをしながら、首を二三度回した。教授室にいたのは十五分ほどなのだが、緊張で体が硬くなっていた。
「用事は終わった?」
青井容子が大森に声をかけてきた。
「待ってたの?」
「待ってたわけじゃないけど。説明会が、少し前に終わって、グラウンドへ行ったら、研究棟に行ったて言われたから、ああ、小野木先生の部屋かなって思って、こっちに来てみたの」
「そうなんだ。説明会って?」
「来週から介護実習が始まるから」
「ああ、介護士の」
「うん」と容子はうなずいた。
大森は陸上部だった。昭西大学では、サッカー部やテニス部などは多くの部員を集めていたが、陸上部は人気がなく、部員は十人ほどで、練習もめいめいが勝手に行っていた。
大森は短距離だったのだが、十人の中で短距離の練習をしているのは大森一人だけだった。
容子は大森と並んで歩きながら、
「誕生日のプレゼントなんだけど」と言った。
「誕生日? 誰の?」
「幸司の」
「僕の? そうか、来週、誕生日か」
「自分の誕生日ぐらい覚えておきなさいよ」
「去年は成人式だったから、意識したけど、今年はね、誰にも言われそうにないし」
「私は、覚えてるわよ」
「ありがとう」
大森は容子の顔を見て、微笑んだ。
「プレゼントなんだけど、新しいジャージでいい?」
「ジャージ?」
「ほら」
容子は大森の膝を指さした。
「ああ、これ」
トレーニングウェアの右の膝がすり切れ、ウェアの下に膝頭が見えていた。
大学入学の時にスポーツ店の閉店バーゲンで買った運動着だった。灰色の売れ残ったスポーツウェアだった。見たことのないロゴが上着の胸のあたりに刺繍されていた。三年間、ウェアはこれ一着だけですごした。
「これね」
大森は右足をぶらぶらとさせた。生地が薄くなっていて、いまにも切れてしまいそうだった。
「そう、そう」と容子がうなずく。
「そうだな……どうしよう。陸上、止めようかなって思っているから」
「そうなの」
「そろそろ、就職活動を始めないとさ」
「そうか」
大学三年の秋だった。大学はもちろん四年制なのだが、就職活動は、三年の夏過ぎから本格的に始まっている。
「でも、まだ、着るでしょ。クラブじゃなくたって」
「ああ、着るよ、容子のプレゼントなら、喜んで」
「じゃ。決まり」
「ありがとう」
図書館の前を行き過ぎると、グラウンドが見えた。ラグビー部はまだ、練習していたが、陸上部の姿はなかった。
照明で照らされたグラウンドを過ぎ、ベンチの置かれた広場に出ると、急に暗く感じた。授業も終わり、学内に残っている学生の姿もだいぶ減っていた。
広場の街灯の下で、演劇部らしき五人の男女がセリフの練習をしていた。どこからかサックスの音が聞こえてきた。大学らしいゆったりとした時間が流れていた。
大森と容子は、手をつなぐと、少し気恥ずかしそうに、うつむき加減に歩いていった。
大森と青井容子が知り合ったのは大学に入学した後のだった。容子は社会福祉科で大森は健康スポーツ科、学部も学科も違っていたのだが、一年生の前期、偶然とった中国語の講義で一緒になった。
二人とも郷里が北関東の奥に位置する田舎町で、入学したてのころは、今もそうなのだが、東京の華やかさや喧噪にとまどいを感じていた。
他の学生と比べても、服装も雰囲気も明らかに野暮ったく、流行のブランドショップなどには、とても入って行く勇気がなかった。
知らない言葉次々と出てくるようで、周りの会話について行けなかった。
田舎はみんな顔見知りなのだが、東京では、隣に住む人間でさえ知らなかった。朝、挨拶をしても、かえって迷惑そうな表情をされてしまう。
中国語の講義は、二十人ほどの少人数で進められた。教室も大教室ではなく、高校の教室のようにこぢんまりとしていた。
二人は、おどおどと教室の一番後ろで隠れるように座り、授業を受けていた。そして、ある日、教科書を忘れた大森に容子が見せてあげ、しだいに挨拶をかわすようになり、方言が同じことに気づき、夏前には近くの公園でデートをする仲になっていた。
大学三年になり、ぎごちない恋愛もそれなりの関係を結ぶまでにはなっていたのだが、親の手前もあり、同じ部屋に住むのはやめていた。
その日、二人は珍しく、ファミリーレストランで夕食をとった。
二人とも裕福な家庭ではなかった。大森の父親は近くの工業団地で、エアコンの組み立てを行っていた。高校二年生の妹が一人いるが、大学進学か就職かで迷っていた。
容子の父親は地元の農協に勤めていた。来年は弟が大学進学を控えていて、母親がスーパーのパートに出る予定だった。
二人とも、仕送りは十分ではないが、増やしてくれとは言えず、足りない分はアルバイトをして生活費をまかなっていた。
二人が揃う夕飯は、スーパーで買い物をして大森のアパートで作って食べるのが定番のコースになっていた。
アジの干物にほうれん草のごま和え。肉じゃが。鯖の味噌煮。カレーライス。少し懐かしさを感じるほど庶民的な献立だった。
ファミリーレストランで食事をするのは、小さな贅沢だった。今日は、二人とも、アルバイトの金が入った。
容子は、介護の資格をいかして、老人ホームで働いていた。大森は、小野木のバイトだった。
「今度の大会で陸上は止めようかと思っているんだ」
大森はハンバーグを箸で食べながら言った。
「止めちゃうの」
「就職活動も始まるし、記録も伸びないからね。趣味では続けるけど」
「そうなんだ」
容子はスパゲッティを食べていた。
「あーあ。陸上を止める前に、一度ぐらい速く走れないかな」
大森が水を飲みながら言った。
「何、言ってるの。十分速いじゃない。私なんて運動会は、いつもビリだったから、足の速い人はうらやましくて」
容子が食べ終わり、口の周りのケチャップをナプキンで拭いた。
「百メートルの自己最高記録は十秒八八。これじゃ陸上の短距離をやってましたなんて言えないよ。女子の世界記録より、はるかに遅いんだぜ。一回でいいから、ほら火事場の馬鹿力だっけ、こう、だだだって凄いスピードで走れないかな」
大森は両腕を振って、走る格好をした。
「大森選手。速い速い」
容子がアナウンサーのまねをする。大森が必死で走る。
「大森選手、トップにたちました。大森選手。ゴールです」
両手を上げて、ゴールテープを切る。
「大森幸司選手、なんと世界記録です」
容子が拍手をする。
他のテーブルの客が二人に振り向き、大森と容子は笑いながら俯いた。
「ふー」と大森はため息をつく。
「……奇跡なんて起こるわけないしね」
「世界記録って出してみたい?」
容子が大森を見つめた。
「えっ? そうね……そりゃ、まあね。陸上をやってる人間なら、みんな同じだよ。世界記録が出せたらって、誰だって一度は夢を見るから。特に、百メートルは特別だから、何て言っても、世界一速いんだから」
「世界一か……世界一速いって、どんな気持ちなんだろうね」
容子が聞いた。
「さあ……」
大森には想像もつかないことだった。
大森と容子がファミリーレストランから出ると、二人の正面からサングラスをかけた男が歩いてきた。
男は人目を気にする様子もなく、連れの女性の肩を抱き、大声で話しながら歩いていた。
「あれっ」
男とすれ違い、大森は振り返った。
「あいつ、確か……」
「知ってる人?」
「沢田だ……」
「誰、それ?」
「沢田武志。百メートルの日本記録保持者」
「へえ。そうなの。すごい若そうだけど」
「同じ年」
「同級生?」
沢田武志、二十一歳。明和大学三年。百メータの自己記録は九秒九三。
日本短距離界のホープ。日本人で初めて決勝に残った男。去年の世界陸上で沢田は、百メートルの決勝に残った。順位は六位。次のオリンピックではメダルを期待されている。
「何かのコマーシャルにも出てたし、もう、結構有名人だよ」
「そうなんだ」
容子も振り返ってみたが、沢田はすでに人混みに消え、姿を見ることはできなかった。
大森が言うように、沢田と大森は同じ学年だった。
二人とも覚えてはいないが、一度だけ同じ大会で走ったことがあった。高校時代の地方大会だった。
もっとも、二人は予選の組が違い、大森は決勝に残れず、途中で帰ってしまったのだから、覚えていないのも無理はなかった。
沢田とすれ違った日から二週間後、大森は首都大学陸上競技大会に出場し、百メートルで優勝した。
大会の名前は厳めしいが、陸上競技では弱小の大学が集まって開かれる大会だった。
しかし、ともかく大森にとって、初めての優勝だった。記録は十秒五三。自己記録を大幅に更新していた。
大森が容子から送られた新しいトレーニングウェアを着て賞状をもらっているその日、国立競技場では、化粧品会社の名前を冠した陸上大会が開かれ、そこで、沢田は日本人で初めて九秒九を切り、アジア新記録を作った。
沢田が一位でゴールラインを駆け抜け、競技場の時計が九秒八八で止まった。
「明和大学、沢田選手。記録は九秒八八。これはアジア新記録です」
テレビ中継のアナウンサーが絶叫した。
場内のアナウンスが、妙に落ち着いた声で、
「ただいまの百メートル競技の結果。一位、第四コース、沢田武志選手、記録は九秒八八です。この記録は日本新記録、およびアジア新記録になります」
と告げた。
競技場は観衆の歓声と拍手に包まれた。沢田は観客に向かって、手を大きく広げ、拍手と歓声にこたえた。
カメラマンが沢田に向かって突進していく。無数のフラッシュが、沢田を光で包み、現代の神に変えていく。
レポーターが沢田にマイクを差し、妙に興奮した口調で、
「アジア新記録ですが、ご感想はいかがですか」と言った。
「来年のオリンピックの抱負もお願いします」
沢田は、まあまあ、といったように、興奮を両手で制しながら、
「まあ、そんなに騒がないでよ。うれしいけどさ、アジア記録なんて、ただの通過点だから。来年は世界を狙うし、まあ、期待しててよ」
と答えた。
沢田が観客席に向かって拳を突き上げると、大きな歓声が競技場を包んだ。レポーターが何か言ったが、その声は、歓声にかき消され、誰の耳にも届かなかった。
翌日のスポーツ新聞の一面には沢田の笑顔が載っていた。次のページにも、やはり沢田の記事が載り、プロ野球とサッカーの試合結果、競馬の予想記事などが書かれていたが、大森の名前は、どこにも見つけることはできなかった。
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